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待ちに待った十八日の土曜日。早く起きようと六時にセットしていたアラームよりも少し早く目覚めアラームが鳴る前に止めた。
俺の横でまだぐっすりと眠っている美桜を起こさないように静かにベッドから降りると、「んぅ〜」と唸りながら寝返りをする美桜にビクッと心臓が飛び跳ねる。
リビングのシャッターを開けるとジメジメしていた梅雨も今日ばかりは俺を応援してくれているかのようにカラッと晴れた晴天。寝起きの身体にはくらりと眩しいくらいだ。両手を上にあげ、背筋をグッと伸ばす。おかげで気合も入り、早速梅雨の間溜まってしまった洗濯物を洗濯機に入れてスイッチを押し、パジャマ(ってもTシャツ、ハーツパンツなんだけどな)の上からエプロンをつけちょっと手の込んだ朝ご飯を用意する。
今日の朝は和食にすると決めていたので、昨日の夜のうちに筑前煮を煮込んでおいた。もちろん見栄えも気にして人参は花形に飾り切りし、絹さやも茹ですぎず鮮やかな緑色をキープしている。鮭の塩焼きは美桜の好きな朝ごはんメニューの一つなので鮭を焼き、卵を三個も使ったふっくらとしただし巻き卵を焼く。味噌汁は玉ねぎとワカメの味噌汁を用意し、デザートにはゴールデンキウイを可愛くて花形に飾り切りをした。ご飯はあと十分もしたら炊き上がるので美桜が起きた時にはちょうど炊き立てのご飯を出せるだろう。
ピーピーっと炊飯器が鳴り、朝ごはんの用意が終わったところでタイミングよく洗濯機が鳴る。南向きの日当たり良いベランダにズラッと洗濯物を干す。やっぱりいい天気の時に洗濯物を干すと気持ちがいい。
(美桜を起こしたら布団のシーツも洗おう)
七時を過ぎたので美桜を起こしに寝室のドアを開ける。暑かったのかタオルケットを蹴飛ばしペロンとワンピースタイプのパジャマが捲れ上がり美桜のぷるんと柔らかいお尻が丸見えだ。
(な、これは朝からムラッとするな……)
いや、でも今日はまだがっついちゃいけない。捲れ上がった裾をそっと戻し、肩を優しく叩く。
「美桜、朝だけど起きれるか?」
「んぅ〜、起きれる〜、隆ちゃん起こしてくれてありがと。おはよう」
おはよう、と言いながらもまだ目を瞑ったまま動かない。これは放っておいたら多分二度寝案件だ。
「美桜、今日は朝一で区役所に行くんだろう?」
「はっ! そうだった! すぐに起きるっ!」
忘れていたのか、ハッと思い出したかのように目を見開き、美桜はぐたぁっとしていた身体を瞬時に起こしベッドから降りた。おぉ〜、と拍手したいくらい俊敏な動きだった。
「朝ご飯できてるから食べよう」
「えぇ!? また隆ちゃん作ってくれたの!? ごめんね私が当番なのに」
「いいんだよ、昨日から今日の朝ご飯は俺が作るって勝手に決めてたから、冷めないうちに食べよう」
二人ともパジャマのまま椅子に座り両手をきちんとそろえて「いただきます」をした。
「にしても、今日は凄い可愛くて豪華な朝ご飯だね。食べるのが勿体ないくらい! 婚姻届出しに行く前祝い的な感じかな?」
「まぁね、今日は結婚記念日になるんだし、朝からお祝いしたかったんだよ。まぁ俺が勝手にやってる事だからさ」
「隆ちゃん」
「どうした?」
「ふふ、大好き」
嬉しすぎて心臓がギュッと握りしめられたようにキュンを通り越してギュンっとした。恥ずかしがりながらも大好きと素直に言葉にして伝えてくれる美桜に可愛い、愛しいしかない。
(あー、俺の奥さん世界一可愛いわ……)
「俺も大好きだよ」
嬉しそうに頬を赤らめもぐもぐと筑前煮の竹輪を頬張り「美味しいっ」と俺に笑顔を向ける。小柄なのに美桜はよく食べる。また食べ方が小動物で言うならリスみたいにもぐもぐ食べるから見ているだけで可愛くて癒やされるのだ。
「朝ご飯食べたら区役所に婚姻届出しに行こう」
「だね! あ〜なんだか緊張してきたよ〜」
緊張してきたと言いつつもご飯を口は運ぶ箸は止めない姿にクスッと笑ってしまう。
美桜が好きなよく分からないイケメンキャラクターが描かれているクリアファイルに綺麗に入れた婚姻届を持ち車で区役所に向かう。
(このクリアファイルを渡された時ものすごい勢いで眼福がうんたらかんたらって言ってたな……)