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「、、急いでるんで」
「いやいや、これから帰るだけなんでしょ」
手を振り払いたかったが、少し怖かった。
「お願い、こんな可愛い子いないって」
「放してもらっていいですか」
少し見上げる背丈の人が私の前にいた。
「え、何?あんた」
眼鏡をかけた横顔が、一瞬見えた。
男の人を私から放して、私の方を振り向いた。
「行こ」
「いやいや、何?誰なのお前」
「宇治って言うんで、覚えてください」
そう言って、私の手を引いて早足でその場から離れた。
「ありがとう、宇治」
「なんもされてない?」
「うん、大丈夫」
また、助けてくれた。
「あっ」
すぐ近くに佐倉くんたちがいた。
また会っちゃったね、と佐倉くんは少し笑った。
宇治は、私を見たあと、佐倉くんに視線を向けて、少し下を見た。
「どうした?宇治」
「こんなとこで一人にしないで、幡中のこと」
3秒ほど、沈黙があった。
「、、ああ、、ごめん」
佐倉くんが戸惑ったように言うと、少し間を置いたあと、宇治もごめん、と言ってそこから去った。
「ちょっと、宇治。、、ごめん佐倉くん」
私はそう言って宇治の後を追って、隣を歩いた。
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「お姉ちゃん、ばったり会った男の人って友達ー?」
帰り道、お面を二つ持った妃奈乃が言った。
「うん、友達」
「きっとお姉ちゃんと一緒に回りたかったんだよ」
なぜだろう。
あの手に引かれると、
心が揺らいで、どこにあるか分かる。