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若井滉斗side.
浮気、とか。
不倫、とかって、関係ないと思ってた。
ドラマとかアニメとか小説とかで起こることだろって。
でも、それをもし涼ちゃんがやっていたとしたら?
天使みたいに優しくて可愛くて、純粋で…って、
そんな涼ちゃんが浮気なんてするわけないと思ってた。
ゴミ箱に捨てられた。ソヴァージュの香水の空き箱。
そのソヴァージュは、
元貴の好きな香水なんだってさ。
偶然聞いたんだ。
スタッフさんが話してるのを。
それで調べて試しに香水つけてみたらね。
これ、涼ちゃんののつけてる香水じゃんって。
ねえ、どういうことだろう。
なんで元貴の好きな香水を貴方が持ってるの?
俺が好きなのは、香水とか、そういう人工的な匂いじゃ無いって、前言ったのに。
俺は涼ちゃんから漂う淡いシャンプーの清潔な匂いと、
涼ちゃん自身から漂う暖かくて優しい匂いが好きだったんだ。
今着てるような高くて背伸びしたブランドの服やバックより、
ちょっと安くても毛玉がついててもいいから
大きい涼ちゃんでもダボっとしたオーバーサイズのパーカーが好きだった。
今みたいに背伸びしたメイクより、
ちょっとだけお化粧して、でも自然体で笑っている涼ちゃんが一番綺麗だった。
魅力的で綺麗で、甘美でふらふらした涼ちゃんよりも、
俺よりちょっと恋愛が上手で、でも優しい、自然な涼ちゃんが一番好きなんだ。
優しい目つきも、
眼差しも
匂いも仕草も、癖だって、
ふわふわした唇も、鼻筋の通った鼻も、
綺麗で長い指も、華奢で白い体躯も
全部全部大好きで、全部全部愛してるんだ。
目を閉じると思い出すのは、涼ちゃんに告白した夜のこと。
満月が、輝く、二人きりの静かな帰り道。
今でもよく覚えている。
その時、元貴は打ち合わせとかで居なかった。
二人で歩いて帰ってた。
その時、思い切って言ったんだ。
震えて、掠れて、みっともない小さな声で。
「…月が、綺麗だね」
そう言った瞬間、涼ちゃんは歩くのをやめて俺の方を見た。
「それ、夏目漱石?」
「…、うん。」
そう短く、俯き加減に言う。
涼ちゃんは黙って空を見上げた。
夜風にさらさらの髪が揺れる。
「…うん、綺麗だね、お月様。」
「…僕、死んでもいいよ」
本を読むことが好きだった涼ちゃんは、
夏目漱石の『I love you 』を訳した『月が綺麗ですね』を知っていると思った。
それに対する涼ちゃんの返事は、『死んでもいいよ』。
それは、『月が綺麗ですね』に対する涼ちゃんの了承の返事に等しかった。
顔が赤い。
耳まで真っ赤なのが自分でもわかる。
夜でよかった、と一人で月を見上げる。
すると、急に片方の手が熱くなった。
隣を見ると、涼ちゃんが悪戯に微笑んでいる。
「…これからもずっと、お月様、見れるといいね。」
そう言いながら涼ちゃんは俺に優しく口付けた。
若井さんが言った『月が綺麗ですね』は告白の言葉です。
それに対する『死んでもいいわ』は
その返答として、『私も愛しています』と言う意味で使われます。
由来は二葉亭四迷が『片恋』という作品を翻訳する際に、
女性が男性の『yours(あなたのものよ)』という告白に対し、
『死んでもいいわ』と訳したことがきっかけと言われています。
♡と💬よろしくお願いします🤲
コメント
5件
うわぁ!告白の仕方が…真っ直ぐな告白も良いけど、小説家、文豪の人の言葉での告白も良い!ほんと天才ですね✨
ひやぁ、、、、 うつくしや、、、 告白そんな美しくいきましたか、、 ただのI Love you じゃない、少し照れくさくて直接好きって、言えないからそう表したのかもな、、 本日も綺麗です…✨️
表現の仕方好きすぎて流石に惚れた…相変わらずノベルなのに見やすいの本当に天才すぎて泣ける😢