「皆んなはこの世にいないものって信じますか?」
「この世にいないもの?」
「そう、例えば妖怪や怪異、幽霊、神、そういうものだね」
「んー、俺は信じるかなぁ。神様とかが居なかったら神社とかも無さそうだし」
「そっか、あんまりそういうの信じてないって人も偶に居るんだけど、実際は本当にいるんだよね」
「まあ、実際さっきの黒い変な奴も見たし、信じるしか無いよな」
「さっきの奴も結局何だったの?」
「アレは亡き者の集合体。この辺りで死んじゃったこの世に未練を残してる人とかが集まって出来たのがさっきの黒い物体だよ」
「彼奴はもう倒したのか?」
「いや〜、それが多分まだなんですよねー」
「え!?あんな奴がもっといんの?」
「正確に言うと、アレは本体じゃないんです。元凶…所謂本物はこの廃校の何処かにいると思います」
「じゃあさっきのはその本体の分身とかか?」
「そうなるね。だからこれからその元凶を叩きに行くよ」
「え、タケミッチ1人で行くのか!?」
「?はい、そうですよ?」
「いや、流石に1人じゃ危ないだろ」
「でも、言い方は悪いですけど、俺からしたら1人でいる方が都合がいいんですよ」
「えー何で?1人じゃ危なくない?」
「周りに守る人がいると行動範囲とか別の事にも注意しなきゃいけないから、ただもっと数が増えたら流石に苦戦するかもだけど」
「結局タケミッチは何者なんだ?」
「そうっスね。簡単に言えば、人間と座敷わらしのハーフって感じですかね」
「座敷、わらし?」
「座敷わらし。半分人間で半分座敷わらしって事」
「何で…?」
「話すと少し長くなるんですけど。俺が5歳の頃までは普通に両親と暮らしてたんですけど、父親が暴力を振るってくる人で、何か気に入らない事があると殴ったり蹴ったりされてたんですよ。それで、父親が家を出た時に母さんが俺を流してくれたんです」
「その父親最低だな…」
「俺もそう思います。話戻すんですけど、俺が家を出た時にはもう既に身体に痣があったり、身体中を怪我してたんですよ。それで遂にその辺の道に倒れちゃって、もう駄目かなって思ったんですけど、その時偶々外に居た座敷わらしが俺を拾って屋敷で育ててくれたんです。俺が座敷わらしとハーフになったのは、俺の怪我を早く治す為に座敷わらしが自分の血を俺に飲ませたんです。それで俺も座敷わらしの力が少し使える様になって…」
「さっきの光線みたいなのもそうなのか?」
「いや、あれは俺が独自で習得した物なので、座敷わらしは特に関係無いです。座敷わらしの力は、さっきみたいに毱を操る力ですね」
「ヤバい…頭パンクしそう…」
「こればっかりは流石に頭がおかしくなるな」
「ねぇタケミッチ、さっきのアレってほっといちゃ駄目なの?」
「俺としてはそっちの方が楽なんですけど、マイキー君たちみたいに肝試しみたいな感じで人が入って来て襲われたら洒落になんないので…」
武道の言葉にマイキーがふーん…。と返事をする。そして少し考え込んだ後
「やっぱ俺も行く!」
と言った。
「はぁ!?何言ってんだマイキー!さっきあんな目に遭ったばっかだろ!??」
「そうだけど普通に気になるし、何よりタケミッチのカッコいい所みたいじゃん!!」
ドラケンに「マジで懲りねぇな…」と言われていると、武道が口を開いた。
「じゃあ…俺から絶対に離れないって約束してくれるなら良いですよ」
「ホント!?タケミッチ!」
「はい。ですが、本当に俺から離れないで下さいね!」
「うん!約束する!」
自分たちを抜きにして2人だけで会話が進んでいくのを見ているしかなかった他メンバーだった。
「取り敢えず、これから元凶を叩きに行くって事で皆さんに聞きたいんですけど、さっきの彼奴を初めに見たのって何処ですか?」
「図書室だ、そこの扉を開けたら彼奴がいて、走って俺達を追いかけて来た」
「今更ですけど、皆んな良く生きていられましたね…」
「怖い事言わないでよタケミッチ!!」
「あーごめんごめん八戒」
「図書室に今から行くのか?」
「はい。でもその前に一回確認したい事があるので、ちょっと待って下さい」
「確認したい事…?」
「…霊視眼」
そう言うと、武道の綺麗な青空をそのままにした様な蒼い目が光った。武道はマイキーたちが逃げて来た方向をじーっと見つめている。
