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「いやー今回の事はお気の毒でしたね。まさか初めての葬式が弟さんとは。心中お察しいたします」
「お心遣い感謝いたします。しっかりとお休みを頂いたので、明日には仕事への復帰もできるかと」
「素晴らしいですね、そこまでして輝煌グループに貢献したいとは!これはよりよい待遇も見込めるでしょう」
「とんでもございません。私はまだまだ未熟者です。これから研究成果を出していかねばなりません」
「流石期待の新人”水面さん”ですね!これなら上層部へ行けるかもですよ!」
「いえいえ。上層部の皆様は技術面、知識面ともに素晴らしく好成績な方々のみが入れる場所と伺っております。私にはまだま だです」
「謙遜しなくていいんですよ!ともかく、水面さん、貴方には期待しています。輝煌グループへたくさん貢献してくださいね」
「ええ、どうぞよろしくお願いいたします」
「……なんだこれ」
俺……木更津は今、さっき落ちてきたよく分からん空間をさまよい、偶然見つけた部屋に入っている。
その部屋は、昔懐かしいCDが大量に置かれている。
CDはかなり古びているものから新しいものまで様々だ。
また、内容もそれぞれ異なり、今回見たCDは白衣を着た男性二人が話している内容だった。
CDには一つ一つタイトルがついているのだが、さっきのやつのタイトルは「新人時代①」。
なぜか新人時代②は見つからなかった。
また、他のCDには参加者の名前やネームドの名前がついていて、ついていないものは新人時代①のみ。
多分部屋主のCDなのかな。
しかし可笑しなことに、ネームドの名前も参加者の名前もおそらく全員分あるのだ。
部屋主は外部の人間なのだろうか。
前の話に戻るが、参加者の名前がついたCDがある。
すなわち、俺の名前のやつもある。
「見てみるか……!」
「木更津」と書かれたCDを手に取る。
古さは中間位だ。少しタイトルは読みづらくなっているが、特段問題はない。
状態も酷くなく、問題なく流せると思う。
そのCDをプレイヤーに入れる。
一瞬ノイズ音が聞こえ、その後映像が流れ始めた。
映像には見覚えのある金髪の男と白髪の男が、会議室のようなところで何やら話している。
「あー、撮るの?」
「カメラに話しかけても意味ないぞ」
「分かってはいるけど。嫌なんだよカメラ!僕写真と動画って大っ嫌い」
「なんでだよ?お前よくモニターで死にかけのmessiahを追いかけてんじゃん」
「あれは違う!あれは僕の趣味じゃん、でもこれは他人の趣味でしょ?他人に振り回されたくはないじゃん」
「カメラとmessiahだったらどっちが嫌いなんだ?」「messiahに決まってんじゃん。死ねほんとに」
「で、撮ってるってことは、参加者の話なんだよな?」「そうじゃない?」
「次はせ……木更津くんの話でしょ?」
「話っつっても、なんか話すことあるか?」
「霊媒体質ってくらいでしょ、結構楽なお話会になりそう。あ、来た来た」
映像には、ドアを開ける音と「失礼します」という声で、40代半ばくらいの女性が入ってきた。
軽く咳ばらいをして、白髪の男が話し始める。
金髪は姿を消していた。かなり不自然な気がするので、能力が関係しているのかもしれない。
「こんにちは、輝煌グループが主催する『神化人育成プログラム』への参加をご希望されている、木更津さんでお間違いないでしょうか?」
「ええ。本日はよろしくお願いします」
「ご参加を所望されるお子さんのお名前をお聞かせ願えませんか?」
「木更津星斗です」
「星斗さんですね。それでは、早速本題に入ります。星斗さんが『神化人育成プログラム』にふさわしいと考える理由をお願いします」
「ええ、まずあの子には霊媒体質があります。なので、プログラムの最低条件は満たしています。また、幼少期から特別虐げてきましたし、忍耐力と精神力はピカイチでしょう」
「それは素晴らしい、輝煌グループに、いや世界に貢献するため、育児から徹底して下さっているとは!」
「滅相もございません。私はただ、自分の感情に忠実なだけです」
「あと、これは大きいと思うのですが、あの子のたった1人の兄はネームド側に入れましたよね?だから、兄弟で争う……なんてこともあると思うのです。そうなれば、きっとより素晴らしい成長につながると思いまして」
