⚠︎注意
・iris 赤桃 BL
・青桃要素有り
・年齢は本人様とは関係ありません
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🍣side
混んでいる正午の駅構内を走り抜ける。
なんとか外へ脱出すると、見慣れた青髪が見えた。
🍣「遅くなってごめん!待った?」
🤪「全然。ほい、さっきそこで飲みもん買ったからやるわ。」
そう言って彼氏のまろは俺に温かいお茶を手渡した。
今日もまろはおしゃれにコーデをキメている。
付き合う前もそれは素敵だったが、最近特にこだわりが強くなってきた気がする。
🍣「…」
🤪「ないこ?」
🍣「あ、ごめん見惚れてたわ。お茶ありがと!」
🤪「ん…じゃ行こか。」
そう言うとまろは俺の手を握って歩き始めた。
俺も慌ててまろの隣に付き、手を絡め直して強く握る。
今日はまろとのデートなのだ。実に1ヶ月ぶりなのでとても浮かれている。
まろは俺の気合の入った装いに何も言わない。
けれどそれはいつものことだったし、彼の照れ隠しなのも十分理解していた。
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🍣「さっきのカフェすごい美味しかったね。」
🤪「せやったな。」
🤪「けど、ないこはもう少し彼氏の財布を気遣った方がええと思うで?」
🍣「それはごめんじゃん。」
🤪「まぁ…ないこの幸せそうな顔が見れて良かったけど。」
ほらまた、まろはそういうことを平気で言ってしまうんだから。
俺がまろに心を弄ばれているのをいつか返してやりたいと思いながら歩道の脇の店を眺めてみる。
ある狭い一角に占い屋があるのが目に入った。
🍣「まろ、あれ見て。」
🤪「ん〜?……占い?」
🍣「うん、今の時代あるんだって思って。」
🤪「確かにな〜」
まろは大して気にも止めずに歩みを進める。
しかし、俺はすっかりその占い屋に目を奪われていた。
🤪「え…ないこ、もしかしてあれやりたいん?」
🍣「……うん。」
まろはそんな俺を見て呆れたように溜息を吐いた。
🤪「少しだけな。」
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🍣「すいませーん。」
👤「…いらっしゃい。」
建物の中に入ると、部屋の中央に机があり、その奥にローブを深く掛けた人がいた。
彼が占い師さんだろう。声は男性のものだった。
🍣「あの、占って欲しいんですけど…」
👤「どうぞ、そこに掛けてください。」
俺たちは言われるがままに占い師さんの前にある椅子に座った。
まろは変に一瞬動きを止めたが、すぐに椅子に腰掛けた。
👤「では、何を占いましょうか?」
🍣「えー?まろ、どうする?」
🤪「いや、ないこがやりたいって言うたやん。俺は何でもええよ。」
🍣「そっか、けど何も思いつかないな…」
👤「…なら、私の占いが本当に当たるのかお見せして差し上げましょうか?」
🍣「え、そんなことできるんですか!」
👤「えぇ。今からどちらかの個人情報を当ててみせましょう。」
🍣「すご!じゃあ、この隣の人占ってください!」
🤪「なんで俺やねん!」
すると占い師さんは水晶を取り出してまろの前に掲げ、神妙にそれを眺め始めた。
しばらくして、彼が口を開いた。
👤「…名前は伏せますね。」
👤「27歳、誕生日は12月2日、血液型はB型。」
🍣「…まじ?」
👤「合ってますかね?」
🍣「完璧です、…こんなに当たるなんて思ってませんでした。」
🤪「いやもう怖いんやけど。」
まろは信じられない、というような苦い顔をしていた。
🍣「じゃあ、好きなものとか分かります?」
👤「…言いにくいのですが、ポニーテール……ですね。」
🍣「え、めっちゃ合ってます!凄いですね!」
🤪「なんで俺は性癖公開されてんねん。」
🍣「他には何かあります?」
🤪「いや、もうそろそろやめ──」
👤「彼女さんがいるんですね。」
それを聞くや否やまろは固まった。
それと対照的に俺は自分が自他共に認めるまろの恋人なのだと嬉しくなってはしゃぐ。
🍣「そんなことまで分かるんですか!」
👤「えぇもちろん。よーく見えますよ。」
🤪「…なぁないこ、もう俺はええからないこのことも占ってみよや。」
🍣「確かに。」
🍣「じゃあ……俺に今後起こる重要な出来事とかありますか?」
