こんにちは〇〇です。
知ってました?花桃の花言葉って「恋の虜、あなたに夢中」なんですよ。可愛い見た目に反して結構情熱的ですよね。
この抹茶シリーズを気に入ってくださった方は多分「おしるこ」とか「貴方の手の温もり」とか「愛酒」らへんも同じような緩さと甘さですのでお気に召すと思います。是非其方も読んでみてください。一番このシリーズに近いのは大方おしるこです。
てかうちの蘭春竜春可愛いすぎだとは思いませんか、そんなことない?親ばかみたいなもの?
※
・前作「春の香り」とは別の世界線です。
・蘭と春ちゃんが付き合っているかどうか、付き合っていなかったとしてこれからくっつくのかどうか、付き合っていたとしてどこまで進んでいるのか等は全てご想像にお任せします。
・・・私は、二人とも意地っ張りだから…ふふ。
そのキス大人の味につき
「何やってんだてめぇ。」
「んー?お茶飲んでるだけだけど。」
ここはある田舎の地主の民家だった場所である。何故三途がこんなところにいるのか、それはここの息子がかなり表には出せないようなことを行っていたのだが、大失態を犯しまんまととんずらして実家へ逃げ込んだからである。地主の息子なだけあり金の回りがよく、大して能もないのに金に目が眩んだ中間職が重要な仕事を任せてしまっていたのだ。本当に勘弁して欲しい。どいつもこいつも莫迦ばっかりである。
そうして何時ものように九井に仕事を振られ態々一人こんな辺鄙な村まで出向いてきたのだが、そこには先客がいたというわけだ。
「なんでてめぇがここにいんだっつってんだよ。」
豪勢な日本家屋の縁側に佇む蘭は日本庭園に引けを取らぬほどに美しく、まるで風景の一部のようだった。
そんな蘭が仁王立ちする三途を上目遣いに見上げ、こてんと首を傾げる。
「俺がいちゃ駄目?」
「っ、」
あまりのあざとさに三途が息を詰める。
なんで三十路の成人男性がそれやって様になってんだよ、くそっ。…ずるい。そんな顔で言われたら。
「別に。駄目じゃねぇけど…ここの仕事は俺に振られた筈だろ?」
「うん。」
「じゃあ、なんで…」
眉を顰める三途に蘭がにっこりと笑う。
「いーからいーから、細かい事は気にしない。おいで、春千夜」
「・・・」
縁側に胡座をかいて座る蘭が自身の膝をとんとんと叩く。薄い唇は弧を描いて、瞳は柔らかく細められている。ラッコ座りをしろということだろうか。三途は表情をなくして立ち尽くすばかりである。
「ほらー、早く。」
「ん。」
根負けしたのは三途の方だった。腰に刺していた刀を外すと、そっと蘭の足の間へと腰を下ろす。
その様子を満足そうに眺めた蘭は、三途の細い腰にそっと大きな手を回した。
ふと、三途が口を開く。
「お前、何飲んでんの。」
「春千夜も飲みたいの?」
「いや、別に…。」
春千夜はほんっと、素直じゃない。けどそこも含めて好きになってしまったのだから仕方がない。
頬が若干赤くなっているのは気のせいだろうか。蘭が顔を三途の方に埋めると、さらさらとした桜色の髪が零れ、朱に染まった耳が覗いた。
「春千夜…」
本当にかわいいね。大好き。
最後の方の言葉は空気に溶け、三途の耳に届くことはなかった。
「・・・おい、耳元で喋るんじゃねぇ。…くすぐったいだろ。」
「いーじゃん、ふふ。」
いっつも暴言を吐いたり、信頼も何もないなどと嘯いている三途がこんな風に他人に身体を預けているなんてみんなが知ったら驚くだろうか。ましてや俺になんて、な。
そう思うと更に三途のことが愛しく、蘭が三途を抱きしめる腕に力を込めた。
「なんだよ。」
「こーゆうのもたまにはいいなって思って。」
「・・・」
三途の無言は基本肯定である。それを蘭はよく知っていた。
かぽん
鹿威しの音が爽やかな水と共に跳ねる。
生ぬるい風が、緑の芳香を燻らせる。
三途がふ、と微笑んだ。
「春千夜?」
「確かに偶にはいいかもな…」
薄く、しかし確かに微笑む三途の横顔は掻き消えてしまいそうなほど儚くて美しかった。
そんな顔して、そんなこと言わないでよ…
顔に熱が集中していくのがわかる、蘭はそれを誤魔化すようにもう一度三途の頸に顔を埋める。
暫くそうしていると、手が温かいもので包まれた。ゆっくりと目を開けてみてみると、三途を抱きしめる手に、三途の華奢な手が重ねられていた。
「っーーー、ずるいよ春千夜…」
「蘭の方がよっぽどずるいだろ。」
「そんなことない。」
三途の肩の上で蘭が拗ねたように頬を膨らませる。
「はーるちゃん。」
蘭が三途をこう呼ぶときは大抵碌なことがない、何年の付き合いだと思っているのか、けれど散々解っていても、この甘い声に三途が抗えたことはなかった。
せめてもの抵抗で、少し億劫そうに振り返ってやる。
「なん…
ちゅっ
「⁈」
唇に柔らかな感触。いつのまにか顎には手が添えられていて。
「お、い」
「春千夜、口開けて。」
「あ、」
くちゅ、ちゅくっ
「ん、んん。」
口の中に苦い、けれどもいい香りのする蘭の唾液が流し込まれる。
抹茶だったのか…。にっげぇ。
ちゅくちゅく、くちゅ。
「あっ、ん」
くちゅ
蘭の舌が触れていった部分が熱い、融けてしまいそうだ。最早抹茶も甘く香り、脳の奥が痺れていく。
「っ、ぷは。」
「どお?」
「蘭、お前ふざ「抹茶美味しかった?」
あぁ、俺が飲みたいなんて言ったからか。
そう思うと今自分を抱きしめる男が可愛いくて仕方がない。
「ははっ。」
「春千夜なんで笑ってんの?」
「いや…別に?」
「えー気になるー!」
「あー。抹茶は苦かった。」
「教えて欲しいのは其方じゃないんだけどなぁ…。けどまぁ、抹茶は大人の味だから春千夜には早かったかもね。」
「おい、どういう意味だ。」
「んー?別にー。・・・ふふっ」
蘭が何を面白く思ったのか、小さく噴き出す。
「ははっ」
三途もそれに釣られたのだろう、一緒になって笑い出した。
閑静な日本家屋に二人の笑い声が弾み、転がる。
「なぁ蘭。」
「なーに?」
二人の横を花桃の花びらが小さく吹雪く。
綻ぶような桃色の香りがあたりに広がる。
「また、一緒に来よう。」
蘭が驚いたように目を見開く。しかし直ぐに相好を崩すと甘く甘く愛おしいものを見る目で柔らかく笑った
「あぁ、勿論。絶対来ような。」
そう約束し合う二人の手は絡まり合い、しっかりと結ばれていた。
終わり。
おまけ:日本家屋の元の持ち主及びその息子は二人がいちゃついている間にもずっと蘭によって倉庫の棚に詰め込まれたままです。父親の足だけは入らなかったそうで庭木の側に埋めたとのことです。暗いよね、狭いよね、早く片付けてもらえるといいね。
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