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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ある日の部活終わり。


わいわい騒ぎながら正門へ向かっていると、おい、とみんなが俺を引き寄せた。



「っ、なに、」


「あれ、例のあの子じゃねーの?」



耳元で囁いた友人の視線の先には、たしかに仁人がいた。


吹部と帰りのタイミングが被ったらしい。



「行ってこいよ、いまなら一緒に帰れるぞ」


「いや、逆方面かもしれないし…」


「駅まででも十分だろ、なんでエース様がそんな弱気なんだよ」



そんなこと言われても、仁人のことで失敗なんかしたくない。


しかし、こちらに歩いてくる姿からは目が離せなくて、ふと、目が合ってしまった。



「あ、」


「ほら、気づかれたんだし!」



俺の背中を押し出して他のチームメイトの元へ駆けていったそいつらを睨みつけると、意地悪く笑われる。


気づかれてしまっているし、この状況では仁人に話しかける他ない。


あいつらがまだ見える距離にいるのは恥ずかしいが、腹を括った。



「じんと、」


「あ、佐野くん、部活帰り?」



バチッと音がしそうなくらい目が合ったのだから気づいていないはずないのに、あたかも今の今まで俺がいることに気づいてませんでしたみたいな澄ました顔をする。



「うん、じんともだよね…?」

「うん、おつかれさま」


「っ、おつかれ、」


「…ふ、なんか、はずかしいね笑」



なんだこの天使は…。


真っ赤に染めた頬を両手で挟んではにかむ姿にくらくらした。


新婚のようないじらしいやり取りに、交わる視線も気まずい。



「えっと…、一緒に帰んない、?」


「え、うん…!、帰りたい、です、」



互いに照れを隠しながらおずおずと歩き出す。



「誰かと帰るの、初めてなんだよね……」



ぽつりと仁人が零す。



「え、今までで?」


「あ、や、さすがに低学年の頃とかはあったけど……なんか、人と関わるのめんどくさいなっておもっちゃってたから…」


「そっか…。じゃあ俺とかめんどくさい、?なんかいっつもうるさいの連れてるし笑」


「まさか!佐野くんと話すようになってからほんとにたのしいよ!…だから、受験とか、忙しくなったらさみしいかなー、って」


「え、」



そうか。


考えていなかった。


仁人と会えなくなるなんて。


サッカーの推薦も来るだろうとは言われたけれど、大学のその先のこともあり、学力で入学することに決めたのだ。


だから、登校日が終われば受験が終わるまでは仁人と会えなくなる。


至極当然のことなのに、目の前の幸せに浮かれて、思考が及んでいなかった。



「ふはっ、自分のことなのに忘れてたの?」


「いや、なんかそんな、ちゃんと考えれてなかったっていうか……部活とかで手一杯で、」


「じゃあ部活は、なにしてるの?」



たぶん、空気が重くなったから話題を変えてくれたんだろう。


こいつこんなにコミュニケーション上手かったか?と思ったけど、周りに人がいない分、教室よりいいのかもしれない。



「いま、?高体連の練習」


「そっか、それ終わったら引退だもんね」


「吹部は?あ、吹部も高文連あんのか」


「それもそうだけど、高体連も練習してるよ」


「え、?なにが違うんそれ」


「去年の高体連、応援演奏してたでしょ?」



そう言われて去年のことを思い出せばたしかに、吹部の演奏が聞こえていたような気もしなくもない。



「っあー……たしかに、」


「ねえ、ほんとに覚えてる?」



図星を刺されて、吹き出してしまう。



「ごめん、なんっも覚えてない」


「もー、」



ほっぺを膨らまして怒った素振りを見せても、かわいすぎて怖くない。


むしろいつもの数倍かわいくて困る。



「今年はちゃんと聴いてよ?」



今度は拗ねたような上目遣い。


こんなにあざとくて、本当に手付かずなのか?

「それはもちらん聴くよ!てか、じんとって楽器なに?」



出会った頃から気になっていたのに、訊いてなかったことに気がつく。



「え、トランペット、言ってなかったっけ…」


「言ってない、花形じゃん!ソロとかあんの?」


「んー、ま、なくはない、?」


「そっか、じゃあ俺がんばれるわ」



そう伝えると、照れたように「がんばって、」と言ってくれた。


あーやっぱり、付き合いたいかも。


ちゃんと胸張って仁人の彼氏になりたい。


こうやって話していても脈ナシではなさそうだし…。



「じんと、高体連終わったら、伝えたいことある」


「っえ、いまじゃダメなの」


「うん、」



たぶん今伝えたら、それぞれのことに集中できなくなる気がする。


それにもし振られたら高体連なんて絶対ボロボロだ。


だから今は、このもどかしい関係を楽しみたい。



「わかった、まってるね」



仁人も、何を言われるのか想像がついているのかもしれない。


俯いて静かに呟いたその耳は、心做しか赤く染まっているように見えた。













この作品はいかがでしたか?

469

コメント

3

ユーザー

最高です!!ありがとうございます😊

ユーザー

続き嬉しすぎますー!!! ほんとにプリ小説でものーんさんの作品が見れて最近ほんとにルンルンです😭💕 めっちゃ最高です、やっぱりのーんさんの書くさのじん大好きです!! 全然沢山待ってるのでゆっくりのーんさんのペースで更新頑張ってください!! これからも応援してます😖‪🫶

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