🤪「…」
👤「なるほど…。」
占い師さんは俺の前に水晶をかざしてしばらく黙った。
👤「…近いうちに、良いことが起きるかもしれません。」
🍣「…!ほんとですか!」
👤「えぇ。ただし、そのためには条件があります。」
🤪「条件満たさんと起こらんことってなんやねん。」
👤「しばらく一人でいてください。」
🍣「…一人、というと?」
👤「そのままですよ。1週間くらいはあまり外出しない方がいいです。」
🍣「…そんな大切なことなんですか。」
👤「ええ。あなたの人生が大きく変わることになるでしょう。」
🍣「まじか…善処します。」
🤪「…ないこ、もうそろそろええ時間やで。」
🍣「あ、そうだった。」
🍣「じゃあ料金を…」
👤「料金は要りませんよ。」
🍣「え、いやいやそんなわけには…!」
👤「貴方からそれを受け取る必要はありません。」
俺が料金を払おうと困っていると、占い師さんは何かを取り出した。
そして彼はそれを俺の手に握らせる。
彼は俺の耳元に口を寄せて、まろに聞こえないくらいの声量で囁いた。
👤「これ、おまじないです。良いことがありますように。」
俺が驚いたまま動かないでいると、彼は少し笑ったような気がした。
俺は慌ててそれをポケットの中にしまった。
👤「では、二人ともお帰りください。」
👤「私も今日のところはこれで終わりますので。」
🍣「あ…ありがとうございました。」
🤪「…あざっした。」
そして俺たちは店を後にした。
🍣「いやー、面白かったね。」
🤪「普通に疲れたわ…」
🤪「…あんなこと言われたし、今日はお開きにしよか。」
🍣「え、あれ信じてるの?」
🤪「まぁ…実際俺のこと言い当ててきよったし。」
🍣「…そうだね、じゃあ今日はもう帰ろっか。」
🤪「おん。今日はありがとな、また連絡するわ。」
🍣「はーい、またね。」
手を振ってまろを見送ると、先ほど占い師さんにある物を貰ったことを思い出した。
ポケットから取り出すと、それは赤色の石がついたネックレスだった。
🍣「…なんか、結構素敵なもの貰っちゃったな。」
🍣「今度まろに会う時に付けていこうかな〜」
俺はまた、それを丁寧にポケットの中にしまった。
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数日後
🍣「あー今日も疲れた。」
会社から帰宅し、我が家の玄関に着く。
🍣 (今日のご飯何にしようかな。)
そう思いながら玄関の扉を開けると、明かりが点いたままになっていた。
🍣「うわ、点けっぱなしだった!?最悪〜」
落ち込んだ気持ちでリビングに入ったところで、俺の体は固まった。
🐤「あ、おかえり〜。」
🍣「…誰?」
リビングの中には、赤い髪の大学生くらいの男がいた。
🐤「誰って酷いな〜、この前会ったばっかじゃん!」
🍣「いやいやいや知りませんけど!」
🐤「えぇ…りうらのこと覚えてないの…?」
🍣 (本気で誰!?)
🍣「よく分かんないけど、普通に不法侵入だから警察に通報するよ?」
🐤「なんでよ、りうらちゃんとこの家の鍵使って入ったのに。」
🍣「……え?」
俺の聞き間違いか?俺が知らない人に自分の家の鍵を渡してるなんてことはない。
合鍵を持っているのはまろくらいだ。
🍣「本気で怖いんだけど。あんた何者?」
🐤「何から説明したらいいのかな…」
🐤「とりあえず、りうらはないくんたちがこの前話した占い師だよ。」
🍣 (は!?こいつ俺の名前も知ってるんだけど!?)
いよいよ背中に冷や汗が流れ始めた。
俺はとんでもない人間と対峙しているのかもしれない、と今更自覚する。
🐤「で、まろの彼女でもあるんだよね〜。」
🍣「…は?」
彼のその一言で、俺の今までの戦慄は全て怒りに変換された。
🍣「あいつ、浮気してんの?」
🐤「ま、そういうことになるね。」
🐤「だからまろのこともあんなに当ててた…ていうか知ってたんだよ。」
🍣 (まろがあの時変だったのってそれが理由か。)
信じられない。『まろ』って呼び名も俺だけに許してるとかほざいてたくせに。
というか、この話しぶりから察するにこいつはまろに別の彼女がいることを分かってて付き合っていたようだ。
こいつもキチガイの部類に違いない。
🐤「…でもね、りうらはまろが好きで付き合ったわけじゃないんだ。」
🐤「ないくんに会いたかったの。」
🍣(…どういうこと?)