「タケミッチ?」
「…ああ、はい。どうしました?」
「いや、ぼーっとしてたからどうしたのかなって」
「あー…特に何もないですよ。ただ…」
「ただ…?」
「…ちょっと面倒くさい事になりそうだなって思って」
え…?と呟いた俺たちを気にせずに「じゃあ行きましょっか」と前へ進んで行く武道を追いかけて行く。先程約束をしたばかりなので離れる訳にはいかない。
いよいよ目当ての図書室前に着いた時、武道が皆んなにお札を渡した。
「相棒、このお札なんだ?」
「結界。もしさっきみたいに戦う事になったら絶対に皆んなを守り切れる自信が無いから、此処から出るまではそれ持っててね」
「ああ、分かった」
準備が整ったのか武道がゆっくりと扉を開ける。
「何も…いない?」
「やっぱり…」
「?やっぱりって何だよ武道」
「さっき俺が霊視眼を使った時に霊力が別の場所に溜まってたので、恐らく彼奴らは別の場所に居ますよ」
「え、じゃあ何で此処に来たの?」
「マイキー君たちが初めて見たのが此処だから念の為ですよ、念の為!」
「ていうか、さっき普通にスルーしてたけど、また霊視眼とか霊力とか良く分からない単語が出て来たんだが」
「霊視眼は普段の裸眼では見れない幽霊や現象、痕跡、霊力などを見たり、感じたりする事が出来る眼の事で、霊力は幽霊、妖怪、怪異などが持っている力の源的なやつです」
「な、成程…?」
「兎に角、さっきの奴らは他の場所に居るんだな?」
「はい、霊力が上の方で大量発生してるみたいになってるので上に居ますね」
「まだまだ続くって事か…」
武道たちは階段を登って行く。そして武道が止まったのは扉の目の前、屋上に続く扉だ。
「え?屋上?」
「はい、この扉の向こう側から霊力を感じます。間違い無いです」
「でも、俺らさっき此処の扉確認してみたけど、全然開かなかったぞ?」
「え?開かなかったんですか?」
「ああ、けど鍵が掛かってるとかでは無さそうだったから、建て付けが悪いのかと思って他のとこ回る事にしたんだ」
「成程…」
「もう一回試してみるか?」
「え?三ツ谷お前マジ?向こう何があるか分からないんだぞ?」
「マジだよマジ。本気と書いてマジだよ。だってどっちにしろ此処開けないと何も解決しないんだろ?ならどうにかして開けるしか無いだろ」
「俺としてもこの先に本体が居るのは確定なので早いとこヤっときたいですね」
「タケミッチが言うならそれでいい、のか?」
「じゃあケンチン、開けてみて」
「ハァ…分かった」
ドアノブを握り、開けようとするドラケンだが、全く持って開かない。
「おい、マジでこいつ開かないぞ」
「ドラケンでも駄目かー」
ドラケンは東卍の副総長を務めている事もあり、普段から鍛えているのもあり、そこらの不良と比べると腕っ節もとんでもなく、体格もかなりいいので、彼がやってもびくともしないのは流石におかしいだろう。
「どうすっかなぁ」
「ドアが開かねぇならどうしようもなくね?」
「…壊すしか…」
「物騒な事言わないでよタケミッチ…」
「や、でも実際そうするしかなくないか?鍵が掛かってなくてドラケンでも開けられないなんて、最早それしか方法無いだろ」
「一回蹴破ってみるか?」
「あ、じゃあマイキー君にやってもらって」
「あ、良いよ」
「相棒、何でマイキー君指名したんだ?」
「1番成功しそうだから」
「大納得」
マイキーが1つ深呼吸し、扉に向かって蹴りを繰り出す。が、扉は全くダメージが無いようにピクリとも動かなかった。
「はぁ!?マイキーでも駄目なのか!??」
「もうどうなってんだよこの扉…」
せめて大変頑丈な造りで出来てる何らかの施設の扉なら分からなくは無いが、所詮は学校の屋上に続く扉。それに加え、廃校の扉だ。このくらいボロい建物の扉ならマイキーが蹴れば1発で破れるだろうと誰もが思っていたが、残念な事に扉はそう簡単に開いてはくれなかった。
「…嘘でしょ?w」
「いや何笑ってんだよ武道!今ので分かったけどマイキーの蹴りを耐えられるなんてこの扉とんでもねぇぞ!?」
「いや〜一周回って面白いなぁと思って…」
「今の何処に面白い要素あった??」
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続き待ってます!(〃✪ω✪〃)