テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
息抜きの作品です! 好評でしたら続き出します!!なのでコメントたくさんください🙏 ちなみに、琉弥と颯のペア名がタイトルでもある『風の流れは美しく』です。
「……なんだよ?じっと見つめて。俺の顔に何かついてんの?」
そう聞くと、こいつは頬に軽くキスを落とす。
「…!?ちょっ!」
つい驚いて腕を掴むと、こいつは満足そうに目を細める。
「お前な……」
こんな日々が待っていたなんて誰が想像できたのか。今日も俺の心臓はうるさいくらい高鳴っている。
◇♡◇♡
朝。
必ずやってくるそれは、いつもいつも俺を絶望に誘う。
俺が朝を迎える時、世界のどっかでは夜なんだよな…なんて正直どうでもいいことを考える。
ということで、俺__西崎琉弥は着替えてから、食パンを焼く。
トーストされた食パンをテーブルに敷いた一枚のティッシュペーパーの上に置く。
皿ぐらい用意したかったけど、そんなに丁寧な暮らしをする時間も余裕もない。
電気もついていないリビングで、黙々と食べ進める。
学校の鞄を持って、靴を履く。
「……いってきます」
こうして始まる俺の一日。
いつも通りの通学路で、いつも通りつまらないことを考えながら歩く。
てか、この世に神様っているのかな。
いたとしたら俺は何の使命を持って生まれたんだろ。
え、てかその前に。本当に_
「学校吹き飛ばないかな」
思わず振り返ると、幼馴染の和泉颯がいた。
「思考読むなよ毎回……。おはよ」
「ん、おはよ。りゅう寝不足なの?」
「え?」
「ちょいっとクマできてる」
まじかよ、と呟いてしまう。
俺の顔色を伺うようにじっと見つめてくる颯の額に軽くデコピンをくらわしてやる。
「いたっ」
「いたくはねーだろ」
そんなくだらないやりとりをしながら正門を通り、教室まで向かう。
「おー琉弥じゃん!はよー。お前が朝から居るとか珍しくね?」
「バカにすんなよ!」
他クラスの友達からおりゃおりゃと物理的にも頭をぐりぐりとイジられる。
「じゃーなー!」
「おー」
アイツはアイツでバカみたいに良い奴だからたまにつるむ。
「…りゅう。教室行くぞ」
すぐそこでスマホをいじっていた颯が「ようやく終わったか」とでも言うようなでっかいため息を吐く。
二年四組の教室のドアを開けて、足を前に踏み出す。そして席に着く。
「おすおす!琉弥、マジで聞いて」
「はよー、どった?」
元気な声で席に近づいてきたのはクラスの中心でもある東條樹だ。
バスケ部のくせに意外と、というか普通に良い奴だ。愛されるべき馬鹿、とでも呼ぼうか。
「三組の荒井の奴がまた__」
樹が何か言いかけた途端、バンッとドアが開いた。
そこにいたのは如何にも怒っている噂の荒井。
「俺がなんだってんだよ東條クソ野郎!!」
「はぁ?お前が先に突っかかって来たんだろーが!……教室にまで入って迷惑かけんなや」
一瞬、樹は教室を見渡して焦った様子で追い払おうとする。
「マジ糞だなこの野郎!!!」
「はぁ!?」
クラス中が騒ぎ出す。
朝から元気に何してんだよこいつら。
俺の前の席に座っている颯は、面倒くさそうにする。
そこで俺は席を立つ。
取っ組み合いの喧嘩の前に止めないと後々面倒なんだろうな。
「おいお前ら落ち着けって!荒井は一体何にキレてんだよ」
「キレんのも当たり前だろ!?こいつ、俺の彼女に口説きやがって!」
そんなまた面倒な理由で……。
一方、樹は否定する。
「ちげーって!お前の彼女に一方的に告られただけだよ!口説いてもねーし関わったこと一度もなかったからな?お前もそれ知ってんだろ」
確かに、樹が人の恋人を口説くようなことは絶対にしないし、荒井の彼女と会った時も挨拶だけに留めてそれ以上関わったことはなかった。
