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「マナを返して」
(星導視点)
(星導)「……なんで、こんなことに」
マナからの連絡が途切れたのは、数日前。
それまでは、たまに“既読”がついてた。
でも今はもう、メッセージが宙に浮いたまま。
嫌な予感は、とっくにしてた。
マナが泣きながら話してた、小柳の名前。
……まさかって思いたかったけど、
その“まさか”が一番リアルだった。
小柳の家を知ってたのは、昔、一度だけ行ったことがあるから。
手がかりはそれだけ。
けど、他にあてはなかった。
夜。
街灯の下、誰も通らない住宅街。
玄関のチャイムを押すと、しばらくして、扉が開いた。
(小柳)「……ああ、星導」
無表情だった。
でもその奥に、妙な熱が渦巻いてるのがわかった。
(星導)「マナは、どこにいる」
(小柳)「……もう、俺のもんだよ」
一瞬で、血が沸騰した。
(星導)「――冗談じゃない。
お前、自分が何してるかわかってんのか?」
(小柳)「わかってるよ。
星導が“手放した”から、俺が“拾った”んだ」
(星導)「……手放してなんか、ない」
感情が弾ける。
拳が勝手に動きそうになったけど、
扉の奥から、かすれた声が聞こえた。
(マナ)「……るべ……?」
その声に、全部が止まった。
(星導)「マナ……!」
小柳を突き飛ばして、部屋に入る。
そこにいたのは――痩せて、目の下にクマを作った、
でも確かに、マナだった。
(星導)「……っ、ごめん、ごめん、マナ……!
助けに来た、遅くなって……ごめん……!」
思わず抱きしめると、マナはぎこちなく震えてた。
でも、少しずつ、俺の背中に腕が回された。
(マナ)「……るべ、なんで……なんで今さら、来たんや……」
(星導)「――忘れるわけ、ないやろ。
マナを、こんな風にしてまで、離れられるわけないやんか……!」
後ろで、小柳が呆然と立ち尽くしていた。
その目に浮かぶのは、後悔か、それとも怒りか。
(星導)「マナは、俺が取り戻す。
お前がどれだけ“想ってた”としても、
マナを閉じ込める理由にはならん」
静かに、けれど冷たく言い放ったその瞬間、
部屋の空気が、凍った。