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恵子が自治会の親睦で、一泊二日の温泉旅行に出かけた。
「お土産 買ってくるわ」
嬉しそうに出掛ける恵子を、沙耶と友也は明るく見送った。
その夜、沙耶が仕事から帰ると家が汚れていた。
リビングは菓子袋やペットボトルが散乱している。
キッチンはカップ麺の食べ残しが放置され、洗濯物はカゴから溢れている。
恵子が旅立って10時間も経ってない。もうこの有様だ。
「私、本当に疲れたわ」恵子の言葉を思い出す。
美奈が2階から降りてきた。
「遅かったじゃない。サッサと片付けて。
もうすぐ翔太が塾から帰るから、それまでに夕食準備してよ」
友也からは、夕食はいらないと連絡があった。
沙耶も駅前でラーメンを食べた。
「私は外で食べました。友也も外食です」
「え? じゃあ、私と翔太はどうするのよ」
「そんなこと自分で考えたらいいでしょ」
「ちょっとぉ。私は離婚鬱なのよぉ」
沙耶は信じられない。ハッキリさせるときだ。
「本当に鬱なんですか?」
「え? そうよ」
「病院に行きましたか? 診断書は?」
「大袈裟ね、なんとなく判るわ、鬱なんて」
沙耶が大声を上げた。
「バカにするな!!」
美奈は、圧倒されて後退る。
「人の命に係わる、重大な病気(こと)よ!」
沙耶は、鬱が発症した人を二人知っている。
高校時代の親友と、社会人の同僚だ。
どちらも苦しんで苦しんで、見ているのが辛かった。
「怠けてサボりたいからって、テキトーなこと言わないで!」
「ホントだもの。でも、沙耶さんって恐い人なのねぇ。
友也もお母さんも可哀想」
友也とお義母さんが可哀想なのは、アンタみたいな身内がいることよ!
と言いたいのをグッと我慢していると、美奈のスマホが鳴った。
美奈は急いでスマホを見た。
(あ、そういえば……)
今まで、なんで気付かなかったんだろう?
美奈はスマホを持っている。
スマホ代はどうしてる? お金は無いって言ったのに。
引き落し口座があるんじゃない?
美奈は10年以上も主婦だった。ヘソクリくらいあるはず。
夫は お金持ちだったし……。
沙耶は、スマホをいじる美奈を見た。
この女、お金持ってる。
なのに……、
生活費も入れずにここに住んで、母親から小遣い貰ってる。
とんでもない クズ女だ!!
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