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皆、目の前で死んでいく。
三郎も、雷蔵も、兵助も、勘右衛門も。
俺は目の前で死んでいくアイツらを、助けられなかった。
なぁ、俺が今みたいに強かったら、お前らは今も生きてたんじゃないだろうか。
会いたい。
お前たちに。
ー勘右衛門ー
学園に曲者が侵入した。
そう情報が入ったのはつい先程。
俺達5年生は学園を走りまわっていた。
「こういうとき八左ヱ門がいたらな~。」
ふと三郎がそう言うと皆もうなずく。
「はっちゃんの気配の察知は6年生顔負けなのだ!」
「今日の朝、任務ででかけていったもんね。しかも二週間帰ってこないらしいし。」
兵助と雷蔵が残念そうにしながら気配を探る。
「っ!いた‥‥。」
俺達の目線の先に曲者がいた。
曲者の手には苦無が握られていた。
「‥‥どうやら戦いをお望みのようだ。」
三郎はニヤッと笑うと懐から苦無を取り出した。
「勘右衛門。同時に行くぞ。」
「おう!」
三郎の合図と共に地面を強く蹴る。
曲者も俺達に向かって走ってきた。
三郎が曲者の右腹を、俺が左首を、苦無で狙う。
この一撃は避けられない。
そう思った。
兵助が曲者の背後に入っていったし、雷蔵も正面から仕掛けていたから。
でも結果、俺達は傷一つ曲者につけることができなかった。
奴は身体に苦無があたる瞬間、上に飛んだのだ。
そして落下している最中に雷蔵の顎に蹴りを入れ、その勢いで回転し後ろにいる兵助の首に身体をひねりながら蹴りを入れた。
二人共そのままダウン。
曲者は地面に足がつくと同時に三郎に飛びかかり、腹に蹴りを入れた。
「ヴッ」
三郎が倒れたのを見ると、奴はそのまま俺の方をふりかえった。
目があった瞬間、俺は背筋がこおった。
恐ろしかった。
殺気を閉じ込めたような、絶望に満ちたような真っ黒な瞳が。
曲者はどんどん俺に近づいてくる。
身体は動かない。
眼の前の男に恐怖してしまった。
「勘右衛門!」
「勘ちゃん逃げて!」
三郎や兵助が蹴られたところをおさえながらこちらを見ていた。
曲者の手が、首を触った。
あぁ、終わった。
そう思ったとき、
「やめい!」
学園長の声が響いた。
何事かと思い声のした方を見ると、学園長と先生方、他の学年がいつの間にか俺たちをかこうようにして立っていた。
「どういうことだ?」
三郎達が俺の横に並んで立つ。
「これはお主たちへの挑戦状じゃ。」
『は?』
見事に4人の声が揃った。
「そこにおる曲者からのな。」
学園長がそう言うと、曲者は苦無を片付け口布を取った。俺たちに背を向けるようなかたちのため顔は見えない。でも、周りの生徒がその顔を見て驚いていた。6年生も。
「満足じゃろ?」
「学園長。なぜ止めたのですか!まだ勘右衛門と決着がついていません!」
曲者から出された声に、俺たちは耳を疑った。
俺たちの知っている声よりも何トーンか低いけど、聞き間違えるはずがなかった。
「八左ヱ門?」
ふりかえったその姿は、少し大人びた八左ヱ門だった。