一時間ほど歩き、ハジメはやっとアキヅル村のアキヅル海岸にたどり着いた。海の周りには防潮堤が造られており、その防潮堤の上に金髪の誰かが座っていた。海の方を向いて全くと言っていいほど動かない。ハジメはその金髪の人物に近づいて「おーい」と声をかけてみた。しかし、返答がない。思い切ってハジメはその防潮堤の上に登ってみようと考えた。しかし、高すぎて登ることができない。あの人どう登ったんだと思いながらハジメは登れる方法を考えた。すると、声が聞こえた。少し低い無愛想な声だ。
「そこに階段あるぞ」
きっと金髪の人の声だとハジメは分かった。
「ありがと!」ハジメはその階段のある方向に向かって歩き出した。そしてその階段を上がり、金髪の人の元へ向かった。その人は少年と見られ肌は少し黒く焼けている。右目には眼帯をしていた。右手には白色の左手には赤色の指先が出ている手袋をしていた。ハジメはその人に声をかけた。
「俺、ハジメっていうんだ!お前は?」
「お前に言う資格はない」またまた無愛想にその言葉をハジメに言った。
「はあ!?」
キレ気味のハジメに少年はまた無愛想に言う。
「そうか。俺に何の用だ?お前のせいでそこら辺の魚が散っていったんだ」
「……お前、合気道が強いらしいな」
ハジメは男の言っていることを無視し話題を変えた。
「ふん。村の人が言ってるだけだ。戯言だ戯言」
「ほおん…じゃあ俺と一戦しないか?」
「なんで俺はお前なんかと戦わないといけないんだ。お前はそこら辺に居るアリだろ?」
「ぐう……お前…!口悪すぎだ!」
「本心だが?」
「ぐぬぬぬ……」
そんなとき。背後から可愛らしい高い声が聞こえてきた。ハジメは後ろを振り向く。するとそこには白く、先の尖った帽子を被り、ほうきを手に持っている少女の姿があった。
「何しているの?そこの二人」
不思議に思いながら少女はハジメたちに近寄ってきた。
「ちょっと…二人とも?」
少女はハジメの背中をほうきの柄の先でつついた。
「ええ?なに…?」
気分低めのハジメが少女の方を向き、そう答えた。
「そこで何してんの?君たち」
不思議そうな顔で少女はハジメに問いかけた。
「…は…!」
するとハジメは驚いた表情で少女の顔を凝視した。
「な…何…?」
困った表情の少女のことなんて気にせずハジメは少女に向かって言葉を発した。
「魔女(まおんな)だ!」
「魔女(まじょ)よ!失礼ね!まあ正確には見習いだけど…」
魔女は咄嗟にツッコんだ。いや自然に出た言葉なのかもしれない。
「ところで君たち何してるの?」
魔女は再度問いかけた。
「俺はこのひ弱剣士に話しかけられていた」
今まで黙っていた金髪の少年が答えた。
「ふうん…というか剣士なの?この人」
魔女はそう淡々とその言葉を口にした。
「まっ…まあな。まだまだ新参者だけどな」
「そう…なんで?」
咄嗟に出てきた言葉にハジメは喉を詰まらせることはなかった。
「この村を壊した魔王を倒すため!」決め顔でそう答えた。すると、魔女は何かひらめた様子で二人に話した。
「だから彼を誘おうとしてるんだ!」魔女の目線先には海の方を向いた金髪の少年がいた。
「おお!そうそう!」ハジメは親指を立てグッとの形に手を変えた。
「だってよ。ツクモ君」
ツクモとは金髪の少年のことだろう。どうして魔女が彼の名前を知っているのかはわからないがとりあえず彼を仲間に引き入れようと二人はツクモと何度も交渉をした。しかし、ツクモはうんともすんとも言わない。
「お願いだよ!俺はお前の力が必要なんだ!その武術で魔王をぶっ倒すんだよ!」
何度その言葉を言ったのかハジメは覚えていないがそれくらい苦労してやっとの思いでツクモは返事をした。
「それじゃあはっきり言う。無理だ」
その言葉を聞いた瞬間、ハジメは膝から崩れ落ちた。
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