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#一次創作
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麗太
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Cafe Latteベース隊長
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第220話 学園帰還
【異世界・転移した学園/校庭・朝】
二つに割れていた光が、再び重なり始めた。
体育館と校舎。
そして、校庭。
その間を、レアが残した白い光路が繋いでいる。
ノノの声が響いた。
『同期率、七十五!』
『七十八!』
『二つの中心、統合中!』
『でも、ここから先は切り離しも同時にやる!』
ハレルは主鍵を握ったまま聞く。
「切り離し?」
『現実へ戻る人と、異世界に残る人を分ける』
『アデル、ヴェルニ、ダミエ、セラ、王都兵と術師は帰還対象じゃない』
『境界を越える前に、学園の線から外れないと巻き込まれる!』
サキは息を呑んだ。
校庭の外周を見る。
アデルは左腕の副鍵で外周を支えている。
その近くでは、傷ついたヴェルニが片膝をついたまま白い線を見ていた。
体育館にはダミエがいる。
セラも王都側から場所の流れを見ている。
ここまで一緒に学園を守ってきた者たち。
けれど、同じ場所へは帰れない。
ハレルがアデルを見る。
「切り離せるのか」
「切り離す」
アデルは迷わず答えた。
「そのために、私は外周にいる」
「でも、今外れたら――」
「今ではない」
アデルは副鍵へ力を込める。
「最後の瞬間まで支える」
「お前たちが現実側へ乗ったところで、私が線を切る」
リオの傷ついた副鍵が震えた。
「その後の外周は、俺が受けるのか」
「一瞬だけだ」
アデルは言う。
「耐えろ」
リオは苦い顔をした。
「簡単に言うな」
「できないのか」
「できる」
ヴェルニが小さく笑った。
「お前ら、最後まで変わらねえな」
アデルが横目で見る。
「お前は下がっていろ」
「だから立ってねえって」
ヴェルニは膝をついたまま答える。
「それに、帰る奴らを見送るくらいはさせろ」
サキは何かを言おうとした。
だが、その時、スマホの中でreが強く揺れた。
◆ ◆ ◆
【現実世界・旧学園跡地周辺/仮設指揮所・朝】
旧学園跡地の森が、大きく揺れていた。
木々の向こうに、校舎と体育館の輪郭が重なる。
校庭の白線も、地面の上へ浮かび始めている。
佐伯が同期画面を見る。
「帰還率、八十を超えます!」
村瀬が別の数値を確認する。
「人の反応も建物に追いついています」
「校舎、体育館、校庭、全て同じ帰還群です!」
城ヶ峰は無線を取った。
『全班、外周から三メートル後退』
『学園の輪郭には触れるな』
『実体化後も、帰還確認が終わるまで中へ入るな』
各班から返答が届く。
『北側二班、後退します!』
『東側三班、外周維持!』
『南西外周、片桐班、三メートル後退!』
日下部は、画面に表示された縦方向の数値を見ていた。
その表情が変わる。
「待ってください」
佐伯が振り向く。
「どうした」
「帰還位置が下がってる」
「下がってる?」
日下部は地図を拡大した。
学園の平面位置は、旧学園跡地と重なっている。
だが、高さを示す数値だけが少しずつ沈んでいた。
地表。
地下三メートル。
地下五メートル。
村瀬の顔が青くなる。
「このままだと、学園が地下構造と重なる!」
木崎が声を上げる。
「石造建物の方へ引っ張られてんのか?」
日下部は頷いた。
「白いコアは切り離した」
「でも、帰還先そのものが地下へずらされています」
城ヶ峰はすぐに通信を開いた。
『異世界側!』
『帰還位置が地下へ沈んでいる!』
『平面位置ではなく、高さをずらされている!』
◆ ◆ ◆
【異世界・転移した学園/校庭・朝】
城ヶ峰の声を聞いたハレルが、足元を見る。
校庭は変わっていない。
だが、体がゆっくり沈んでいるような感覚があった。
Cの声が響く。
「番地だけでは足りませんでしたね」
サキが顔を上げる。
「C……!」
「建物には階があります」
「地上も、地下も、同じ平面の下にあります」
ノノが叫ぶ。
『Cが帰還地点の高さを変えてる!』
『このまま戻ったら、校舎が地下の石造建物と重なる!』
ハレルは主鍵を強く握った。
「高さまで名前で戻せるのか」
セラの声が入る。
『高さには、名前がありません』
『ですが、人には感覚があります』
『空が上にあり、地面が下にある』
『その記憶を重ねてください』
サキはスマホを見る。
reが画面の下へ引かれながらも、上へ戻ろうとしている。
サキは叫んだ。
「ここは地下じゃない!」
「校庭は地面の上にある!」
「上には空がある!」
ハレルも続ける。
「校門から入って、そのまま歩いてきた校庭だ!」
「階段を下りた場所じゃない!」
「石造建物の中でもない!」
リオが校舎側の線を支えながら言う。
「校舎の一階は地上にある!」
「その上に二階と三階がある!」
「地下から始まる校舎じゃない!」
体育館側から青山先生たちの声も届く。
『体育館は地上にあります!』
『窓から空が見えます!』
『入口から校庭へ出られます!』
reが、画面の上へ動いた。
その光に引かれるように、帰還線が少しずつ上昇する。
ノノが叫ぶ。
『高さ、戻ってる!』
『地下五メートルから三メートル!』
『一メートル!』
