テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
百済るくあ【colorful】
207
#執着
猫とろ
191
臣桜
47,489
3
――そんなふうに、春川先輩夫婦が“恋人に戻る甘い時間”を取り戻していた頃。
俺こと――王子谷流星は、別の意味で人生最大級の試練を迎えていた。
発端は、高二の妹・莉央から届いた一枚のスクリーンショットだった。
『これ、兄ちゃんでしょ』
添付されていたのは、駅前のおしゃれなカフェの公式インスタに投稿された写真だった。
窓際の席で、小森がカップを両手で持って、花が咲くような笑顔を浮かべている。
……そして、その隣で世界一だらしないニヤけ面を晒しているのが、俺だ。
「……うわ、最悪」
やめろ。そんな幸せボケした顔を、全国に発信するな、過去の俺。
恥ずかしすぎるだろ……。
スマホを握りしめて悶絶していると、莉央から追撃が届いた。
『浮かれすぎ、キモっ』
「的確に刺すな……」
さらに数秒後。
『お母さんに転送した』
「終わった……」
その直後、手の中でスマホが震えた。
画面に表示された名前は――『母さん』。もはや、出ないという選択肢は存在しない。出なければ、次は鬼電。完全に詰みだ。
「……もし、もし」
『流星?』
母さんの声は穏やかだった。穏やかすぎて、逆に怖い。
長年ナースステーションを統率してきた看護師長だけあって、声を荒げなくても、相手の逃走経路まで一瞬で把握してくるタイプの圧がある。
『莉央から報告を受けました』
「報告って……」
これ、仕事の話じゃなくね?
『今年のお盆、帰ってきなさい』
「……はい」
『もちろん、すみれちゃんも一緒にね』
「…………」
すみれちゃん。
母さんは、すでに名前まで把握していた。
たぶん莉央が、写真から本人のアカウントまで特定して、母さんに全部送ったのだろう。
いくらなんでも情報共有が早すぎる。
『すみれちゃんのお母さんにも連絡しておくわ』
「は!? ちょ、待て!」
思わず声が裏返った。
『ご近所なんだから、当然でしょう』
「いや、なんで連れてくる前提!?」
『もう決まったことだから。流星は、すみれちゃんに予定を確認しておきなさい』
「…………はい」
通話が切れた。
母さんと莉央による、完璧すぎる連携プレー。俺の退路は、一瞬にして断たれたのだった。
コメント
1件
うわああ、流星くんのピンチ、めっちゃ笑った😂 妹・莉央のスクショ攻撃、的確すぎて草。しかも「お母さんに転送した」でトドメ刺すの、完全に姉妹ゲームじゃん…。でもお母さんの「すみれちゃんも一緒にね」がもう決定事項になってて、流星くんの逃げ場ゼロな感じが愛おしい。家族にバレるって、こういう温かい地獄があるんだなあって思いました。次、どうなるんだろう…!