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シンクの中で泡立つ水音が響く。
咲が皿をスポンジでこすりながら横へ置くと、悠真がタイミングよくそれを受け取った。
その動きが重なって――指先がかすかに触れそうになる。
「……っ」
慌てて手を引っ込めた咲の仕草に、悠真は少しだけ目を細める。
「大丈夫。水くらいで焦るな」
「は、はい……」
そう返しながらも、心臓は痛いほど跳ねていた。
たったそれだけ。
でも、二人きりの台所での沈黙は、普段よりずっと甘く響いていた。