テラーノベル
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午前0時
ヴァルキューレの一室に電気が灯っている。その部屋で今だに資料仕事を片付けていたのはカンナだった。
カンナ「…カタカタ」
既に目元には濃ゆいクマが出来ている。既に4徹目であり、正常な判断能力もなかった。そんな中、部屋の呼び鈴が鳴る。
カンナ「ガタッ..誰だこの時間に…..」
寝不足のせいもありイライラしたまま扉へ向かい、扉を開ける。そこにはカンナ自身も信頼を寄せている先生であった。
先生「こんな時間にごめんねカンナ、久しぶり。最近寝れてないって聞いて…ってだ、大丈夫!?」
カンナの顔を見た先生はそう聞く。がカンナも判断力がかなり低下していた。
カンナ「これが大丈夫に見えます..?用があるならまた今度にしてください、私は大丈夫ですので…」
仕事の終わらないイライラからその感情を先生にもぶつけてしまう。堪えようにもそうは出来なかった。
先生「とにかく、何か食べないと倒れちゃうから..ほら。」
先生が再度カンナに体に優しい夜食などを渡そうとする。がそれでもなお寝不足の影響かカンナはイライラが募ってきていた。
カンナ「…大丈夫です..大丈夫ですから…」
先生「…やっぱり変だよ…今日はもうゆっくり休ん…」
カンナは少し限界を超え、先生に声を荒らげてしまった。
カンナ「だから大丈夫と言っているでしょう..!!あなたにそう見えても私はまだ大丈夫なんです、あまり甘やかそうとしないで下さい!!」
先生がカンナの気持ちを考えたつもりで優しく囁く。がカンナには逆効果だった。
先生「ほ、らね…?やっぱりカンナ、寝不足なんだよ..心配なんだよ私も…やっぱり何か食べ…」
何度も催促する先生にカンナも何かが切れ、先生の胸元を掴む。
カンナ「ブチッ」
先生「うわっ..!?か、カンナ?大丈…」
カンナ「そこまで仰るなら、まずはあなたから食べてあげましょうか?」
仕事の時の冷たい目で先生を睨みそう告げる。それでも先生は引かない。
先生「カンナ..っ…一旦離して、ね…?私も引かない、カンナが休むまでは..」
突如カンナが先生の上に覆い被さる。
カンナ「私も重々承知はしています、貴方は生徒の為なら自身の危険を顧みずとも助けになろうとする…..ですが今の私にはその優しさが余計なお世話にしか思えないんです。ハッキリ言ってしまえば..邪魔なんですよ…私に干渉しないでください..!!」
理性を失いかけるカンナが先生の首元を締める。カンナにとって本気でなくても先生にとっては常人の力と一緒だった。
先生「ヒュッ..キュ…ぁ…」
それでも先生は抵抗をしない。愛する生徒をこの手で傷付けたくない、出来ないからだ。すると突然カンナの体の力が抜けた。
先生「ゲホッコホッぅヴっ…カンナ..?」
どうやら糸が切れたかのように眠っているようだった。
先生「カンナ…ゆっくり休んでってあれほど…」
カンナを部屋のベッドまで運び寝かせる。
先生「これでよし、と…..ん…私も眠..シャーレ行かないと…っ..」
先程自身もシャーレで働いており、疲れたままヴァルキューレに来ていたため、先生自身も眠気は限界だったのだ。
先生「…カンナ..に悪いけど…このままだと寝ちゃ…」
先生も床に倒れるように眠る。部屋の電気は付いたまま、先程カンナの入れて飲む筈だったコーヒーの香ばしい香りが部屋に広がる。そんな部屋で2人は、眠りにつくのだった。
6時間後
時計は午前六時を指している。カーテンの外も少しずつ明るくなり、外で鳥のさえずりが聞こえてくる。
先生「ん..っ…あ、そうだ私は…昨日…はぁ、カンナに悪い事しちゃったかなぁ…あ、そうだ..」
先生が部屋の隅にあるあまり使っていないであろうキッチンへ向かう。
