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その日の夜。
透子の部屋で作ってくれたご飯を食べて、コーヒーを飲んで二人で過ごす何気ない時間。
こんな風に何気ない時間を過ごす幸せっていうのも、透子と出会って始めて知った。
家で誰かと過ごしたいとか思ったこともなくて、そもそも誰も家に入れることもなかったのに。
透子とは何もしなくてもただ一緒にいられるだけで満たされる。
透子は今何を考えてるんだろう。
オレと同じように満たされた気持ちになったり、幸せを感じたりしてくれてるのだろうか。
そもそも透子はいつからオレを受け入れてくれたのだろう。
最初はあんなに受け入れてくれなかったのに。
オレに他に誰か想っている人がいるってわかってたのに、それでもいつからか好きになってくれたんだよな?
それって相当好きだってことだよな?
って、それは都合良すぎか。
「ねぇ。透子」
「ん?」
「透子はさぁ。いつからオレのこと好きになったの?」
だからつい確かめたくなって。
隣の透子の目を見つめストレートに聞いてみた。
「は!?」
透子は飲んでたコーヒーを吹き出しそうになってる。
そんな驚くこと?
「ねぇ。いつから?」
「いや・・いつからって言われても・・」
オレがしつこく聞きだしても誤魔化す透子。
え、いつからかわかってないの?
「気付いたら好きになってた、みたいな?」
「それよく聞く言葉」
なんかそんなよくある言葉で片付けられるのはなんか納得いかなくて。
そんなのいつからかわかんないし。
オレは多分透子と出会ったあの日から、きっと・・・好きだった。
「う~ん、多分最初出会った時から気にはなってたんだと思う。でも多分自分でその気持ち止めてたから」
だけど、少し嬉しい言葉。
ちゃんと最初からオレ意識してくれてたんだ・・・。
「なんで止めてたの?」
だけど自分で止めてたって・・何。
オレは好きにさせたくて必死だったのに。
「ん~樹がどうこうっていうんじゃなくて、もう誰かを好きになるのが怖かったのかもね」
そっか。
そういえばそうだった。
透子が過去にツラい恋愛していたこと、わかっていたつもりなのに、最近それを忘れかけていた。
でもだから、オレが幸せにしたいと思った。
「でも・・オレを好きになってくれた」
言葉にするとそれはやっぱり奇跡みたいに思えて。
そんな後ろ向きだったのに、ちゃんとオレを好きになってくれたことは、やっぱりそれくらいのことで。
「うん。なんか樹はそういうことが気にならないくらい、自然に私の中に入って来た。好きになっていくのが自然すぎた」
オレそんな存在になれてたんだ・・・。
そんな後ろ向きだった透子の中に、オレが自然に存在出来たこと、自然にそう想ってくれたことが嬉しくて。
「でも。多分。樹と離れた時、それを強く実感したのは確か」
オレは透子と離れてホントにツラいだけだったけど。
透子に長い間会いたいのに会えなくて。
その間に透子はオレのことなんてもう意識することもなくなっちゃうのかもしれないとか、他に誰か好きなヤツ出来るかもしれないとか、不安で仕方なかった。
それでも、やっぱりオレはずっと透子を好きでいるしかなくて。
それ以外の選択なんて当然なくて、どれだけやっぱり透子が好きなのか嫌ってほど再確認しただけだった。
だけど、透子は、そんな時にオレへの気持ちをちゃんと確信してくれたってこと?
だとしたら・・・。
その時間も無駄な時間ではなく、オレたちには必要な時間だったのかもしれないと、少し救われた気持ちになる。
「じゃあ。もし。また離れたらどうする・・・?」
だけど、オレはまたそんなことを言って困らせてしまう。
また同じことがあっても透子の気持ちは変わらないのか、そんな試すようなことを聞いたりして。
それが男らしくないってわかってはいても。
「え?」
「変わらずオレを好きでいてくれる?」
だけど、男らしくなくても、カッコ悪くても、ちゃんと聞いておきたい。
透子がどれだけオレを好きでいてくれてるのか・・・。
オレは、知りたい。
「私は。樹と例えどんな状況だとしても、今の樹への想いは変わらない」
そして、透子はちゃんと欲しかった言葉をまっすぐ目を見てオレに伝えてくれた。
ありがとう透子。
その言葉があればオレは頑張れる。
「樹は?」
「ん?」
「樹はいつから私を好きでいてくれたの?」
「いつからだと思う?」
「わかるわけないじゃん」
「だよね。多分その時はオレの事これっぽっちも気づいてなかっただろうから」
透子との出会いは何度もあった。
その度、気になる人で、知りたくなる人だった。