Cの声がわずかに低くなる。
「記憶で高さを決めますか」
サキはスマホを抱えた。
「みんなが知ってる場所だから!」
reが強く光る。
『地表位置、復帰!』
ノノの声が響いた。
『帰還座標、旧学園跡地地表に固定!』
◆ ◆ ◆
【異世界・転移した学園/体育館・朝】
体育館を包んでいたダミエの結界が、大きく震えた。
白い光が、生徒や教師たちを包み込んでいる。
ノノの声が届く。
『同期率、八十八!』
『異世界側の支援者、切り離し準備!』
ダミエはゆっくり立ち上がった。
「青山和子」
青山先生が振り向く。
「はい」
「次に結界が揺れたら、私は外れる」
「その後は、自分たちの名前で立て」
青山先生は一瞬、言葉を失った。
「ダミエさんは……」
「私はここに残る」
生徒たちも不安そうに見る。
ダミエは静かに続けた。
「心配するな」
「お前たちの世界へ行かないだけだ」
「消えるわけではない」
青山先生は深く頭を下げた。
「ありがとうございました」
ダミエはわずかに目をそらす。
「礼は、全員で戻ってからにしろ」
セラの声がイヤーカフから入った。
『境界が近づいています』
『ダミエ、結界を人の線へ渡してください』
「分かっている」
ダミエは両手を床から離した。
白い結界が、体育館の壁から剥がれる。
そして、生徒たちの名前の光へ重なった。
「ここから先は、自分たちで立て」
ダミエの姿が、白い光の外側へ離れていく。
◆ ◆ ◆
【異世界・転移した学園/校庭・朝】
ノノがカウントを始めた。
『同期率、九十二!』
『帰還境界、形成!』
『アデル、切り離しまであと十!』
アデルは左腕の副鍵を見つめた。
外周に繋がっていた光が、少しずつ細くなる。
ヴェルニがアデルの近くまで体を引きずるように移動した。
「外した瞬間、倒れるんじゃねえだろうな」
「お前に心配されるほど弱くない」
「そういう奴ほど倒れるんだよ」
アデルは答えず、ハレルたちを見る。
「ハレル」
「何だ」
「現実へ戻っても、終わったと思うな」
ハレルは頷いた。
「分かってる」
「ユナも、まだこっちにいる」
リオの表情がわずかに揺れる。
アデルは続けた。
「次に来る時は、もう少し壊れにくい方法で来い」
ハレルは苦笑した。
「考えておく」
サキがアデルとヴェルニを見る。
「また会えるよね」
ヴェルニが答える。
「勝手にいなくなるなよ」
「こっちから会いに行く方法は、まだ分かんねえんだからな」
「うん」
ノノの声が響く。
『あと五!』
『四!』
『三!』
校庭の端で、獣影が突然動いた。
ジャバの声が響く。
『最後に一発くらい、いいだろ!』
黒い獣が、ハレルたちへ飛びかかる。
だが、今度はアデルが副鍵から手を離した。
「二」
外周の光が切れる。
同時にアデルは体を反転させ、剣を抜いた。
白い斬撃が獣影を正面から切り裂く。
ヴェルニも残った力で腕を振り上げた。
「帰る奴の邪魔すんな!」
獣影の足元が崩れる。
「一!」
アデルが叫んだ。
「行け!」
◆ ◆ ◆
白い光が、学園全体を包んだ。
音が消える。
空も、地面も、校舎も、体育館も見えなくなる。
サキはスマホを胸に抱えた。
「re!」
画面の中の小さな光は、白い光路の先を示している。
Cの一文字が、その後ろへ浮かぶ。
Cの声が聞こえた。
「帰るのですね」
ハレルは主鍵を握った。
「帰る」
「では、また」
白い光が閉じた。
◆ ◆ ◆
【現実世界・旧学園跡地・朝】
大地が低く鳴った。
森の木々が、外側へ押し退けられる。
何もなかった空間に、校舎の壁が現れる。
窓が現れる。
体育館の屋根が現れる。
地面の上に、校庭の白線が走る。
半透明だった学園が、次第に色を取り戻していく。
一階。
二階。
三階。
どこも地下へ沈んでいない。
体育館の床も、校庭も、旧学園跡地の地表へ正しく重なっている。
佐伯が端末を見て叫んだ。
「建物実体化!」
村瀬が続ける。
「人の反応もあります!」
「体育館、校舎、校庭!」
「全帰還対象を確認!」
城ヶ峰は無線を握りしめた。
『全班、その場を維持』
『救護班、待機』
『まだ学園内へ入るな』
校庭の中央で、白い光がゆっくり消えていく。
最初に見えたのは、主鍵を握ったハレルだった。
その隣にサキ。
少し離れた場所にリオ。
三人の足は、現実世界の校庭を踏んでいる。
サキが空を見上げた。
灰色の雲。
冷たい朝の空気。
遠くから聞こえる車両の音。
見慣れていたはずの世界。
「戻った……」
リオは校舎を振り返った。
窓の向こうに、生徒たちの姿が見える。
体育館からも、泣き声や名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
ハレルは主鍵から手を離す。
白い光が消えた。
城ヶ峰の声が校庭へ響く。
『学園帰還を確認』
『繰り返す』
『学園帰還を確認した』
サキはスマホを見る。
画面の中で、reが小さく光っている。
Cの一文字は、もう表示されていなかった。
けれど、最後に聞こえた声は残っている。
では、また。
ハレルもその声を覚えていた。
帰還は成功した。
だが、Cは消えていない。
それでも今は、目の前にある現実を確かめる。
学園は、帰ってきた。
コメント
1件
お疲れさま、橘さん!第220話、最高だった…!まさかの帰還直前で高さをずらされて焦ったけど、全員で「地上にある」って叫んで記憶で固定する流れが熱すぎた。ダミエが結界を離すとこ、アデルが最後に剣を抜くとこ、全部胸に来た。帰還成功おめでとう。でもCはまだ消えてないんだよな…気になる!次も楽しみにしてる!