テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
体調不良ネタ、嘔吐注意。 両片思い。ご都合主義。
樹→(←)間宮(気づいてない)
朝起きるとひどい頭痛がした。ドラマの撮影がクライマックスに近かったから十分に気をつけていたつもりだったのに。とりあえず薬を飲もうと思い、立ち上がる。少しめまいもしてきたが、何とかキッチンに向かった。
空きっ腹に薬をいれるのは良くないと聞いたことがある。少しでもいいから食べようと思い適当なものを口に入れたが、途端吐き気がしそれ以上は食べられなかった。その後薬を飲んで、急いで身支度をした。
ドラマの現場は自宅の近くだったため、最近は歩きで行っていた。今日車に乗ろうものなら吐いてしまいそうだったから助かった。
現場について楽屋に向かった。時間には余裕を持っているから楽屋には誰もいないはずだ。着いたら少し休んで、この不調を誰にもバレないようにしなければいけない。幸い喉の痛みはないからどうにかなるだろうと思った。
ドアノブに手をかけ、回す。
「おはようございます」
「あ、おはよう」
「なんかいつもより早くない?」
「そうですか?いつもと変わらないと思いますけど」
おかしい、そう思って時計に目をやる。いつもより十分ほど遅い時間を指していて驚いた。無意識にゆっくりと歩いてしまっていたのだろう。バレないようにしていたつもりだったが、思わぬところでボロが出るなと思った。
その後は十分に気をつけつつ、樹と適当にしゃべった。おそらくだが不調には気づかれていないだろう。
「そろそろ撮影始めます!」
スタッフの方の声が聞こえて、2人で撮影部屋に向かった。
昼に近づくにつれ、どんどんと頭痛がひどくなってきた。薬が切れたのだろうか。さすがにまずいかもしれない。しかしあと少しで休憩時間になるはずだ。少し耐えさえすればどうにかなる。
「あー、間宮さん、少し椅子の位置を変えたいので立っていただいていいですか?」
「わかりました」
急いで立ち上がろうとした。しかしうまく立ち上がれず、めまいに襲われる。身体がグラッと前方に傾き、地面がだんだん近づいてくる。
「間宮くん!!」
あ、やばい。そう思ったけれど結局俺は倒れず、樹の手に支えられていた。安堵と頭痛によって俺は樹の手のなかで意識を手放した。
「失礼します」
「……あぁ、間宮くんのマネージャーさん」
「楽屋は今日の撮影が終わるまでは使っていていいそうです。田中さんと間宮さんの撮影は後日にしていただいたので、ゆっくり休んでください」
「ありがとうございます」
「では失礼します」
――樹とマネージャーの声が聞こえる。
目を覚ますとそこは楽屋で、小さなソファに樹の上着とともに寝かされていた。と、同時に先程のことを思い出して、やってしまった、そう思った。重い体を引きずってまで現場に来たのに、結局倒れてしまって迷惑をかけている。考え出すと申し訳なくて、マネージャーにも樹にも声をかけずひとりぼんやりしていた。その間にも頭はずきずきと痛んでいた。
樹が近づいてくる。少し顔をそらしてしまった。
「間宮くん。起きたんですか」
「うん、ごめんな」
心配してくれているのか少しいつもより柔らかい顔の樹にさらに罪悪感が募ってくる。
「体調どうですか?マネージャーさんに楽屋は使っていいって言われたので休んでて大丈夫ですよ」
「少し頭痛がするくらいだから」
正直に言うと頭痛も吐き気もしていたから話しているのも辛かった。でもこれ以上迷惑をかけられない。樹はそんな俺の気持ちを見透かしたようにこちらを見つめてくる。さらにゆっくりとこちらに近づいて額に手を当ててきた。
「熱ありますよね。ほんとに頭痛だけなんですか?まあとりあえず休んでてください」
樹はそう言って部屋を出ていってしまった。怒らせてしまっただろうか。体調管理もできず、あげく倒れるなんて情けなすぎる。これ以上考えても暗い考えしか出ないだろうからおとなしく寝ることにした。
また小さな物音で目を覚ました。音のするほうに目をやると樹がいた。こちらを起こさないようにそっと行動していたんだろうか。小さなビニール袋を持っている。
「あ、間宮くん。起こしちゃいましたね」
「動けますか?そろそろ家に帰ったほうがいいんじゃないかなと思って」
