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深夜。
星羅は。
スマホの画面を見つめていた。
『その人物の名前は――』
そこで。
画面が止まる。
「……」
待つ。
一分。
二分。
三分。
何も届かない。
「……焦らすなぁ」
星羅は小さく呟く。
でも。
胸の奥は。
嫌な予感でいっぱいだった。
そのとき。
スマホが震えた。
『天城星羅』
「……!」
『あなたが探している人物は』
『今もあなたの近くにいる』
そして。
名前。
『――黒瀬玲の母親』
「……え?」
星羅は。
言葉を失った。
「玲くんのお母さん……?」
なぜ。
どうして。
彼女が。
記憶を消した?
『2017年12月』
『停電の直後』
『彼女は会場にいた』
『そして、あなたと玲を引き離した』
「……」
『理由は』
次のメッセージ。
『あなたたちを守るため』
「……守る?」
星羅は眉を寄せる。
『あの夜、二人が見てはいけないものを見た』
『だから記憶から消した』
「……何を?」
返信は。
来なかった。
「……」
星羅は。
スマホを握りしめる。
「だったら」
小さく。
「ちゃんと説明してよ……」
――翌朝。
玲の家。
「……」
玲は。
母親の前に座っていた。
「母さん」
「何?」
「2017年の冬」
「……」
「イベントで停電があっただろ」
母親の手が止まる。
「……どうして急に?」
「覚えてる?」
「……」
しばらく。
沈黙。
「覚えてるわ」
「その時」
玲は。
まっすぐ母を見る。
「星羅と一緒にいた」
「……!」
母親の表情が変わる。
「星羅ちゃん?」
「ああ」
「……」
「母さん」
玲は続ける。
「あの時、俺と星羅に何があった?」
母親は答えない。
「教えてほしい」
「……玲」
「頼む」
母親は。
深く息を吐いた。
「……あの日」
ゆっくり。
話し始める。
「会場で停電が起きた」
「ああ」
「たくさんの人が混乱した」
「……」
「その中で」
母親は。
玲を見る。
「あなたと星羅ちゃんが一緒にいた」
「……」
「二人とも泣いていた」
「俺が?」
「ええ」
玲は驚く。
「そして」
「……」
「あなたたちは」
母親の声が。
少し震える。
「あるものを見てしまった」
「……何を?」
「……」
母親は。
答えを迷う。
「玲」
「何?」
「あなたは」
「……」
「その夜のことを忘れた方がいい」
「……!」
「どうして?」
「あなたを守るため」
「何から?」
母親は。
玲の目を見る。
「大人の事情よ」
「……」
「子供だったあなたには」
「……」
「知らなくていいことだった」
玲は。
拳を握る。
「俺はもう子供じゃない」
「……」
「教えて」
母親は。
しばらく黙っていた。
そして。
「……事故だったの」
「事故?」
「停電の原因」
「……」
「単純な機器トラブルじゃなかった」
「じゃあ?」
「誰かが」
母親は言う。
「意図的に電源を落とした可能性があった」
「……!」
玲は息を呑む。
「その人物は?」
「分からない」
「本当に?」
「本当に」
母親は首を振る。
「ただ」
「……」
「あの夜」
「?」
「あなたと星羅ちゃんを守るために」
「……」
「私は二人の記憶を消すことに協力した」
「……!」
「記憶を消す?」
「正確には」
母親は。
言葉を選ぶ。
「心理的な処置を受けたの」
「……」
「怖い記憶を思い出さないように」
玲は。
頭を抱える。
「……俺は」
「あの時」
「何を見たんだ?」
母親は答えない。
その時。
玲のスマホが鳴る。
星羅。
『玲くん』
「星羅?」
『今、会える?』
「ああ」
『学校で待ってる』
「分かった」
――学校。
屋上。
「玲くん」
「……星羅」
星羅は。
玲の顔を見る。
「何かあった?」
