大森side
♩♩♩〜
朝からエントランスのチャイムが鳴った。
今日はマネージャーが迎えに来る予定はなかった……はず……
もしかして体調を気にして迎えに来たのかと思い、携帯を見るも連絡はなし。
誰だと思いつつ、インターホンを覗くと
大森「お前……なんで来たんだよ」
若井「もーとき、スタジオ行こ!」
中学生の時の再来……か……?
あいつは一体何を考えてるのか……
若井「もーときぃー!」
大声で名前を呼ぶ若井に若干イラッとしつつも、とりあえずエントランスで騒がれてるのは迷惑だから解除して若井を中へと入れた。
ピンポーンピホピホピンポーン
大森「アイツっ」
今度は部屋のインターホンを連打する若井に、急いで玄関へ向かい、俺は勢い良く扉を開け若井に向かってキレた。
大森「お前、朝から何考えてんだよ!!近所迷惑だろ!!」
若井「元貴が体調崩してないかの確認だよ、か・く・に・ん!それに元貴の声の方がデカくて近所迷惑だって。ほら、とりあえず中入れてよ」
大森「ちょ、おまっ、」
若井に押されて土間へと戻され、若井も同じく入ってきて扉が閉まった。
大森「お前確認なら携帯で連絡してくればいいだろ携帯で!連絡なしで来るなよ、これじゃあまるで……」
若井「ん?まるで何?」
まるで中学の時と同じじゃないか
そう言いかけたけど言葉を詰まらせた。
若井と昔話をする事はある
勿論中学の時の話も……
でも何だか言ってはいけない気がして、口に出せなかった
大森「……まるで執事みたいだな」
若井「えー!!何だよそれ!中学の時みたいに懐かしいとかあるだろ」
……なんだ……若井も思っていたのか……
俺が考えすぎなだけで、若井は中学の時の事なんて……
……何とも思ってはいないんだろうな…………
大森「……違うだろ。あの時は行かない選択肢があったけど今はないじゃん……」
若井「へへ、だから迎えに来ても無駄にならないからいいよね」
───
──
大森「……」
藤澤「……元貴?どうしたの?眉間にしわが寄ってるんだけど……体調が良くないの?」
朝からあまり喋らない上に、眉間にしわを寄せている俺を涼ちゃんが心配して声を掛けてきた。
大森「違う……」
藤澤「じゃあどうしたの?」
大森「…………若井が来たんだよ朝から」
藤澤「あぁ、それね」
大森「涼ちゃん知ってたの?!知ってたなら何で止めてくれなかったの!!!」
藤澤「ちょ、元貴落ち着いてっ。いや、あんな事があったから心配だよねってマネージャーとかと一緒に話しして……じゃあ迎えに行こうってなった結果、若井が名乗り出たんだ」
なんで迎えに行こうってなるんだよ……それならマネージャーが送迎してくれればいいじゃん……
百歩譲って迎えにってなったんなら、俺は涼ちゃんに名乗り出て欲しかった……
藤澤「若井はさ、本当にあの日の事を自分のせいだって思ってるんだよね」
大森「それはちが」
藤澤「うん。若井だけのせいじゃない。それに僕も自分のせいだと思ってる。でも、若井は人一倍罪の重さを感じてるんだと思う……自分のせいで元貴が死んでたかもしれないって。だから罪滅ぼしって訳じゃないけど……若井は若井なりに反省の行動がしたいんだよ……元貴からするとウザかったり……辛かったりするかもしれないけど……もう少し素直になってもいいんじゃない?」
大森「な、素直って……」
藤澤「喜んでいいんじゃない?って事だよ。あの日の事は誰が1番悪いとかないけど、それぞれ罪悪感をずっともったままなのもやりにくいでしょ?だから元貴が嫌じゃなかったら若井のやりたい事やらせてあげて?僕もやりたい様にするし」
大森「え!涼ちゃんもなの?!」
藤澤「僕も罪の意識はあるからね」
大森「……あ、そう言えば病院で涼ちゃん何か言いかけてたよね?それ?」
藤澤「あ、あぁ〜……うん、そうなんだけど……また教えるね」
