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7月1日夕方。スターライトフェスのエントリーリストが6人に絞られた瞬間、音葉は画面を見つめ、口元にかすかな笑みを浮かべた。
(さくらもちには勝てないかもしれない。でもこの顔ぶれなら──2位は私のもの)
その読みは、冷静な計算の上に成り立っていた。
音葉は迷いなく配信を開始し、ファミリーに向けて強気の一言を投げかける。
「私たちは1位を取りに行くわ。全力で」
それは、表向きの挑発だった。真の目的は、士気を煽り、味方を鼓舞すること。
その裏で、冷静かつ着実に“仕掛け”が進んでいた。
彼女はすでに、同じ事務所のライバーたちに一時的なエントリーと撤退を指示していた。
“異様な競争率”を演出することで、無名ライバーたちの参戦意欲を削ぐために。
──人数を減らす。それだけで、フェスの空気は変えられる。
音葉はぬるくなった紅茶を一口すすると、静かに部屋を見回した。
机の上には戦略メモが散乱し、どれも緻密で冷徹な線で埋め尽くされている。
その中のひとつに、彼女の視線が留まった。
《ミィコ》
その名前に、無意識のうちに鼻先で笑う。
(あの子、まだいるのね。どこまでも純粋で、どこまでも甘い)
ミィコの情熱や絆は、音葉にとって目障りだった。
熱さがある分、壊すのが楽しい。だからこそ、排除する価値がある。
「あの子、潰してやる。こんな舞台、似合わない」
誰に聞かせるでもなくつぶやいたその声は、ぞっとするほど甘く柔らかかった。
その直後、再び配信画面に向き直り、彼女はやさしい笑顔を浮かべる。
「ねぇ、みんな。一緒に最後まで、駆け抜けてくれるよね?」
策略は、すでに動いている。舞台は整った。
あとは、駒が勝手に動いてくれるのを待つだけ。
音葉は確信していた。勝つのは、感情ではなく──計算だと。
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