テラーノベル
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やっぱり仲良しなんかい!
楽屋の空気は、完全に冷え切っていた。
いつもなら、くだらないことでゲラゲラと笑い合っているはずの最年長とリーダーが、部屋の両端で互いに明後日の方向を向いて黙り込んでいる。そのただならぬ殺気に、後から入ってきたメンバーたちは入室した瞬間にフリーズした。
「……ねぇ、なんか楽屋の温度マイナス50度くらいになってない?」
ラウールが阿部亮平の陰に隠れながら小声で呟く。
「シーッ、ラウール静かに。…照、目がマジだから」
阿部が冷や汗をかきながら、ノートパソコンの陰から岩本照を盗み見た。
岩本は腕組みをして、鬼のような形相でスマホを睨みつけている。周囲にドス黒いオーラが漂っている。
一方の深澤辰哉は、メイク椅子の隅っこで小さくなりながら、気まずそうにゲーム画面を連打していた。
この大喧嘩の理由を知っているのは、唯一、事件の引き金を引いてしまった佐久間大介だけだった。
「あのさ……みんな、落ち着いて聞いて」
佐久間がメンバーを招集し、ひそひそ声で事情聴取を開始する。
「何があったん、佐久間くん。めめも怖がってプロテイン飲む手止まっとるで」
向井康二が聞くと、佐久間はごくりと唾を飲み込んだ。
「実はさ……さっき、ふっかが『喉渇いた〜』って言って、机の上に置いてあったタピオカミルクティーを飲んだの」
「うん」
「それが、照が楽しみに取っておいた、『今しか飲めない期間限定・黒糖ほうじ茶タピオカ(タピオカ増量)』だったんだよ……」
「「「あちゃーーーー……」」」
メンバー全員が額を押さえた。それは完全に深澤の地雷踏み抜き案件である。岩本のタピオカへの執着とこだわりは、グループの誰もが侵してはならない聖域なのだ。
「しかもさ!」と佐久間が続ける。
「ふっか、一口だけじゃなくてさ。ゲームに熱中しすぎて、無意識に全部飲み干しちゃったんだよね」
「終わったな」
目黒蓮が静かに呟いた。渡辺翔太も「ふっか、命知らずすぎるだろ」と引いている。
「……おい、深澤」
ついに、部屋の奥からドスの効いた低い声が響いた。岩本がゆっくりと立ち上がる。その体躯から放たれる威圧感は、格闘技の計量前日のプロ選手のそれだ。
「な、なんだよ、照……」
ゲームの手を止め、引きつった笑いを浮かべる深澤。
「お前、俺のタピオカ食っただろ」
「いやっ、あの、悪気はなかったんだって! 机の上にポツンと置いてあったから、てっきりスタッフさんが用意してくれた差し入れかと……」
「差し入れのわけねぇだろ。俺の名前書いてあったわ」
「書いてなかったよ!?」
「カップの裏のシールに『イワモト様』って書いてあんだろ!!」
「裏なんて見るわけないじゃん!!」と深澤が反論した瞬間、岩本の眉間のシワがさらに深くなった。
「俺がどんだけ楽しみにしてたか分かってんの? 今日、朝ジム行って、糖分摂取するの我慢して、これをご褒美にダンスの振り付け頑張ろうと思ってたんだよ。増量したタピオカのモチモチを楽しみにしてたんだよ!!」
「わ、分かった! 謝るから! 新しいの買ってくればいいでしょ!?」
「もう限定期間終わってんだよ!!!」
「そこ!?」
メンバー全員が心の中で突っ込んだ。
喧嘩のスケールは壮大な割に、内容が驚くほど幼児退行している。
見かねた宮舘涼太が、すっと2人の間に割って入った。その手には、なぜか奇跡的に宮舘が自分のためにキープしていた、別の店のタピオカドリンクが握られている。
「照。これで手を打たないか。味は黒糖ミルクだが、タピオカは入っている」
「……舘さん。ありがたいけど、俺はほうじ茶が良かったんだ」
「わがまま言うな!!」
深澤がすかさずツッコむと、「お前が言うな!!」と岩本が怒鳴り返す。
もうラチがあかない。そう判断した最年少ラウールが、スマホを片手に叫んだ。
「はいそこまでー! 照にぃ、ふっかさん! 今ウーバーイーツで、別の店の『ほうじ茶タピオカ・タピオカトリプル増量』注文したから! あと15分で届くから!!」
その言葉に、岩本がピクリと反応した。「トリプル増量……?」
「そう! 3倍! だからふっかさん、ちゃんとお金払ってね!」
「払う払う! 喜んで払わせていただきます!」
深澤が必死に財布を取り出すのを見て、岩本はふんっと鼻を鳴らし、再びパイプ椅子にドカッと腰掛けた。どうやらこれで手打ちにするらしい。
15分後。
届いたトリプル増量のタピオカを、岩本は嬉しそうにモチモチと吸っていた。その顔は、先ほどの鬼のような表情から一転して、完全に甘党の顔に戻っている。
それを見つめながら、深澤が「まったく、人騒がせなリーダーだよ」と苦笑いしていると、岩本が自分のタピオカをすっと深澤の前に差し出した。
「……何?」
「一口やるよ。味見」
「え、いいの?」
深澤がストローを咥えて一口飲むと、岩本は「美味いだろ」と少し得意げに笑った。
さっきまでの大喧嘩が嘘のように、いつもの距離感に戻っている2人を見て、メンバーたちは深くため息をついた。
「なんなんだよアイツら……」
渡辺が呆れ顔で呟くと、阿部が優しく笑った。
「まぁ、これがいつもの『いわふか』ってことでしょ」
楽屋には再び、いつもの賑やかで温かい空気が戻っていた。
コメント
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読み終わりました〜!😌💕 黒糖ほうじ茶タピオカ1本でここまでの修羅場になるの、めっちゃSnow Manの仲良しさが滲み出てるなって思いました! 「トリプル増量」でピタッと喧嘩終わっちゃう照と、最後に差し出した一口タピオカで仲直りするふっか…💞 いわふか、最高に可愛いです🥀🤍 連載楽しみにしてますね!