テラーノベル
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その日から、マナはあまり食べられなくなった。
食欲が湧かない。
夜になると胃が痛くなる。
ライの帰宅時間が近づくだけで、呼吸が浅くなった。
それでも、夕飯だけは毎日作った。
“ちゃんとしていれば怒られないかもしれない”
そんな希望みたいなものに縋っていた。
けれど現実は変わらない。
「……ただいま」
深夜零時。
低い声に、マナの肩が震える。
「お、おかえり……!」
急いで立ち上がる。
ライは疲れ切った顔でネクタイを緩めた。
その目には余裕なんて一切ない。
マナは様子を窺いながら言う。
「今日、ハンバーグ作ったんだ。ライ好きだから……」
「……は」
ライが冷たく笑う。
嫌な予感がした。
「こんな重いもん食えるわけねぇだろ」
「ご、ごめ……」
「なんで考えられないの?」
机に置かれた皿を、ライが乱暴に押しやる。
ガシャン、と音を立てて皿が落ちた。
破片が飛び散る。
マナの身体がびくっと跳ねた。
「っ……」
「またその顔」
ライが苛立ったように立ち上がる。
「俺が全部悪いみたいな顔」
「ちが……」
「違わねぇだろ!!」
怒鳴り声。
マナは反射的に後ずさる。
その瞬間、ライの表情がさらに歪んだ。
「逃げんなよ」
腕を掴まれる。
痛いくらい強い力。
「ライ、いた……」
「お前さ、俺のこと馬鹿にしてんの?」
「してないよ……!」
「じゃあなんでそんな怯えてんだよ!!」
ドン、と壁へ押しつけられる。
背中に衝撃が走る。
息が詰まる。
ライの呼吸は荒かった。
限界なのが分かる。
でも、マナだってもう限界だった。
怖い。
毎日怖い。
それでも嫌いになれない自分が苦しかった。
「……ライ」
震える声で名前を呼ぶ。
ライの目が揺れる。
一瞬だけ、昔の優しい顔に見えた。
だからマナは、思わず言ってしまった。
「もう、無理しなくていいんだよ……」
その瞬間。
バチン、と乾いた音が響いた。
強く頬を叩かれる。
視界が揺れた。
「っ……」
「分かったようなこと言うな」
ライの声が震えていた。
怒りなのか、
苦しさなのか、
もう自分でも分かっていないみたいだった。
「お前に俺の何が分かるんだよ」
マナは何も言えない。
頬が熱い。
涙が滲む。
するとライは、その涙を見て舌打ちした。
「……泣けばいいと思ってる?」
「ちが、ぅ……」
「ほんと無理」
ライはマナを突き飛ばす。
身体がテーブルにぶつかり、そのまま床へ倒れた。
鈍い痛み。
息が苦しい。
視界がぼやける。
でもライは気づかない。
いや、気づかないふりをしていた。
「……俺、寝るから」
そう吐き捨てて、寝室へ向かう。
扉が閉まる音。
静寂。
マナはしばらく起き上がれなかった。
身体が痛い。
頭もくらくらする。
呼吸がうまくできない。
それでも。
「……ライ、ちゃんと寝れるかな」
最初に浮かんだのは、自分じゃなくライのことだった。
そんな自分に、少しだけ笑いたくなる。
ぽろ、と涙が落ちる。
その時。
急に視界がぐらりと揺れた。
「……え」
立ち上がろうとしても力が入らない。
息が浅い。
耳鳴りがする。
マナはそのまま、床へ崩れ落ちた。
静かな部屋に、小さな物音だけが響いた。
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コメント
1件
うっ…無理…😭💔 毎日ちゃんとしようとしてるマナが切なすぎるし、ぶたれたあとに「ライちゃんと寝れるかな」って考えるとこ、もう自分より相手のこと考えちゃうのやばすぎて泣いた… しろまるさん、ここの描写がまじでリアルで読んでて心臓ギュッてなった/あとライもライで限界なのが伝わってきて、誰も悪者じゃないのにどうしようもない感じがもっと辛い…次どうなっちゃうの…!?更新待ってます✨