ーーー次の日雑貨屋さんーーー
桃「………………」
まだ……微妙に腰いてぇな……
店長「桃、大丈夫か?」
桃「はい……」
店長「…………」
桃「少し腰が痛くて……でもバイトには支障出ないんで大丈夫です」
店長「桃、こっちこい」
昔の目……
桃「え?でもまだこれ出し終わってないですし」
店長「いいから」
桃「……はい」
ーーー休憩室ーーー
店長「………………」
桃「あの……」
店長「桃、またやったのか?」
桃「……え?」
店長「また、抱かれに行ったのかって聞いてんだ」
桃「な、なんで……」
店長「俺には分かる……たった2年ぐらいだが、桃の事はちゃんと見てきたつもりだ。だからお前の目を見ればわかる」
桃「……っ……」
店長「で?どうなんだ?」
桃「……抱かれてないです」
捨てられるっ……店長にっ……それは嫌だ…
店長「本当か?」
桃「……はい」
店長が居なかったら……俺は…昔みたいに…
店長「…………」
桃「…………」
って……戻ったのか……昔に……
抱かれたから……
店長に会ってから変われたと思ったけど
変わってないんだ…俺……
店長「……そうか、ならここの店辞めろ」
桃「えっ……」
店長「嘘つくような店員はいらん」
桃「う、嘘じゃっ……」
店長「嘘だろ……抱かれたんだろ?」
桃「っ………………」
店長「言ったよな?桃の事は分かってるって」
桃「…………」
店長「なんで嘘ついた」
桃「…………店長に……捨てられると……思ったから……」
店長「……はぁ……」
桃「ビクッ……ごめんなさいっ…」
店長「お前が抱かれても、捨てねぇよ……ただ怒りはする」
桃「…………」
店長「なんで抱かれた」
桃「……昨日…母さんに金くれって言われて…稼いでくるまで帰ってくんなって……」
店長「で?」
桃「…………何も考えずに、歩いてたら……おじさんに話しかけられて……いつも俺を愛してくれてた人」
店長「……おう」
桃「……また愛してもいいかなって、大事だからお金をあげてまで抱きたいんだよって…また愛してくれるって……これが本物の愛なら、幸せなのかなって……嬉しいのかなって……」
店長「……どうだったんだ?」
桃「……何も……感じなかったです……」
店長「だろうな……」
桃「お金も貰えるから…いいかなって……」
店長「そんで?俺の約束を破っていいと?」
桃「っ……」
店長「ったく……」
桃「ビクッ……ごめなさいっ……ごめんなさいっ」
店長「……ごめんな」(抱き寄せる)
桃「ビクッ……お、俺……汚いっ……」
店長「汚くない。ごめんな……俺のせいだな」
桃「違っ……」
店長「俺が愛を見つけろって言ったから、確かめたくなったんだよな?」
桃「店長のせいじゃっ……」
店長「ひとつ教えてやる」
桃「…………?」
店長「愛って色々形があるって言ったろ?」
桃「…………」
店長「俺はお前のこと、家族だと思ってる。それは咲もだ。お前のことを俺達の子のように思ってる」
桃「!!」
店長「俺達はな……桃の事を家族だと思って愛してる……だから、怒る。桃が違う道、桃が不幸になる道に進むなら全力で反対する。俺らは桃に幸せになって欲しいから。でもその愛を伝えないと意味ないよな……」
桃「………………」
店長「自分で気づけって言ってごめんな……桃は愛、知らないもんな、気づくの難しいよな……本当にごめんな……俺と咲はお前のことを愛してる。身近にある愛ってのはこれだ、俺達のことだ……」
桃「店長……」
店長「咲が桃に美味しいものを食べさせたいのだって愛だし、俺がこうやって怒ってるのも愛だ……桃、大事な俺らの子だよ。ずっと愛してるし、ずっとお前の味方だ」
桃「…………っ」
店長「お前は昔から泣かないなぁ?泣いてもいいんだぜ?我慢しなくていい……」
桃「………………」
店長「そこは泣くとこだろ?」
桃「…おれはっ……ないちゃ……だめ」
店長「なんでた?誰が言ったんだ?」
桃「だって……おれ……きたない……」
店長「汚くねぇって言ってんだろ?」
桃「でもっ……」
店長「桃は綺麗だよ……優しくて、真面目で、努力家で、他にもいい所沢山ある。だから汚くねぇ」
桃「…………ウッ……」
店長「泣いちまえ、スッキリするぞ」
桃「グスッ……グスッ……ウアッ……」
店長「これまでよく我慢したな。ずっと泣かないように我慢してたんだろ……苦しくても、辛くても」
桃「ヒグッ……グスッ……グスッ……」
店長「よく頑張った」
桃「ヒグッ……グスッ……グスッ……」
店長「……もう約束破るなよ?」
桃「グスッ……グスッ……はいっっ……!」
店長「落ち着いたか?」
桃「はいっ………すみません」
店長「今日はもうあがれ」
桃「で、でも……出し終わってないのありますし、バイトしないと……」
店長「ったく、お前は頑固な部分もあったなぁ」
桃「え?」
店長「その顔でバイトすんのか?目が赤いし、少し腫れてるし」
桃「あっ……」
店長「パワハラだって思われちまうよ。明日ラストまで入れば今日の分は稼げるだろ?」
桃「は、はい……すみません」
店長「すみませんじゃなくて?」
桃「あ、ありがとうございます」
店長「ん、帰って休みな」
桃「はい……」