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五人は、学校の図書室にいた。 机の上には、これまで見つけた写真が並んでいる。 五人で笑っている写真。 遊園地の写真。 そして 何度も繰り返し現れる、同じ言葉。
――『次に会えたら、今度こそ最後まで。』
「最初の人生って……」
柔太朗が写真を眺めながら言う。
「いつなんだろう」
「分からんな」
舜太が腕を組む。
「俺らが初めて会った人生なんて、どうやって探すんや」
「記録が残ってるとは限らないしね」
太智がため息をつく。 そのとき。
「……これ」
仁人が、一枚の写真を取り出した。
「この写真だけ、違う」
「何が?」
勇斗が覗き込む。 今までの写真には 必ず五人が写っていた。 けれど この写真には―― 四人しかいなかった。
「……仁人がいない?」
勇斗が呟く。
「違う」
仁人は首を振る。
「俺じゃない」
写真に写っている四人は 勇斗、 舜太、 柔太朗、 太智。 今の四人と、顔立ちがよく似ている。 でも。
「この四人……」
太智が写真を見つめる。
「俺らやんな」
「うん」
仁人は答えた。
「でも……」
写真の端、 小さな子どもが一人立っている。 顔は見えない。 その子だけが 四人から少し離れていた。
「この子が……仁人?」
柔太朗が聞く。
「たぶん」
仁人は写真を見つめる。 すると 頭の奥に 初めて見る記憶が浮かんだ。
*
――昔、 まだ五人が出会う前。 一人の少年が いつも一人でいた。 友達を作るのが苦手だった。 誰かと話すことも 誰かを信じることも 怖かった。
そんなある日。
「一緒に遊ぼう」
声をかけてきたのが。 四人だった。
『名前は?』
『……仁人』
『俺、勇斗!』
『俺は舜太や』
『柔太朗』
『太智!』
五人は その日初めて出会った。 そして それから毎日 一緒に遊んだ。 笑った。 喧嘩もした。 仲直りもした。 いつの間にか 五人でいることが 当たり前になっていた。
*
「……思い出した」
仁人が呟く。
「最初は、俺が一人だった」
「え?」
四人が見る。
「俺が……みんなに声をかけてもらった」
仁人は笑う。
「最初に俺を仲間にしてくれたのは、みんなだった」
その瞬間 四人の記憶も 少しずつ蘇る。 勇斗が笑う。
「……そうだ」
「俺も思い出した」
舜太が続く。
「俺らが最初に出会った場所……」
「学校じゃない」
柔太朗が言う。
「公園だ」
「うん」
太智が頷く。
「小さな公園」
五人は顔を見合わせた。 そして その場所へ向かった。
*
公園はなんと 今も残っていた。 小さな滑り台。 古いベンチ。 大きな木。 仁人はその木の前で立ち止まった。
「……ここ」
手を触れる、 すると。 記憶が一気に溢れ出した。 五人が初めて出会った日。 勇斗が笑って。 舜太がふざけて。 柔太朗が優しく話しかけて。 太智が一緒に走って。 そして 仁人が。 初めて「友達」というものを知った。 五人は木の下に座った。 昔のように 肩を並べて。 そして 仁人が笑った。
「……ここが、始まりだったんだ」
「うん」
勇斗が頷く。
「俺たちの全部の始まり」
そのとき 仁人は 木の根元に何かがあることに気づいた。
「……これ」
土の中から 古い小さな箱が出てきた。 五人で開ける。 中には 一枚の紙。 そこには 幼い文字で書かれていた。
――『五人で、ずっと一緒にいよう。』
五人は顔を見合わせる。 そして 紙の下に もう一つの文章があった。
――『もし離れても、また会おう。』
仁人の胸が苦しくなる。
「……これが」
呟く。
「輪廻の始まり……?」
勇斗が首を振る。
「違う」
「え?」
「これは願いじゃない」
勇斗は紙を見つめる。
「ただの約束だ」
仁人はその言葉を聞いて 少しだけ笑った。 けれど 紙の裏側には まだ続きがあった。
――『ただし、五人のうち一人でも忘れたら――』
そこで 文章は途切れていた。
「……続きは?」
太智が紙を裏返すが 何もない。 ただ五 人の手元に 古い写真が一枚落ちてきた。 そこには 初めて出会った日の五人。 そして。 写真の端に 今まで見たことのない言葉があった。
――『忘れた人が、最後に願う。』
五人は 言葉を失った。 仁人だけが その意味を なんとなく理解していた。 これは、 自分のことだ。
コメント
1件
うわっ、めっちゃエモい回だった……! 仁人が最初に声かけられた側だったっていうのがもうグッときたし、「忘れた人が最後に願う」って最後の一文、めっちゃ気になる。これ、仁人の過去とか輪廻の秘密に直結してきそうで続きが待ちきれないわ。五人それぞれの記憶が少しずつ戻ってくるところ、すごく丁寧に描かれてて好き。笑う門には福来るさんの細かい心情描写、今回も刺さった〜。また読みにきます!