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ー雷蔵ー
「八左ヱ門?」
信じられないとでも言うような勘右衛門の声にふりかえったのは、間違いなく八左ヱ門だった。
ただ少し違うのが声が低くて、身体の左側の殆どが包帯で隠れているくらいだ。
「よう。久しぶりだなぁ。」
そう言ってニカッと笑う彼は何故か少しさみしげに見えた。
「驚いたかの?」
学園長が八左ヱ門の隣へと並んだ。
「此奴は5年後の未来から来た、竹谷八左ヱ門じゃ!」
「え?」
『えぇぇ~!』
「どうも。竹谷八左ヱ門です。」
「突然なのじゃが、無事未来に帰れる方法が見つかるまで、八左ヱ門には学園に滞在してもらうこととなった。」
「本当に突然ですね‥‥。」
「滞在中は授業の手伝いなどをしてもらう事になっておる。恐らく上級生、主に5年生と共に行動してもらうことになるじゃろう。八左ヱ門はプロの忍びじゃから色々聞くといい。ではそろそろ解散するかの。八左ヱ門は話があるから庵に来るように。」
「はい。」
八左ヱ門は学園長に一礼して僕たちの方を見た。
「‥‥えっと。」
何を話せばと僕たちがオロオロしていると、八左ヱ門はニカッと笑った。
「久しぶりだなぁお前ら。」
その顔は僕たちの知る八左ヱ門と全く一緒だった。
「‥‥本当に、八左ヱ門なの?」
恐る恐る聞くと、八左ヱ門は一瞬キョトンとした顔をして、
「おう!」
ニパァっと笑った。
「すごいのだ!はっちゃんすごく強くなっていたのだ!」
兵助が興奮しながら八左ヱ門と見る。
「そうか?いっぱい修行したからな~。」
「ヘェ~。例えば?勘ちゃん気になっちゃう!」
「んーそうだな‥‥。あっ!変装はすごい練習したぞ!」
ピクッ
「ほぉ~。」
今まで黙っていた三郎が八左ヱ門に近づく。
「それはぜひ見てみたいものだ。」
「今見せてやろうか?」
八左ヱ門は顔の前で手を素早く動かした。
「ほれ。」
八左ヱ門の顔は三郎の顔になっていた。
僕と三郎は同じ顔のはずなのに、僕たちはすぐに三郎だと分かった。
「どうだ?」
声まで似せた八左ヱ門はまんま三郎だ。
「すごいのだ!はっちゃん!」
兵助が三郎と変装した八左ヱ門を交互に見る。
「こりゃぁ三郎より上だな!」
勘右衛門の言葉に三郎の眉がピクリと動いた。
「今誰かと合ったらどれがはっちゃんでどれが雷蔵で、どれが三郎かわからないのだ!」
「そうか?」
「おう!」
「フンッ!私の方がすごいに決まってる!あの八左ヱ門がこんなにすごくなるわけ無いだろう!」
三郎が八左ヱ門を指さした。
「おほ〜。結構言うな~三郎。」
三郎、完全にムキになってる。
「ハチ、明日から授業の手伝いをしたりするんだよね?」
「そうだぞ!」
何とか話の内容をそらす。
「大変だね。」
「そりゃあな。あっそろそろいかないと。学園長を待たせるわけにはいかんからな。」
八左ヱ門はそう言うとさっさと去っていった。
「‥‥どうしたのさ三郎。あんなにムキになって。」
八左ヱ門の姿が見えなくなってからそう聞くと、三郎は僕にそっぽを向いた。
「‥‥八左ヱ門があんなに強くなってて悔しかったんだ。あの立ち振舞も癪に障る。」
ムスッといった三郎に勘右衛門が続く。
「確かに。なんか変だよな。俺たちの知ってるハチじゃないみたいで。それに、なんか隠してる気がする。」
勘右衛門が真剣な顔でそういう。
「何でそう思うの?」
少なくとも、自分にはそうは見えなかった。何となく違和感があっただけで。
「感!」
勘右衛門は自信満々にそういった。
「感って‥‥。」
「何か感じんだよ。左右の感だよ。」
「なるほどね~。」
「まぁ気のせいかも知んないし、とりあえず食堂行って八左ヱ門くるの待っとこ〜。」
そう言いながら勘右衛門は兵助と三郎をひっぱっていった。