先生「勝手に使うのもあれだけど..朝ごはんだけでも作ってあげよう。..と言ってもカンナの好物分からないんだよね..とりあえずベーコンエッグとか..?」
そこから数分。部屋に香ばしい香りが広がる。その嗅ぎ慣れない香りにカンナも目を覚ます。
カンナ「んっ..なんだこの匂いは..?」
先生「あ、おはようカンナ。ちょっと勝手で申し訳ないけど、朝ごはん作ってるよ。まだ寝てていいよ。」
先生を見て昨日の記憶が蘇る。
カンナ「ッッ..!!せ、先生..っ…..私は公安失格です、先生…私に同じ罰を…ッ..!!」
直後笑顔で先生が返す。
先生「あははっ、気にしなくてもいいよ!まぁ確かに苦しかった..けど、カンナの気持ちを考えないでしつこかった私が悪いんだ、だから気にしないでくれるかな..?」
先生がカンナを優しく抱きしめる。ふんわりと広がる先生の男性らしく、かつ明らかな優しさの塊の様な香り。その先生にカンナは心臓が持たなそうになりながらも、申し訳なさそうに食卓に着く。
カンナ「..いただきます…」
カンナはトーストとベーコンエッグに手を伸ばす。前日、仕事のせいでコーヒー以外何も摂取していなかった為、また先生の手作りである事実に食べ切るのに十分も掛からなかった。
カンナ「ご馳走様..でした。」
少し俯きながらそう言う。生徒の良い食べっぷりを見た先生もこう漏らす。
先生「ふふ、気に入ってくれて良かった。」
カンナ「あの..先生やはり昨日の事は…」
先生「あんな事忘れていいんだよ。あ、でも..」
先生の言葉が止まる。
先生「いやぁその〜…昨日言ってた…」
少し照れて顔をかく先生にカンナは不思議に問う。
カンナ「私が..?それは..」
先生「まずはあなたから食べましょうか、みたいな…い、いや全然嫌じゃないんだけどね?」
カンナの顔が真っ赤になる。
カンナ「なっ..なっ!!?そ、それは…違..いや、そうですね…私がこうする間にも他の生徒が貴方を狙う事でしょう。」
先生「そのね…私も生徒を未来に繋ぐ教師であると同時に1人の男性でもあるんだ。…でも、私はどちらの立場としてもカンナを後悔させたくない。だから..」
耳を立てカンナが食い気味に返す。
カンナ「…つまり、私に食われる事自体はいいと?」
先生は少し迷いこう返す。
先生「..まぁそうなんだけど、さ。でもやっぱり教師が生徒にこんな…」
今度は言い切るのを待たず朝日が昇る中、逆にカンナは先生を抱え床に下ろし逃げ道を塞ぐ。
カンナ「…そうですね、私も警察ですが、それと同時に一人の女子高生。この意味が分かりますか?警察は、周りに危害を与える者を即刻拘束する…そして先生は、男性としてキヴォトス中の生徒を気付かぬ内にたらしている。私は警察として、貴方を逮捕するべきです。もちろん…釈放などさせませんが。」
先生「カンナ!?…私は逃げないよ、罪を犯したなら反省すると同時に..償うべきだからね?」
一枚上手だったのはカンナのようだった。
カンナ「なら先生…私を、一人の女性として、警察として、着いてきてくれませんか?」
告白に先生は返す。
先生「お巡りさんには敵わないね…宜しくお願いします。」
その後二人は始業時間に遅れるまで強く、強く抱き締めあった。その場で生徒と教師の関係などとっくに壊れていた。そしてその時間は、時計を刻んで一つ、また一つ、と進んでいくだろう。
コメント
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あーヤッベ、ヤッベーぞ?これ 最後の所を変な妄想をしてしまった… なんだこれは!羨まけしからんです! ちょっとえちぃですねぇ 素晴らしい、素晴らしですよ! 櫻さんの作品は背景まで想像できる具体的な表現があって妄想が捗ってしまう…