「敵の事まで考えての動きだったのですか、輝煌グループに対する忠誠心は見習うものがありますね」
「ありがとうございます、今日も受かるために30回は鬼神天満宮の周りを周回してきました。道中のお地蔵さまにも深い一礼を忘れずに」
「おお、いい意味で怖いですね」
「……そういえば。少し気になっていることがございまして、上げ足を取るようで申し訳ないのですが……星斗さんのお兄さんは2人いらっしゃるのでは?」
この質問を白髪が投げかけた途端、女性は机を大きな力でたたき、声を上げた。
「切斗様とあの役立たず二人を一緒にするな!!あのお方は素晴らしい、ああ素晴らしい。なんせあの黄楽天様を手なずけなすった!(ノイズ音)も星斗も何もしてないくせに!同じにするな!」
「ああ……(舌打ちのような音)すみません。じゃあ手続きに行きましょうか、星斗さんは合格ですので」
「そうですか、ああ、輝煌鬼神様!八幡鬼神天様!私はやりました!我が子孫にすべてを捧げさせましたぁ……!!」
そこまで言い切り、女性は背後に倒れた。
「お疲れ、隠すのはできた?」
「あーそーだなー」
「やる気ないね……まあ予想外に強敵だったし。それに君にとってはあの人は……(ノイズ音)……」
ここでビデオは終わっていた。
「……えっと????」
一回だけですべてを理解するのは無理に等しいので、何回か繰り返して見たところ、色々と分かったことがある。
まず冒頭で出てきた金髪は衣川で、白髪はhappyだろう。
衣川がなぜhappy側にいるのかは知らないが、もしかすると裏切っているのかもしれない。
そして、ここが一番重要だが、おそらく俺の名前は「木更津星斗」。
言われてみればしっくりくるような来ないような。
また、俺はどうやら特別に虐げられて育てられていたらしい。
全ては輝煌グループの「神化人育成プログラム」とやらのために。
その計画はおそらく俺達が閉じ込められている状況のことだろう。
つまり、俺が信じてやまず敬愛する我が母は、
正直に言ってかなりゴミみたいな人間だった。
しかも兄は二人いて、少なくとも片方はネームド側にいる。
もう片方は「切斗」という名前で、どうやら虐げられていない兄弟のようだ。
なので、切斗は特別扱いされていた。
また、輝煌鬼神(八幡鬼神天とも言っていたが……)という人物が輝煌グループの代表?的な存在。
御曹司は貴志のはずなのだが、金持ちのことだ、変な役職があるのかもしれない。
どこかに行く気もない。何をするにも気力が足りてない。
頭だけが動いて、この後どうすべきかを考えている。
脳の裏が冷えていくような、そんな感覚がする中で。
まず俺がすべきなのはここを脱出して仲間と合流すること。
そこでさっき得た情報を共有して衣川をボコボコにする。
そして、「木更津星斗(切斗)」という名前を聞いたことがあるか質問する。
これくらいしか思いつかない。
とりあえず、この部屋を出ない事には始まらないだろう。
一応部屋にあったCDを持てるだけ持って、俺は部屋から出た。
*
「ところで、少年。お主は……その……やはり、儂の声が聞こえるということは……」
「だからダークネスパワフルネスがパーフェクトにグッドナイトなんだろ!?」
「儂に片仮名を浴びせないでくれ!!……しかし、やはり確認せねば。お主、今自分がどんな状況にあるのか分かっておるか?」
「具体的にお願いしたい!!暗黒騎士にも分からぬものは存在するからな!!」
「儂の声が聞こえるやつは……申し訳ないが、■■だけじゃ。そこじゃな」
「……合ってる。俺はもう……」
「そうか……。ここはやはり可笑しな場所じゃな」
「あの」
「如何した?少年」
「お前、は、えっと……なんて言ったらいいんだろ……強い、というか偉い神様なの?」
「ふむ……範囲が広いのう。例えば、どんな神を偉い、強いと言うのじゃ?」
「例えば、俺の記憶とか、心情とかが分かるのかなって」
「過去の事はある程度分かる。ここに居る二人の神化人には劣るがのう」
「そっか……。じゃあ、ちょっとその……人生相談、みたいなことしていいかな?俺が言うのも変だけど」
「悩みがあるのか?悩める小僧を導くのも面白かろう」
「あざす。えと、あん時……俺が中2くらいの時。あの時、俺は」
『ここに落ちたら一等賞!!』
「……飛ばない方がよかったのかな」