荒井も本当は彼女が怪しいと思っているんだろう。
「……どっちにしても、クラスの奴ら巻き込むような問題じゃないだろ?喧嘩すんなら迷惑かけるべきじゃないって」
「そ、それはそうだな。すまん、頭冷やしてくるわ」
こうして嵐は去っていった。
その後、樹はクラスメイトに手を合わせて謝罪する。
「みんなごめんな!マジで!」
本気で申し訳ない、といつも通りのでっかい声にクラスはホッとした笑いに変わる。
「気にすんなって東條!このモテ男めッ!」
「東條くんは悪くないでしょ〜!なんで謝ってんの」
訪れた平穏に俺も胸を撫で下ろす。
席に戻ると、颯が「お疲れ様」と一言だけ口にして、小さく苦笑いする。
◇♡◇♡
その後の休み時間。
俺はいつものメンツとつるむ。
そんな俺のいつメンは、静かめな颯と、中心的存在の樹。ボケ担当夏輝と、悪ガキ担当の俊平。そして、俺。
すると俊平が、話を切り出す。
「今日の放課後ラーメン食いに行こーぜ?」
樹は何やら考え込む。そして……
「すまんけど俺はパス!すまん!」
その言い方が癪に障ったのか俊平が、はぁ?と問いかける。
「お前さ、最近ノリ悪くね?前も部活オフの日ダメだったじゃん。俺らとつるむん嫌なん?」
夏輝がまた火に油を注ぐ。
「モテ男は忙しいんだって!女連れて遊び行かねーとだからなー?ぶちゅーー」
流石の樹もそれが嫌だったのか少し声を荒らげる。
「ちげーよ!そんなことする訳ねぇだろ」
「じゃあなんだよ」
別に俊平も夏輝も本気で怒ってる訳じゃない。
でも学年が上がってから、部活がオフの日は何故か誘いを断っている樹。
理由によってはここでつまらん喧嘩に発展してしまうことがある。
「あのなぁ__」
「俺も今日はパスしていい?今がちで金欠なんだよなー」
樹の言葉を遮ってしまったが、仕方がない。
ちなみに、金欠なのは本当なので嘘はついてない。
「じゃあ俺もパスで」
俺を擁護してくれたのか、颯も断る。
二人は不服そうな顔をしているが、あと一押し。
「てか、ラーメン屋のクーポン券あるんだけど、来週から使えるし来週にしねー!?金欠の俺のためを思って!!!樹もそれでいいだろ?」
「最近断ってばっかだったし来週行くかー!」
納得いったのか、笑顔が再び戻る。
なんとか上手くいったようでよかった。
笑い合う輪の中、颯一人がじっと俺を見ていた。
「りゅうってさ…」
「ん?」
「……なんでもない」
なんだよこいつ。
不機嫌そうな顔を一瞬見せてから、会話に加わる。
◇♡◇♡
帰りは颯と帰る。
スマホを見ると、一件の通知が届いていた。
「今日も美桜さん、遅くなるって?」
「そー。最近根詰めすぎだろ」
「まぁ、そうだね」
母さんに了解と返信する。
その後、疲れが押し寄せる。はぁ……。
俺の顔色を見てから、颯が足を止める。
「公園。行かない?」
よく一緒に遊んだ公園を見て、なんだか少し懐かしい記憶が蘇る。
何も考えずに遊んでいたあの頃は、楽しかったな。
颯はブランコに座る。俺も隣のブランコに腰をかけてゆらりゆらりと揺れてみる。
まだ優しい春風を感じてみる。
「りゅう」
「なんだよ」
颯もまたブランコを漕ぎ始めると、勢いをつけてジャンプする。
そして綺麗な着地。
俺の目の前まで来ると、俺はゆっくりと減速させる。
「無理しすぎ」
思わぬ言葉に少しだけ驚く。
「空気読みすぎてその…心配になる」
「心配ありがと?」
そう返すと、颯は少しだけ眉を寄せる。
「ありがと、じゃないって」
「は?」
「なんで一人で抱えてんの」
風が強く吹く。
ブランコがきい、と音を鳴らす。
「別にそんなこと」
「嘘だね」
即答。
またこいつに。颯に心の内側を見透かされた。
颯はいつもまっすぐに俺を見る。
「…俺には何も気にしないでいいから」
「……うん」
少し照れ臭いような。
でも、その言葉がとても嬉しかった。