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その夜。
星羅は。
ベッドの上で。
一枚の写真を見つめていた。
2017年12月。
幼い自分。
そして。
幼い玲。
「……」
どうして。
覚えていないのだろう。
二人は。
確かに会っていた。
それも。
一度ではない。
「……離れる」
さっき届いたメッセージ。
『思い出せなければ――』
『今度こそ、二人は離れることになる』
「……」
星羅の指が。
震える。
「……嫌」
小さな声。
「絶対に嫌」
写真を胸に抱く。
「せっかく……」
玲と出会えた。
恋人になれた。
やっと。
自分の隣にいる。
「なのに」
どうして。
「誰かに奪われなきゃいけないの?」
星羅の瞳が。
暗くなる。
「……誰にも渡さない」
スマホを握る。
「玲くんは」
「私の大切な人」
そして。
「私だけの恋人」
翌朝。
「おはよう、星羅」
「……おはよう」
玲が声をかける。
星羅は笑顔を作った。
「眠そうだな」
「ちょっとね」
「大丈夫?」
「うん」
「本当に?」
「……うん」
玲は。
少し心配そうに星羅を見る。
「何かあったら言えよ」
「……」
「俺でよければ聞くから」
その言葉に。
星羅の胸が締め付けられる。
「……玲くん」
「ん?」
「私」
言いかける。
――離れたくない。
――怖い。
――誰かに奪われたくない。
でも。
「……何でもない」
「そうか?」
「うん」
星羅は笑う。
「玲くんがいてくれるから、大丈夫」
「……」
昼休み。
二人で屋上。
「玲くん」
「ん?」
「もし」
「?」
「私が突然いなくなったら」
「……」
「どうする?」
玲は。
少し考える。
「探す」
「……!」
「絶対?」
「ああ」
「どこにいても?」
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「どこにいても」
「……」
星羅は。
嬉しそうに笑う。
「そっか」
「何だよ」
「ううん」
玲の手を握る。
「安心した」
「……」
「私も」
星羅は玲を見る。
「玲くんがいなくなったら」
「……」
「絶対に探す」
「……ああ」
「何年かかっても」
「……」
「何十年かかっても」
星羅は微笑む。
「絶対に見つける」
「……そこまでか」
「うん」
冗談のように。
でも。
その瞳は本気だった。
――放課後。
星羅は。
一人で図書室へ向かった。
「……」
古い新聞。
学校の資料。
過去のイベント記録。
「2017年……」
ページをめくる。
「……あった」
地域イベントの記事。
『冬の子ども交流会』
開催日。
2017年12月。
参加者。
数百人。
「……」
さらに。
『イベント終盤、一部エリアで停電』
「……!」
星羅の手が止まる。
「停電……?」
記事には。
『一時的に会場が混乱』
『数名の子どもが迷子』
『その後、全員無事に保護された』
「……」
星羅は。
写真を見る。
小さなステージ。
暗くなった会場。
泣いている子供たち。
「……」
その中に。
幼い自分。
そして。
玲。
「……この日」
星羅は思い出す。
暗闇。
誰かの手。
そして。
『大丈夫』
あの声。
――玲。
「……」
胸が苦しくなる。
しかし。
記事の最後に。
気になる一文があった。
『なお、当時の会場内に設置されていた監視カメラの一部記録は、機器トラブルにより消失した』
「……」
星羅は眉をひそめる。
「どうして……」
そこへ。
「星羅さん」
「……!」
振り返る。
昨日の少女。
「またあなた……」
「これ」
少女が。
一冊のファイルを渡す。
「何?」
「学校には残ってない資料」
「……」
「2017年のイベントについて」
「どうして持ってるの?」
「調べたから」
星羅はファイルを開く。
中には。
当時の参加者名簿。
「……」
そこに。
幼い玲の名前。
そして。
星羅の名前。
さらに。
もう一つ。
「……この名前」
見覚えがない。
「誰?」
「当時、会場にいたスタッフ」
「……」
「でも」
少女は言う。
「その人は」
「?」
「イベント終了直後に辞めてる」
「……どうして?」
「理由は不明」
星羅は。
名簿を見つめる。
その名前の横には。
赤い印。
「……何これ?」
「分からない」
少女は首を振る。
「でも」
「……」
「この人だけ」
名簿から。
名前が消されている。
「……」
星羅の背筋に。
寒気が走る。
その夜。
星羅は玲と帰っていた。
「玲くん」
「ん?」
「2017年の冬」
「……」
「覚えてる?」
「少しだけ」
「停電」
「……!」
玲の足が止まる。
「星羅も?」
「うん」
「……」
「何かあった?」
「……」
玲は。
頭を押さえる。
「暗かった」
「うん」
「誰かが走ってきて」
「……」
「星羅を探してた」
「……!」
「俺は」
玲の声が震える。
「星羅の手を握ってた」
「……」
「絶対に離すなって」
星羅の目が潤む。
「……玲くん」
「でも」
「?」
「そのあと」
玲は。
眉を寄せる。
「誰かに引き離された」
「……!」
「そして」
沈黙。
「そこから先が思い出せない」
星羅は。
玲の手を強く握った。
「……もう」
「?」
「今度は離れない」
玲を見る。
「絶対」
「……」
「何があっても」
玲も。
握り返す。
「ああ」
「絶対?」
「絶対」
星羅は笑う。
でも。
心の中では。
別の言葉を繰り返していた。
――今度こそ。
――誰にも奪わせない。
――何があっても。
夜。
星羅は一人。
スマホを見つめていた。
謎の人物へ。
『あなたは何を知ってるの?』
しばらくして。
返信。
『2017年の停電の夜』
『二人は一度、離れた』
『そして』
『その直後』
画像が送られてくる。
そこには。
暗い会場。
幼い玲。
そして。
星羅。
さらに。
二人の前に立つ。
一人の大人。
「……誰?」
星羅は画像を拡大する。
顔は。
黒く塗り潰されている。
『この人物が』
『あなたたちの記憶を消した』
「……!」
星羅の瞳が。
大きく見開かれる。
『そして、その人物は今も』
『あなたたちの近くにいる』
「……」
星羅の呼吸が止まる。
『次のメッセージで』
『名前を教える』
星羅は。
スマホを握りしめる。
「……」
そして。
小さく呟いた。
「……玲くんは」
「私が守る」
その目に。
これまで以上の執着が宿る。
「誰が相手でも」
「絶対に」
「玲くんを離さない」
――次の瞬間。
スマホに。
一件の通知。
『その人物の名前は――』
画面が。
暗くなった。
コメント
1件
読んだよ……第40話「絶対に離さない」! 星羅の「誰にも渡さない」って執着が、もう純粋な愛情の向こう側に行っててゾクゾクしたわ。玲も「絶対離すな」って幼い記憶が蘇るところ、泣きそうになった。あの黒塗りの大人が誰なのか、めっちゃ気になる!最後の「名前は――」で暗転するの、ずるくない?🔥 続き待ってるわ、はる。