彼は徐々にこちらに近付いてくる。
俺は今すぐにも逃げ出したいのに、目の前のこいつが何をしたいのか理解できないことへの恐怖で一歩も動けなくなっていた。
そのまま、彼は俺のことを抱きしめた。
🐤「ないくんが好き。ずっと会いたかったよ。」
🍣「っなに言って…」
🐤「…覚えてないなんて残念。」
そう言って彼は俺を床に押し付け、俺の体に上ってきた。
🍣「まじで誰だよお前!」
🍣「いきなり彼氏の浮気相手にカチコまれるとか聞いてない!」
🐤「だから、さっきから言ってるけどりうらはないくんに会いに来たの。」
🍣「なんで知らない奴に好かれてんのか分かんないし…」
🍣「ってかどけよ、まじで通報するぞ!」
🐤「…あのね、りうら一年だけないくんと同じ大学にいたんだよ?」
俺の言葉を無視して彼は悲しそうに言った。
そう言われても、俺は本当に何も覚えていない。
だってその頃はもうまろと付き合っていたから、他の人なんて俺にとってはただのモブだったんだ。
🐤「なのにまろと付き合ってるって聞いて、めっちゃ腹立った。」
🐤「だからまろに近付くことでないくんの所に来ようとしたの。」
🍣「…なんで俺の家が分かった?」
🐤「占いが終わった後、ネックレスあげたでしょ?」
🐤「それにGPS付けといたの。」
🐤「それでさっきまろのこと脅してないくん家の合鍵貰ったんだ。」
彼は愉快そうに鍵を指でつまんで揺らす。そこには猫のキーホルダーが付いていた。
それを見るに、まろは浮気していたなりにも俺のことを結構大事にしていたのかもしれない。
🍣「まろに何した!?」
🐤「別に殺してなんてないよ、ただちょっと静かにしてもらってるけど。」
彼は何でもないことのようにそう答える。
静かにさせた、ということは何かしらの危害を加えたことには違いなさそうだ。
🍣「…初めから俺のところに来なかったのは何で?」
🐤「だって、まろは浮気する奴なんだってないくんが冷めてくれたら奪いやすくなるじゃん。」
🍣「本当に外道だなお前。」
🍣「…てか、これでもまだまろのこと嫌いになってないし。」
🐤「えー…じゃあ勿体ないことしたなー。」
すると彼は俺の首に付いていたネクタイを解き、それを俺の両手首に巻き始めた。
🍣「ちょっ、何してんの!?」
しかし彼は少しもその手を止めない。
🍣 (大声出せばまだ何とかなるか…?)
俺は覚悟を決めて深く息を吸った。
と、次の瞬間には彼の手で口を塞がれていた。
🐤「だめだよ、ないくん。」
🐤「うるさくするなら塞いどかないとな〜。」
しょーがないな、と言いながら彼はどこからかガムテープを取り出した。
片手で俺の口を塞いでいるのにも関わらず、器用に口でテープをちぎる。
🐤「ちょっと苦しいけど我慢してね。」
そう言って彼は俺の口にガムテープを貼り付けた。
途端に、声を出すことはおろか息もままならなくなる。
遂に俺の目から液体が溢れていくのを感じた。
🐤「何それめっちゃ可愛いんだけど。」
🐤「ちょっと待ってね、色々準備してくる〜」
彼は2階へと消えていった。恐らく寝室に向かったのだろう。
息が苦しい。地上に放りだされ死にゆく魚のように必死に鼻で喘いでいる。
程なくして彼は手に幾つかの道具を持って階段を降りてきた。
それらを見て何をするのか気付かない者はいないだろう。
🍣「ん“〜っ!んぅ”!う“ぅ〜」
🐤「必死だね、そういとこも可愛いけど。」
そして彼は俺の方に向き直った。
だんだんと近付いてくる彼から必死に逃げようと身を捩る。
彼はそんな俺にイライラしたのか乱暴に俺の肩を掴んだ。
だんだんと抵抗する気力も無くなって、体から力が抜けていく。
彼は俺の頬をするりと撫でた。
🐤「…あ、そういえばなんで“占い”してたか教えてあげよっか?」
🐤「“りうら”と“ないこ”だから“うらない”にしたんだ!」
🐤「ね、めっちゃセンス良くない?」
死ぬほどどうでも良い情報を残して、彼は俺の首筋に歯を立てた。
俺は自分の体が暴かれていくのをただ見ていることしかできなかった。
🐤「…ほら、“りうらにとっての”良いことあったでしょ。」
end
コメント
2件
見るの遅れたぁ、…凄い、ドロドロっていうかなんていうかって感じですね!最高です、!まろさんどうなっちゃったんだろ、次も楽しみにしてます!!