テラーノベル
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紡ぐ気持ちは建前ばかり Kgym
「ねぇハヤト。あたしのこと好き?」夢追さんがそんなことを聞いてきたのは確か寒い雪の日でココアを買おうと二人で自販機に寄った時のことだった。その言葉になんの違和感も抱かなかった私は 「ええ。好きですよ。急にどうしたんです?」と聞いた気がする。彼は赤い緋色の瞳を軽く伏せて「そっか」とだけ言ってココアに口をつけた。そして私に向かって「はやと。別れよっか。」そう言ってきた。こちらにしっかり顔を見せて、何かを諦めたような表情で別れを告げた。身体が、心が、全てが冷えていくような気分ででも目だけはどんどん熱くなって震える口で「嫌です。」と言ったがダメだった。夢追さんは消えてしまった。白い雪の世界に溶け込むように。私にはどうすることも出来なかった。その時持っていつココアの温度を私に残して。あなたの少し冷たい手も寒さに弱くてすぐ赤くなる顔も全部どこかへ連れ去ってしまった。
「、、よし終わり。」先程まで開いていたPCを閉じて手元のグラスを見る。そういえばさっきラストスパートと言ってコーヒーを飲み干したのだった。
「新しいの淹れてこよう」まだお湯は残っていたかなと思いながら立ち上がる。リビングに行くと都会にも関わらず蝉がみんみんとうるさいほどに鳴いていた。
「、、、、もう半年か。」あの日彼が居なくなった日のことを思い出す。部屋のエアコンの風が肌に触れる。少し冷たくてまるで彼の体温のようだ。
「、、はぁ流石にそれはやばいか。」彼が居なくなった理由は分からないけどひとつの会社の代表と言うだけあってクヨクヨしている暇なんてなかった。逆になくて良かったのかもしれない。忙しくなきゃこの気持ちを消化できない。未だに彼の配信アーカイブを見てしまうのがその証拠だ。ソファーに座り先程入れたアイスコーヒーを飲みながらスマホを取り出す。特に調べることなんてないけど彼を思い出した今、他のことをやっていないと耐えられないような気がした。そこから数十分ほど頭に入ってこない情報を眺めているとふと、手が止まった。
「夢追さんと星川さんの歌みた、、、、」きっとコラボ配信でお披露目したのだろう。流れるように再生ボタンをクリックした。曲はサーカス衣装を身にまとった2人の明るくどこか暗い歌。
「、、、、上手くなったなぁ。夢追さん」過去にボイストレーニングをさせてもらったこともある身からすれば彼の成長力はすごいものだと実感できた。
「、、、、また歌いたかったんですけどね、」彼はもうここには帰ってこない。雨が降って傘を忘れたとぐっしょり濡れて帰ってくることも花粉なんて焼き払いたいと少々怖い思想をしながら帰ってくることも久しぶりに食べたくなってと甘いものを買って帰ってくることも、もう二度と来ない。その事実に心がどうにかなりそうだった。
「、、買い物でも行きましょうかね」こんなことを考えてしまっては本末転倒だ。着替えてまだまだ暑い外へと足を運んだ
「おーい!しゃちょぉー!」耳馴染みのある声に振り向くと同期の夜見さんがいた。「夜見さん!お久しぶりですね。ショッピングですか?」
「そぉだよぉふゆきもきてるの」どうやら二人で買い物に来たらしい。
「社長も一緒買い物しよお!」せっかく二人で来たのにいいのだろうか、、、、「いいんですか?葉加瀬さんがいいなら行きましょうか。」
「いーよ!」
「葉加瀬さん!びっっくりした、、ならご一緒させていただきますね」同期と出かけるなんて久しぶりだなと思いながら2人の後を着いていく
「夜見さん、葉加瀬さんもしあれでしたら買ったものお持ちしますよ。」「いいの!?ありがとしゃちょぉー!」「じゃあよろしくお願いしまーす!」
「任せてください。次どこに行きますか?」「次は〜、、、、」夜見さんに次の目的地を聞いているとふと遠くから何か揉めてる声がした。痴話喧嘩か何かだと思い何となく声のする方に目を向ける。そこに居たのは夢追さんと体格のいい大柄の男たちだった。その姿を捉えた時には後ろから聞こえる夜見さん達の制止も聞かずに走り出していた。
「離してください。彼に何の用ですか。」相手の腕を掴み彼を庇うようにして問いかける。今彼の顔は見れる気がしなかった。「いやぁ〜その後ろの子が可愛かったからお茶に誘ってただけっすよ笑?何、あんたその子の彼氏かなんかっすか?」その言葉に口もごってしまった。ここで違うと言ったらもうあなたと関われない気がして。「、、、、彼氏ではありませんが、親友です。」
「じゃあどいてよ。何もしかしてこの子のこと好きなの?好きな子守りたいってやつ?」そんなの当たり前だ。別れていようともこの気持ちが冷めているわけじゃない。でも、この気持ちは今出すべきじゃない。
「、、私がこの方のことを好きであろうとなかろうとこんなやつに絡まれているなら助けます。これ以上関わるようならそれ相応の対応をさせていただきます。わかったならこの場を立ち去ってください。」「っ、、!わ、わかったよ、」さすがに怯んだのか男達は虫が悪いように帰っていった。
「、、、、大丈夫でしたか、夢追さん。」
