「gtくんって、夢とかあるの?」
「夢、ですか。」
夢はあるの?と聞かれても、あまり目標を作るタチでは無かったから、夢も。目標もそう呼べるなにかは、俺にはなかった。ちょっとあたふたしていると、お客さんは、こう言ってくれたんだ。
「夢ってさ、見ることしか出来ないこともあるんだよ。でも、夢が叶った時は、きっと凄く嬉しいけど、それが理想とかけ離れてしまってることだってある。」
「……。」
「だからさ。夢も目標もなく、フリーダムに行きて、楽しい!って、そう思えることを続けることだって、幸せの一つだよ?」
「そう、ですよね!ありがとうございます!!ちょっと気が楽になりました!!」
「良いんだよ〜。あ、ドンペリ2本。」
「かしこまりました!!」
「また入れたの……?もうやめときなって、さっきからずっと言ってるのに……。」
「いーのいーの。さ、飲んで。」
「もう、後ちょっとだけだよ?」
「ングッ……?!」
「お客様がせっかく買ってくれたのに断っちゃだーめ。ちゃんと飲むんだよ?」
「ゲボッ、ゴッホッガホッ、はぁッ……? 」
「よくできました。」
お酒を口に突っ込まれた……?俺は理解が追い付かず、ずっとむせるばかりだった。そんな俺に、 大丈夫?とか言いながら、さすさすと、背中をさすってくれる。優しい、な。って、思った。まさかお客さんに接客を教えられるとは思わなかった。もしかしてこの人、別のクラブの店員とか?
「ごめんね、ごめんね。」
「スゥッ、ふぅーッ。いえ、すみません。僕がひよっこなのが悪かったです。ご教授頂き、ありがとうございます。」
「んーん。いいの、いいの。こっちも急にこんな事しちゃってゴメンね。辛かったよね。苦しかったよね?大丈夫?」
「だ、大丈夫、です。 」
びっくりしたけど、大丈夫、落ち着いて。前にいるのはお客様であって、恐怖の対象では無い、大丈夫だ、戻れ。そうは言い聞かせても、手が震えて、どうにもならなかった。この人に対して、ほんの少しだけ、好意を抱いてしまったこと、ホストとして失格だ……。でも、指名を受けた以上、最後まで接客するのがホストでもある!!
「これ飲んだら帰るね?」
「ッあ、はい。」
「お酒、強いんですね。異常なほど。」
「ん?まぁね。好きだから、」
誰かに、似ている…
「好きな人とかいるんですか?」
「んー?いるよぉ?」
「ははっ、いいですね。」
この、違和感は?
「美味しかった。ありがとう。」
「いえいえ、またいらして下さいね。いつでも待ってますよ。」
「ありがとう。」
重なった…?
「r……ッ!!」
「ん?」
「いや、人違いです。ごめんなさい。」
「……いいよ。」
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