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・knkz
・空想りすなー
kn→「」 kz→『』
最近、叶の声を聞くたびに、胸が苦しかった。
相変わらず優しくて、笑ってて。
だけどどこか――本当に少しだけ、距離を置かれてる気がして。
「葛葉、何考えてるかわかんないって、よく言われるでしょ」
叶に笑いながら言われた、その一言がずっと頭から離れなかった。
(そうだよ……俺だってわかんねぇよ。自分の気持ちなんか)
でも、わかっちまったんだ。
叶の声が、誰かと楽しそうにしてるだけで、心がきしむ。
叶の名前が他の人の口から出るだけで、イライラする。
もう、認めるしかなかった。
その夜、通話が繋がるとすぐに、葛葉は呼吸を整えた。
『叶』
「ん?」
『……ちょっと、黙って聞け』
「え? なにそれ、こわ――」
『っ、俺……お前のこと、ずっと“相方”だって、そう言い聞かせてたけど』
声が震えた。口の中が乾いて、喉が詰まりそうだった。
『でも、最近、配信のあとも……寝れねぇんだよ。
お前の声、頭に残って、誰かと笑ってるの思い出して、
……勝手にムカついて、勝手に苦しくなって。意味わかんねぇだろ?』
「……」
『俺、こんなふうになんの、お前だけだよ。
他の誰でもねぇ、お前じゃなきゃダメなんだよ』
苦しそうに、搾り出すように、葛葉は言った。
『逃げたくても、どうしたって、もう……お前のこと、好きなんだよ』
沈黙が重くのしかかる。
でも、もう後戻りはできなかった。
『……だから、叶。俺と、付き合ってくれ』
叶は言葉もなく、ただ静かに呼吸を整える音だけが聞こえた。
葛葉は耐えきれずに、笑ってしまう。乾いた、情けない声で。
『……やっぱ引いた? だよな、急すぎるし、こんなん重いし、
俺、言い方も下手で、タイミングも最悪で――』
「……違う」
叶の声が、割り込むように届いた。
「僕は……葛葉が、そこまでの覚悟で言ってくれたのが、嬉しい」
『え……?』
「ほんとはさ、僕も何度も期待しちゃって、でも怖くて、何も言えなかったんだ。
だから、今、ほんとに……救われた」
小さく息を吸って、叶が言う。
「付き合おう、葛葉。……僕も、お前のこと、ずっと前から好きだった」
『……マジかよ……っ』
葛葉はそこでやっと、息を吐いた。
息が震えて、膝が抜けるほど安心して――
ほんの少しだけ、涙が滲んだのを、マイクに拾われないようにした。
『……ほんとバカだな、俺……』
「でも、そんなバカが僕は、好きだよ」
画面越しの二人は、ようやく同じ場所に立った。
ずっと遠かった距離が、一気に縮まった瞬間だった。