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「……お前、少し興味深いな」
目の前の彼にそう言われ、ルナ・シルヴェインは思わず目を瞬かせた。
興味深い。
たったそれだけの言葉なのに、胸がくすぐったくなる。
「そ、そうですか……?」
「その魔力、普通ではないな」
シャドウの視線が、ルナの身体を静かに捉える。
ルナは少しだけ困ったように笑った。
「よく言われます。でも、自分でも詳しいことはわからなくて……」
それは本当だった。
ルナの魔力は、幼い頃からどこかおかしかった。
普段は問題なく扱える。治癒魔法も使えるし、体術や銃を組み合わせた戦いもできる。
けれど、時折、魔力が自分の意思に反して揺らぐことがあった。
その原因が、彼女を苦しめ続けている呪いなのか。
それとも、別の何かなのか。
ルナにはわからない。
「……少し、見せてみろ」
「え?」
シャドウが一歩近づいた。
ルナの心臓が跳ねる。
ち、近い……!
普段なら落ち着いて対応できるはずなのに、目の前にいるのは、あの圧倒的な力を持った人物だ。
しかも、自分が一目惚れしてしまった相手。
「どうした?」
「な、なんでもありません!」
ルナは慌てて姿勢を正した。
「お願いします!」
両手を前に出し、魔力を集中させる。
淡い紫色の光が、彼女の掌に集まった。
その光は、柔らかく温かい。
しかし、その中心に、一瞬だけ黒紫色の揺らぎが走った。
シャドウの目がわずかに細くなる。
「……なるほど」
彼はそれ以上、何も言わなかった。
けれど、その沈黙が気になって、ルナはそっと顔を上げた。
「何か、わかりましたか?」
「いや。まだ判断するには早い」
「そうですか……」
少し残念そうに肩を落とす。
すると、シャドウは淡々と告げた。
「だが、お前には力がある。それは間違いない」
ルナは顔を上げた。
「……本当ですか?」
「ああ」
たった一言。
それだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。
今まで、自分の力について曖昧なことしか言われなかった。
呪いのせいで魔力が乱れるたび、自分の力を信じられなくなりそうになることもあった。
それなのに。
この人は、迷いなく言ってくれた。
――お前には力がある。
「……ありがとうございます」
ルナは、自然と笑顔になっていた。
その笑顔を見て、シャドウは一瞬だけ視線を止めた。
だが、すぐにいつもの調子へ戻る。
「ひとつ聞こう」
「はい!」
「お前は、何のために力を求める?」
予想していなかった質問だった。
ルナは少し考えた。
自分のため。
誰かを守るため。
呪いに負けないため。
どれも間違いではない。
けれど、今の自分がいちばん望んでいることは――。
「……自分の大切なものを、自分で守れるようになりたいんです」
ルナはまっすぐに答えた。
「誰かに守ってもらうだけじゃなくて。私自身が、ちゃんと戦えるようになりたい」
そして、ほんの少しだけ頬を赤くする。
「……もっと、強くなりたいんです」
シャドウは黙って彼女を見つめていた。
やがて、静かに口を開く。
「ならば、ついてこい」
「……え?」
「お前が望むものを得られるかもしれない」
差し出された言葉。
それは、ルナにとって思いがけない誘いだった。
「私が……ついていっても、いいんですか?」
「ああ」
ルナは、彼の顔を見つめた。
ずっと、もっと近くで知りたいと思っていた人。
その人が、今、自分に道を示してくれている。
胸がいっぱいになる。
けれど、浮かれすぎてはいけない。
ここで頷くのは、ただ彼が好きだからではない。
自分が強くなるため。
自分の力を知るため。
そして、いつか自分自身の足で、彼の隣に立つため。
ルナは、しっかりと頷いた。
「……はい! よろしくお願いします!」
シャドウは短く頷き、踵を返した。
「来い」
ルナは、弾むような足取りで彼の後を追った。
夜の森を抜けていく二人。
その先に待っているのは、シャドウガーデンという新たな居場所。
そして、ルナがまだ知らない数々の出会いだった。
彼女の呪いも。
秘められた力も。
シャドウへの恋心も。
これから始まる物語の中で、少しずつ形を変えていく。
ルナはまだ知らない。
自分がこれから、七陰に並ぶ特別な存在として迎えられることを。
そして、まもなく始まる学園生活で、もうひとりの自分にとって大切な人物と出会うことを。
その少年の名は――シド・カゲノー。
もちろん、ルナはまだ知らない。
彼こそが、自分の心を奪った漆黒の影、その人だということを。
コメント
1件
わあ…第3話もすっごく良かったです〜!!😭💕 シャドウに「ついてこい」って言われるシーン、胸がきゅんとしすぎて叫びそうになりました!!ルナが力強くなりたいってまっすぐ答える姿、本当に素敵で…でも最後の「シド・カゲノー」って伏線にまた震えました…!これからが楽しみすぎます!!🌸✨
#ギルド