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あの後、橙さんが鞭を打つことはなかった。
私の背中についた鞭の跡を指でなぞり、震えた声で只々嗚咽を零していた。私が彼のためにできたことは小さかったかもしれない、なかったかもしれないけれど、少しでも彼の中に何かが起こることを私は信じたい。
「花月ちゃ~ん!お風呂のじか…どうしたの、その背中。」
「あ、ちょっと、いろいろあって……。」
「もしかして李仁くん!?イヤリング返したことバレて酷いことされたの!?」
「イヤリングのことは…バレちゃったけど、鞭を打たれたのはそれが理由じゃないよ。私が…踏み込みすぎちゃっただけだから。」
「もしかして……家族の話、しちゃった?」
「え…?」
「ううん、違うなら別にいいの。ただ、李仁くん…家族の話とか、生い立ちのこと話すと機嫌悪くなっちゃうから……。」
そうか。だからあんなに……拒絶するような反応を……。
「橙さんのこと……もっと知りたいって思ったら、怒らせちゃうかな……?」
(「分からない……僕たちは僕たち以外の人の言葉なんて聞いたことがないから。でもきっと……李仁くんのためにはなると思う。」
今の私には歩み寄ることしかできないかもしれないけれど、この儚くて脆い細い糸を繋いでいきたい。
「じゃあ、一緒にお風呂に行こっか。そこで続きを教えてあげる。」