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(─────…“死の意味”か……) 日が沈み月明かりの美しき夜に寧々は立花光神の過去を読んでいた。
死など知らない寧々にとっては少し難しい問題だった。それに、この本は少し不思議なのだ。人の過去の本なので当たり前なのかもしれないが。
(続き読みたいけど……)
ペラとページをめくる。そう、どれだけめくっても読めないのだ。
赤、紅、朱、アカ
全てが赤で塗りつぶされ全く読めない。花子同様光神の本は赤い。
赤い本は読んではいけない。それを無理で承知してくれたのだ。全く読めなくても仕方ないだろう。だが寧々にとっては少しでも零を知れたことに少なからず喜びを感じている。
──…今日はもう寝よう。明日のためにも。
***
───時は放課後。土籠との約束通り、光神の本を返しに理科準備室に来ていた。
「土籠先生」
「…カンナギの娘か。そんで、用件は」
「零さんの本の返却を」
そう言って、ほんのり赤に染まっている光神の本を差し出す。
「ああ、そうや、今日だったな……」
確かに。と本を貰って引き出しにしまい込んだ。
「……先に言っておくが、もう教えられることはねェからな。くれぐれも忘れるな」
寧々の心の中でも読んだのだろうか。それとも、顔に出ていたとか?判らなかったが、これもしょうがない事だと思い、渋々承知をした。
「───何勝手に人の事教えてるんですか」
気づけば後ろに零がいた。どうやら、先程の会話を聞いていたらしい。
「おっと…まさか居たとはね。ま、安心しろそんな深くは教えてないさ。あの本だってどうせ序章までしか読めない。姉なんて触れもしてないさ」
真実を言った。元生徒と先生同士。嘘ではないと悟ったのだろう。
「はあ……そうですか。と言ってもいずれは明かされることです、今言おうが後で言おうが対して変わらない」
自分の教え子達はどうしてこうも怪異や七不思議になってしまうのだろうか。不運であるだけか、はたまた自分への罰なのか。零の諦めの言葉を聞いて土籠はそう思わされた。
「───どんな重たい罪でも決して誰一人その罪を赦してくれなくても、私が、全てを赦すから…これで、全てよ」
儚く悲しそうにフッと微笑んだ。
これは、私しか知らない私だけの物語。許されなくても、赦されなくても、私が全て、全てを、赦すから…
それだけで、十分。もう、なにも望まない。望んでしまえば全てが壊れてしまうから───
「ねえ、影神お姉様」
───……私は、貴女だけを愛しています。