振り向くことも出来ず顔を逸らしたまま聞くと少しの間があって、うん。ありがと。とだけ聞こえた。なんて言っていいのかも分からず沈黙が続いていると向こうから夜見さん達が来た。
「しゃちょぉー!もー急にどっか行ってびっくりしたんですからぁ、、って夢追さん!お久しぶりです!え、しゃちょぉ夢追さん助けてたんですかぁ?」
「夢追さんこんにちはー!買い物ですか?」ふたりが問いかけると先程の元気の無さが嘘かのように明るいいつもの声でふたりと話し始めた。
「2人とも久しぶり!買い物来てたらなんか絡まれちゃってね〜ハヤト来てくれてよかったよー!」私の時はそんな声色で話してくれなかったのに、あなたから居なくなったんだろう。あなただけは離したくなかったのに。そんな思いが顔に出ていたのか、葉加瀬さんがギョッとしてこっちを見た。「ちょっと社長!?顔怖いですよ!」「え、あ、すいません少し暑くて、、、、」「しゃちょぉ大丈夫ですかぁ?カフェかどこかで休みますか?」
いつもなら無理しないよう言葉に甘えるところなのだが今日は早くここから離れたくなくて、でも立ち去ってしまいたかった。「、、いや、大丈夫ですよ。少し飲み物買ってきますね。、、、、じゃあ夢追さん、お気をつけて。」
「、、うん。ありがとね。じゃあ夜見と葉加瀬もまた。」
声色は明るいがやはりどこかテンションが低い。それは夜見さん達にも伝わったようで葉加瀬さんが手を引いて引き止めた。「夢追さんもしこのあと暇だったら一緒に買い物しませんか?社長も荷物持ちすぎて可哀想ですし!」
「それあたしに荷物持ちになれって言ってるよねぇ!?SMCで来たんじゃないの?流石に仲良い後輩達に遠慮なく入るほど夢追アホじゃないからね???同期てぇてぇの間には入れません!!」いつもの早口でまくし立てている様子がなんだか面白くて笑ってしまった。
「ッはは!!そこでそんなに口達者なりますかねぇ」「っえ、あ、いや、夢追のオタク部分が出たというか、」「オタク部分ってなんですか、、笑」「い、いーじゃん別に!夢追にじさんじにどれだけ好きな人いると思ってんの!?」
ー好きな人ーその中にきっと私は入っていないのだろうな。何となくそう感じてしまった。せっかく昔のように話せていたのに。未練がましい自分に少し腹が立つ。「好きな人か、、、いいですね。夢追さんに好かれているなんて。」「え」
、、いけない。声に出してしまった。しかも同期の前で。夢追さん本人の前で。こんなことを言ったら夢追さんは気に病むに決まっているのに。
「あ、いや、すいません。尊敬してる先輩だからいいなって言うか、おかしいですね、今日」「しゃちょぉも好かれてるよー大丈夫だよぉ!」「そうそう!ねぇ夢追さん!」葉加瀬さんが夢追さんに話を振る。「え、あー、うん。好きだよ、ハヤトのことは」
、、、、今この人はなんて言った?私のことが好き?半年前に別れようと言ったのは嘘だったのだろうか。いや、あの時の冷たさは今でも思い出せる。でもじゃあなんで、なんであの時「私から離れたんですか。」気づいたら夢追さんの腕を掴んでいた。
「しゃちょぉ、、?大丈夫ですか?」「社長?顔怖いよ、、?」
2人は状況を飲み込めていない。当たり前だ。夢追さんと付き合っていたことも何も言ってないのだから。でも私の神経は今、全て夢追さんに注がれていた。
「夢追さん、答えてください。なんでですか、、私が何をしたんですか、」夢追さんは絶望したような顔でこちらを見て固まっていた。どうしてあなたがそんな顔するんだ。絶望したいのはこちらの方だ。愛していたのに、あなた以外いなかったのに、理由もなく離れてしまったのは「全部全部、あなたがしたことでしょう、」
「、、、、うん、そうだね。全部あたしのせいだ。ごめんね、もう関わんないから。」違うそういうことじゃない。話して欲しくないとか関わらないでほしいとかそういう事じゃなくて「逃げないで欲しいだけなんです、夢追さん。」
この時彼はどんな顔をしていただろうか、なんと言っていただろうか。蝉の騒がしい鳴き声だけが酷く耳に残っていた。
「ん”、、、、」蒸し暑い気温が酷くまとわりついて、その嫌悪感で目を覚ます。あの日どうやって帰ったかも何も覚えていない。唯一手に残っていたお茶のペットボトルだけがあの時あそこにいた確かな証拠になった。あの日から全く寝られていない。あの冬の日いなくなってしまった彼の顔が夢に出てきて毎回目を覚ましてしまう。私の生活にまで影響を及ぼしているんだ。早く私のところに戻ってきて私のそばで笑っていて欲しい。そんな叶わない願い事をしながら仕事に行く準備をした。
多分続きます。てか続かせます。長いのに読んでいただいてありがとうございます!リクエスト募集中です!お気軽にどうぞーそれでは*˙︶˙*)ノ”
コメント
4件
そういえばなんですけど夜見と葉加瀬は雑魚解釈なのでお許しください🙇♂️
テレテレンテッテレッテテ、テーテーテーテーテ… ゑ?文も書けて絵も描けて天才とか何事???もうこれノーベル賞いるだろ。ガチ目に凄いんだけど。俺も頑張るかぁ、、、 次回楽しみにしてます!
小説下手すぎてマジで読みにくと思うけど多分次からは解消される(はず)なので!!!