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初めてヴィオラとテオドールが散歩した翌る日から、2人の距離は妙に近くなったと、デラは感じた。


相変わらず、テオドールはヴィオラを揶揄って遊んでいるようだが、ヴィオラは愉しそうにしている。以前までのヴィオラなら、頬を膨らませて、拗ねたり怒ったりしていたのに。


物理的にも、精神的にも距離が近い。


「ヴィオラ、ゆっくりで大丈夫だからね」


テオドールはヴィオラを抱き上げると、ベッドから床の上に降ろした。無論1人では立てるはずはない。テオドールに掴まり震える足で何とか床の上に立つ事が出来る。


歩く訓練を始めた頃は、主にニクラス主導の元、訓練を進めていた。

だが、最近ではテオドールが直接ヴィオラに手を貸し、ニクラスは側で見守っている。


ニクラスからの話では、精神的なものが大切との事で、自分が手を貸すよりテオドールが手を貸す方が歩けるようになる確率が高いとの事だ。


デラは医師ではないので、その辺りの話は分からないが、昔からよくいう、病は気からという事だろうか。


何れにしても、歩けるようになるならどんな方法でも構わない。ただ、もしヴィオラが本当に訓練を得て、歩けるようになれば自分は必要とされなくなってしまう気がして、そこは複雑な想いではある。



◆◆◆



「テオドール、様……」


「大丈夫だよ、僕が支えてるから。足を動かして?」


テオドールに支えて貰いヴィオラは震える足を前にゆっくりと、1歩出す。


後、ちょっと……。


そして、時間をかけてようやく1歩進む事が出来た。


「あ……出来た」


「本当だ」


「テオドール様!今、私、歩きましたよね⁈」


「あぁ、歩けたね」


「私!歩けました‼︎」


ヴィオラはたった1歩だが歩く事が出来た。その事に歓喜して思わずはしゃいでしまう。


今はテオドールに支えて貰った状態で歩く事が出来た。だが、自分の努力次第で歩けるようになると、希望が見えた瞬間だった。


「テオドール様‼︎」


ヴィオラは嬉しくてテオドールに抱き付き喜んだ。テオドールのお陰だ。彼がいたから、こうしてたった1歩だが歩く事が出来た。これなら、きっと自分1人で歩ける日が来る筈。


「テオドール様、私頑張ります!頑張って、1人でも歩けるようになります!だから、これからも、私を支えてくれますか?」


テオドールはその言葉に、顔を背けた。デラは驚いた顔をし、ニクラスは吹き出しそうになっている。


「ヴィ、ヴィオラ、それはそのままの意味、だよね?」


テオドールは、顔を背けながらそう聞いてきた。その顔は赤くなり、かなり動揺している事が見て取れる。


「へ……は、はい。そうですが、何かおかしかったですか?」


おかしいと言うよりは、捉え方を履き違えれば、結婚の申し出とも受け取れる発言だ。だが、ヴィオラはよく分かっていない様子で、首を傾げている。ヴィオラは本当にそのままの意味で言ったに過ぎない。


訓練をする上で、テオドールに身体を支えるのをお願いしただけだ。


「いや……やっぱり、そうだよね。ハハッ……だよね」


一瞬でも、もしかしたら……なんて思ってしまった自分が情けないやら、虚しいやらとテオドールは肩を落とした。











深窓の令嬢は、王太子殿下に持ち運ばれる

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