大森「何で今じゃないの?俺に怒られるから?」
藤澤「う、ううんっ、そうじゃないよっ、その時がきたら……って感じ、かな?」
大森「なんかムカつく……涼ちゃんのくせに偉そうに大人ぶってて」
藤澤「ちょ、僕もう大人だから」
大森「……まあ、いいや、涼ちゃんが言わないって事はそれなりに理由があるって事だろうし」
藤澤「元貴……わかってくれてあり」
大森「せいぜい俺が知った時にどうなるか」
藤澤「え、」
大森「内容によっては……ねえ……」
藤澤「も、もときぃぃ〜怖いって!!」
大森「あはは」
涼ちゃんの言っていた罪滅ぼし
正直、誰が1番悪いとかそんな事は気にしていない。
不幸な歯車が噛み合った
それだけなんだ。
ただ、それだけ。
なのに涼ちゃんは涼ちゃんで、罪滅ぼしの行動なのだろう。何かと聞いてくる様になった。
やれご飯は食べたのか、薬は飲んだのか、コマンドは必要か、ちゃんと湯船に入ったのか……
お前は俺のオカンかと言いたくなるような事まで聞いてくるし、若井は若井で可能な限り俺を迎えにくるようになった。
あの頃と違うのは今日は行かないって日がない。
だから絶対に若井を迎え入れなければならない。だから俺はある行動に出た。
そして行動した次の日の朝
ピンポーンピホピホピンポーン
またもやインターホンを連打される朝。
あれほど何度も鳴らすなと注意してやらなくなったと思ったのに
大森「お前何回言わせ」
若井「も、も、元貴っ!!!」
大森「うるさっ、まだ出るには時間あるだろ」
若井「ち、ちが、コンっ、コンっコンシェルジュが入れてくれたんだけど!!」
大森「ああ、いい加減朝からインターホンに2回も対応するのがめんどくさいからコンシェルジュに伝えたんだよ」
若井「俺……『若井様、おはようございます。どうぞ』って言われて知らなくて「うへひゃあ?」みたいなめちゃくちゃ変な声出たじゃん」
大森「あははは」
若井「笑い事じゃないって!めちゃくちゃ恥ずかしかった……」
大森「おま、マジでウケるっ、あはははっ」
若井「笑うな!!あぁ……後でまた顔合わせんのマジで恥ずかしいって……」
大森「いひひひっ」
手で顔を覆う若井を涙が出るまで一頻り笑った。笑う俺を若井は怒っていたけど、笑うなって方が難しい。
俺は若井を顔パスで通すようにコンシェルジュに伝えた。
びっくりするだろうなとは思っていたけど、思っていた反応以上で俺は満足だった。
笑いが落ち着いて出る準備をしていたら、唐突に若井が聞いてきた。
若井「そういえばさ、約束してたのどうする?」
大森「え、俺何かお前と約束してたっけ?」
若井「ひどっ、パスタだよパスタ!元貴が美味いの食べたいって言ってただろ」
大森「……あ……あー!忘れてたわ」
若井「リサーチした俺の努力を返せ」
大森「じゃあ張り手する?」
若井「そこは覚えてんのかよ」
大森「てか、当分スケジュール詰まってんのわかって言ってんのかよ」
若井「だから終わったらご褒美に、だよ。そう思ったら頑張れるだろ」
ご褒美……か
若井「─────」
若井「───ときっ」
大森「あ、ごめ、ぼーっとしてたわ」
若井「何?調子悪い?俺に何か出来る事ある?」
出来る事…………
「元貴、Goodboy」
無理だ
それだけは無理だ
大森「いや、大丈夫、」
若井「本当か?」
大森「大丈夫だって、あ、ほら時間ヤバいから行こうぜ」
若井「うわっ、涼ちゃんに怒られる!」
若井に褒めて欲しい
なんて言えるはずもなく、俺は今日も気持ちを誤魔化す。
大丈夫だと言い聞かせ、いつもの様に自分自身を演じて玄関の扉を開けた。
───────
落書き挿絵
ピンポン連打な若井さんとブチ切れる大森さん
コメント
15件
よし、私決めました。 いつかくーちゃんにピンポン連打をしてやるt(((((