「……」
「話して」
玲は。
昨日から今日までのことを。
全部話した。
母親。
2017年。
停電。
記憶。
そして。
「……母さんが関わってた」
「……」
星羅は黙って聞いていた。
「星羅?」
「……ううん」
「?」
「ちょっと」
星羅は。
俯く。
「怖い」
「……」
「私のお母さんも」
「……」
「何か知ってるかもしれない」
玲は。
星羅の手を握る。
「大丈夫」
「……」
「俺がいる」
「……玲くん」
「一人にしない」
星羅の目に。
涙が浮かぶ。
「……約束?」
「ああ」
「絶対?」
「絶対」
星羅は。
玲の胸に飛び込む。
「……よかった」
「……」
「本当に」
玲の服を。
強く握る。
「玲くんがいなくなったら」
「……」
「私……どうなるか分からない」
「……星羅」
「だから」
顔を上げる。
「絶対に離れないで」
「ああ」
「ずっと」
「……」
「私だけ見て」
玲は少し驚く。
でも。
「……分かった」
星羅は。
嬉しそうに笑った。
「大好き」
「俺も」
――その日の夜。
星羅は。
自宅で母親に尋ねた。
「お母さん」
「何?」
「2017年の冬」
「……」
「イベントで停電があったよね」
母親の顔が。
明らかに強張る。
「……どうして?」
「私」
星羅は。
真っ直ぐ母親を見る。
「何か忘れてる?」
「……」
「玲くんも」
「……」
「同じことを言ってた」
母親は。
しばらく黙った。
そして。
「……あなたたち」
「?」
「あの夜」
「……」
「見てはいけないものを見たの」
「何を?」
「……」
母親は。
涙を浮かべる。
「二人が見たのは」
声が震える。
「一人の男の人」
「……?」
「その人が」
「……」
「何かを壊していた」
「……!」
「そして」
母親は。
言葉を詰まらせる。
「その人が」
「……」
「あなたたちに気づいた」
星羅の顔が青ざめる。
「……それで?」
「だから」
母親は言った。
「私たちは二人の記憶を消すことにした」
「……」
「あなたたちが」
「……」
「その人に狙われないように」
星羅は。
震える手を握る。
「じゃあ」
「……」
「その人は」
「今も生きてる」
「……!」
母親は。
ゆっくり頷いた。
「そして」
「……」
「あなたたちのことを」
「……」
「ずっと見ている」
星羅の瞳が。
ゆっくりと細くなる。
「……玲くんを」
母親を見る。
「守らないと」
「星羅……」
「誰にも」
星羅は。
静かに笑う。
「玲くんを傷つけさせない」
「……」
「絶対に」
その夜。
星羅のスマホに。
またメッセージ。
『真実に近づいてるね』
『でも、気をつけて』
『あなたたちを狙っているのは』
『一人じゃない』
「……」
星羅は。
画面を見つめる。
『次の文化祭の日』
『すべてが動き始める』
最後の一文。
『そして、その時』
『玲くんが本当に誰を選ぶのかが分かる』
「……」
星羅の目が。
静かに光る。
「選ぶ?」
「そんなの……」
スマホを握りしめる。
「最初から決まってるじゃん」
「玲くんが選ぶのは」
小さく笑う。
「私だけだよ」
#青春恋愛
める
48
夏希(なつき)
166
奇蹟あい
1,760
コメント
1件
うわ、第41話……ついに核心に迫ってきましたね。玲くんの母親が記憶消しに関わってたっていう展開、そして「二人が見てはいけないものを見た」という真実——星羅の母親も同じことを言ってて、しかも「その人物は今も生きていて、ずっと見ている」って……背筋が冷えました。 最後のスマホのメッセージ「一人じゃない」「玲くんが本当に誰を選ぶのか」がすごく不気味で。でも星羅の「私だけだよ」って笑顔が、逆にゾッとしました。彼女の玲くんへの執着が、物語の鍵になりそうな予感です。続きが気になって仕方ない……!