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その後雪乃は風紀室へ赴き、瀬戸に依頼の内容を確認していた。
自分の請け負っている依頼ではなく、昨日春翔から聞いたもう片方の依頼について。
「…そうだね。ポケモンを傷付けた犯人を探して欲しいって依頼の依頼主は、2年の穂波さんって人みたい」
パソコンに視線を向けながらそう話す瀬戸に、雪乃は表情を歪めた。
「…その依頼を受けてるのって」
「チーノくんだね」
やはりそうか。
点と点が繋がる。
そして不味いことになった。
その件の容疑者に、もしかしたら立花美希が疑われているかもしれない。
あいつが情報を握れば、確実に立花の元へ調査に入る。
もし立花が容疑者に仕立て上げられてしまったら…。
雪乃は拳を握る。
雪乃に任された任務は、担任兼顧問の教師林田からの依頼。
内容は、『立花美希の護衛』。
同じクラスで同性の雪乃が適任だったらしい。
ただし、立花美希にはその事を伝えないこと。
プライドの高い彼女に任務のことを伝えれば絶対に拒否されるから、それとなく見守ってくれればいい…という内容。
確かに立花には敵が多そうだ。
それは家庭環境や彼女の性格がそうさせるのかもしれないが。
担任も何か思うことがあったのだろう。
鬱先生の時のようにべったり張り付いてなくてもいいし、適度な距離で目を光らせておけばいいか、と思っていたが。
もし自分が護衛している相手を、他の依頼の容疑者にされようものなら。
もし何か間違いが起こって、立花が犯人にされようものなら。
…絶対あのグルグル眼鏡に見下される。
守っていた人物をあいつの手柄にされ、あいつは任務成功…こっちは任務失敗。
ニチャアって顔で馬鹿にされて、あいつは更に調子に乗り出す。
そして更に春翔に近寄り、自分の地位を確保する。
…私の居場所は、無くなる。
最悪だ。
想像して雪乃は吐き気がした。
不味い。このままでは。
奴より先に立花のアリバイを確立させ、真犯人を見つけなければ。
「お疲れー瀬戸くん」
そんな事で頭をいっぱいにさせていた時、風紀室のドアが開いた。
入ってきたのは、頭を悩ませる原因。
「あれ、キミもおったんや」
グルグル眼鏡。
途端に緊張が走る。
「お疲れ様チーノくん」
隣にいた瀬戸が挨拶を返す。
チーノはチラーミィを抱えながら瀬戸に近付く。
「はい、差し入れ」
そして持っていたカフェオレを瀬戸の机に置いた。
「え、いいの?」
「勿論。瀬戸くんちょっと頑張りすぎちゃう?ちゃんと休憩とらんと体壊すよ」
「あはは。そうだね。ありがとう」
チラッと、雪乃を見るチーノ。
「まさかおると思わんかったから一本しか買ってなかったわ。ごめんな」
張り付けた笑顔。
んなもん持ってこられてもいらねーよ、と心の中で吐き捨てる。
「だってキミ、立花美希の護衛中やろ?ええの?こんなとこおって」
ドキッと心臓が跳ねる。
まるで核心に触れられたような。
…こいつはどこまで情報を掴んでいるんだ?
「チーノくんは?依頼の方順調?」
瀬戸が貰ったカフェオレを飲みながら聞く。
「そやね。もう大詰めってとこかな」
…え、やばくね?
「そうなんだ。早いね」
「まぁこれくらい1日で終わらせられたんやけど、今回はちょっと慎重に進めようかなって」
言いながら、雪乃を見た。
「まぁ、いつでも王手はかけられるけど」
ニヤリといやらしく笑う。
雪乃は息を飲んだ。
…こいつ、もしかして全部知ってる…?