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サアヤは取材を受ける気だという。
仕事への理解を深めるような作品を描いてもらえたら嬉しいし、彼とも仲良くなりたいという下心つき。
生年月日は一般に知られているので、その情報を持ってツクシちゃんに相性を見てもらう気だ。
ただでさえ強いのに、転んでもタダでは起きないサアヤに幸あれ。
「で、イチゴはあれから変化あったの?」
とうとう私の番。何をどう話せばいいのか。
「まずね、前世の夢の続きを見たの。全三話、たぶんあれで終わりだと思う」
私は、生贄となる前の晩の宴、泣く妹、一人で牢で月を見上げていたこと。そこへ婚約者がやってきて土下座に近いことをして詫びてきたことなどを話した。そして、婚約者と妹は想い合っていて、私は婚約者に生贄となる二十五歳の誕生日まで抱かれることがなかったことを話した。
自分自身のことを思い返したのか、前世の自分に同情したのかわからなかったけど、涙がこぼれた。
サアヤとコトリもしばらく黙っていた。しかし、突然サアヤがひらめいた! という感じで話しだした。
「好きな人に抱かれるって体験は、イチゴももう経験済みでしょ? 前世の彼女だってもう気が済んだんじゃない? だから、誕生日が過ぎれば普通になるんじゃないかな」
「そうだよね。私もそう思ってるんだ。でもなんだか、不安が消えないの」
私は気がかりの一つ、後輩の宝山君が元婚約者なのかもしれないという話をした。
「そんな偶然ある? ねえ、ツクシちゃんに相談してみようよ。今日はイチゴの話をしっかり聞いてもらおうよ」
コトリの提案で、早めに飲みは切り上げて喫茶店に行くことになった。約束したから、横山の話は勝手にしないでおこう、そう思いながら私は居酒屋を後にした。
「いらっしゃい。あら、なんだか深刻そうね。アタシでよければじっくり聞くわよ、奥の席にどうぞ」
私たちは奥の席へ進み今日は私を真ん中にして座り、おすすめのスパイシーハーブティというのを注文した。
香りが強いのに心が落ち着くハーブティーを飲みながら、私はツクシちゃんに夢の話を聞かせた。そして、同じ会社に横山以外にも過去の夢を見ている男の子がいて、もしかしたら彼が婚約者だったんじゃないかと疑っていることを伝えた。
「国を救った人が二人と、その関係者が一人、偶然が重なり過ぎてない?」
コトリが言った。すると、ツクシちゃんは驚くようなことを言い返した。
「そもそもね、イチゴちゃんの会社にイチゴちゃんの前世に恩義を感じている人がたくさんいること自体がなんらかの意思を感じさせるのよ」
「どういうこと?」
「サアヤちゃんとコトリちゃん、昔から普通に付き合えているでしょ? きっと前世で別世界にいたのね。イチゴちゃんの恩恵を受けていないから普通に付き合えるのよ。他にも、アタシや赤の他人、全ての人がイチゴちゃんに擦り寄ってくるわけじゃないはずよ」
「たしかに。じゃないと今頃大変なことになってるもの」
「あなたの高校や大学、そして今の会社。そこにイチゴちゃんの前世で助かった人がたまたまか必然かはわからないけど数多くいたとする。信仰や考えって人に影響されやすいものでしょ。前世で関係ない人も、その人たちのせいで、イチゴちゃんのことは大切にしなくちゃって刷り込まれている可能性があるんじゃないかな」
ツクシちゃんの言いたいことはなんとなくわかる。でも、
「今まで付き合った人たちはたまたま前世関係あった人なのかな。だからお互いに付き合うことになったのかな」
勝手に運命に踊らされて、傷つけられてきたのかなと思うと少し悔しい。
「それはさすがにアタシにもわからないわ。でも、色々知ってしまった今からは、自分の意思で選ぶことができるのよ」
「わかるのかな私に。この先に待っているのが本当の恋なのか」
「待って、今までイチゴちゃんには前世関係の話しかしてないわよね。ちょっと占わせて」
ツクシちゃんは真剣な顔でタロットを操っていた。そういえば、私は初めてだったな。狙ってる人とかいなかったし。
「ふーん。難しいわね。運命の人は現れてるって出ているわ。それも二人。どちらを選んでも幸せにはなれると思う。ただ、少し引っかかることがあって、それが何なのか私にはわからないの」
二人。思い浮かぶ人は彼と彼。
「ありがとう、ツクシちゃん。私、自分でしっかり考えてみる」
「困ったことがあったら遠慮せずに避難場所にしていいからね」
何のことかよくわからなかったけど、私は大きく頷いた。
閉店時間になってしまったので、外に出ることに。ツクシちゃんを独占しちゃって大丈夫だったかな。他の二人も占ってもらいたかっただろう。私は謝った。
「なーに言ってんの。私はもう少し固めてからまた来るわ」
と、コトリ。
「そうそう。私ももう一度会って本当に運命の相手かまず自分で確かめてみる」
サアヤも乗っかる。そして、
「うちは、いい占い師が揃ってるから大丈夫なのよ。気にしちゃダ・メ」
ツクシちゃん。
みんなの優しさに泣きそうになる。
「ねえ? これ前世のせいでみんな優しいんじゃないよね?」
私は三人に軽くどつかれたのだった。