「あぁ、たぶん動ける」
樹の言葉に急いで立ち上がろうとする。すると勢い余ってまた倒れそうになった。
「間宮くん!無理しないでください」
「ごめん」
また樹に助けられた。樹は腕をつかんで、体重を預けるよう促してくる。
樹に連れられ楽屋を出る。荷物はまとめてくれたらしい。
「行きますよ」
「ど、どこに?俺歩きできちゃったんだけど」
「もちろん間宮くんの家ですよ。歩きならちょうどいいですね。俺の車乗ってってください」
「え、樹はそんなことしなくていい。俺が悪いから」
ここまで迷惑をかけるわけには行かない。別にそんなに距離があるわけじゃないし、タクシーを呼ぶなりすれば一人でも帰れる。
「悪いってなんなんですか?別に悪いことしてないでしょ」
「とりあえず車乗ってください」
気づくと樹の車の前についていて、拒否する間もなく車に乗せられる。
「気持ち悪くなったりしたら言ってください」
「う、うん」
樹は存外丁寧な運転をしてくれる。SixTONESの動画の運転も丁寧だなとは思っていたが、それ以上にこちらを気遣った運転だなという感じがする。心地よい運転と体調が悪いのもあって気付かないうちにまた寝てしまった。
「間宮くん、着きましたよ」
「うぅ、ん、ありがとう」
樹は先程のことを気にしてるのか、先に車を降りて助手席のドア側で待っている。腕を借りつつ玄関に向かう。鞄から鍵を取り出して家に上がった。
「間宮くんは寝ててください」
有無を言わさない樹にベットに寝かせられる。先程からずっと寝ていたせいで、目を閉じても寝られない。部屋の外からは樹が何かしているのかカチャカチャという食器の音とか棚を開けるような音が聞こえてくる。すると、こちらに近付いてくるような足音がしてきた。
「間宮くん、おかゆ食べれます?」
「少しならいけると思う」
「じゃあ薬も置いとくので、食べといてください」
「あと今日俺泊まっていくんで」
「は、え?なんで」
「心配だからですよ」
「いいって」
「いろいろありがとな、もう帰って大丈夫だから」
樹は納得していなそうだったけれど、いったん引き下がっていった。
そういえば楽屋で持っていたビニール袋はこれを買ってくれたからだったんだろうか。ずいぶんと俺を気にかけてくれるんだなと思った。
結局おかゆをすべて食べることはできず、少し食べて薬を飲んだ。副作用で眠くなってきて、また眠った。
目がさめた。寝て1時間ほどたったようだった。もう樹は帰っただろうか。自分で帰れと言ったのにどこか寂しかった。
机の脇のテーブルに置いてある食器に目をやる。もうこれ以上は食べられないし、どうしようか迷ったが、キッチンに片付けることにした。とりあえず立ち上がる。するとまたうまく立ち上がれず、床に蹲った。何度同じことをするんだろう。目眩と吐き気が止まらない。吐きたいけれど、ここでは吐きたくない。トイレに移動したかったが動くことすらままならなかった。
バタバタと焦ったような足音が聞こえてくる。まだ樹がいたのだろうか。蹲る時にベットサイドの机に当たって少し大きな音を立ててしまったから、それに気づいたのかもしれない。
「間宮くん、大丈夫ですか?!」
返事をしたいけれど、吐いてしまいそうでできない。樹に迷惑を掛けている情けなさも相まって少し涙が出てくる。
樹はそんな俺の様子を見て察したのかトイレへと連れて行ってくれた。
「吐いて大丈夫ですよ」
そうは言ってくれるけど、樹の前では吐きたくない。首を横にふるふると振ったが、樹は何を勘違いしたのか俺の顎に手をやって口に手を入れてくる。
「間宮くん、ごめんなさい」
「う、ぅ゙ぇ、げぇぇ、ぅ゛」
「ふ、ぅ゙く、え゛ぇぐ、お゛ぇ」
えずきが収まらない。けれど途中からもう出すものもなくなって、胃液が滴るだけだった。
「ぅ゙ぇ、ふっ、ん゛」
「も゙、むり」
そう言うと樹は手を抜いた。手を洗って、俺をキッチンに連れていったあと口をゆすがせてくれた。そしてまた寝室に行く。その間も樹に吐いているところを見られたという惨めな気持ちに苛まれる。
おとなしくベットに寝かされたあと、樹は俺の目を見つめてくる。
「もう俺は今日帰りません」
「でも——」
「これ以上心配させないでください」
「ちゃんと寝てくださいね」
毛布をかけられ、椅子に座る樹の気配を感じながら、今度こそ深く眠りについた。