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第6話 恋と不安
「ところで、あれから叔母さんと話した?」
彼の質問に私は力なくふるふると首を横に振る。
「私から謝罪のメールを送ったら、振込先が書かれた返信は届きました。叔母はもう私と話す気はないんだと思います」
そう口にしたものの、私も本気で叔母と和解したいのかと問われたら即座にうなずけない。
「私も今までは、なんとかうまくやろうと精一杯気を使ってきたんですけどね。あの日、コーヒーをかけられたことで張りつめていた糸がプツリと切れちゃいました」
正直な気持ちを吐きだしたあと、力なく肩を落とした。
うまくやらなきゃと思っていたのは私だけだったみたいだし、叔母が態度を変えないのなら、もうどうすることもできない。
「借りた留学費用は少しずつ返していきます」
「でも、全額を一括で返せと言ってきてたんじゃ……」
「あ……たしかに。叔母も私が一度に払うのは無理だとわかってると思うんですけどね」
今の私の手取りは決して多くない。生活費と家賃を払えば、手元に残るのはほんのわずかだ。
貯金だってほとんどない。父の葬儀や諸々の手続きで、思っていた以上に出費がかさんでしまったから。
ない袖は振れないのだけれど、あの叔母のことだ。夜も働いてお金をつくれと言ってくるかもしれない。
「マンションも追い出されるから、住むところも見つけないと……」
「そういえば家も出るように言ってたな」
「まだ父が生きているころに実家を引き払って、そのあと叔父の会社が所有してる単身用のマンションに住まわせてもらってたんです。もちろん家賃は払ってましたけど」
ふと、今の部屋のことが頭に浮かぶ。
広くはないけれど、父と過ごした最後の時間の余韻がまだ残っている場所だ。
あの部屋の鍵を返す日が来るのだと思うと、胸の奥がじわりと痛んだ。
格安にしておくから住めと言いだしたのは、実は叔母のほうなのだ。なのに今度は出て行けという命令が下った。
私と一切の縁を切ると豪語したのだから、叔母はとことん冷徹になるつもりなのだろう。
「うちに住む?」
「じょ、冗談ですよね?!」
思わず声が裏返る。けれど、冗談だと笑い飛ばしてほしい気持ちとは裏腹に、心臓はどくんと大きく跳ねていた。
「空いてる部屋はあるけど?」
テーブルに頬杖をつき、あたふたとあわてる私の様子を楽しそうに観察している琉輝さんは少し意地悪だ。
だけど、その根底には彼のやさしさや思いやりがきちんと詰まっている。
一緒に住むなんて、そんなのまるで恋人同士みたい。
胸の奥がじんわりと熱くなり、同時に迷う気持ちも膨らんでいく。
頼りたい。でも……甘えていいのか分からない。
「冗談じゃなくて。困ったらうちに来ればいい」
まっすぐに告げられたその言葉に、思わず息をのんだ。
頼れる人がいる。そう思うだけで今の私は安心できた。
心狼@_shiro🤍🐺