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「……相変わらず、森は静かだなぁ。」
モルグは焚き火の前で、今日も焼き肉にかじりついていた。毒胞子スキルで小型モンスターを狩り、焚き火で調理する。少し前は戸惑っていた異世界の森でのサバイバル生活も、何となく板についてきた。
「……まさかキノコの体でここまで生き延びる自信がつくとは思わなかったぞ。」
ふと、今日は森を見渡してみる。
「でも……このままでいいのか?」
森の奥は薄暗く、虫やモンスターの気配がそこかしこに感じられる。最初の一週間は生き延びることだけで精一杯だったが、今は、奇妙な“日常”に安定すら感じている自分がいる。
獲物を狩る効率もどんどん良くなり、スキルもなんとなく応用が利くようになってきた。進化したスキルを確認してみる。
【スキル:毒胞子(小)→毒胞子(中)】
放出量と範囲が拡大されました。
「……サバイバルしてるうちにレベルでも上がったかな?キノコでも成長するんだな。」
岩陰に座り、空を見上げる。
「それにしても、この森の外には何があるんだろう……」
気づけばこんな独り言が増えてきた。最初は逃げ場を探していたけれど、今は森の向こうの“世界”に好奇心が湧いている。
ある日、森の中でうっすら道のようなものも見つけた。転生後はじめて人の気配を感じる木の実の食べかすや、落ちている布の切れ端。
「……人間がいる?」
胸がドキッと高鳴る。
「別に今すぐ森を出なくてもいい。でも……俺は、いずれあっちに行くのか?」
その晩。
「はー……どんな奴らがいるんだろう。魔王とか勇者とか、よくあるファンタジー的展開もあるのかな……いや、まずは普通の人間と会話できるのかすら分からんけど。」
焚き火のパチパチという音だけが心地良く響く森の夜。
「それとも、やっぱりキノコのまま一生引きこもって暮らした方が平和か……?」
答えのない自問自答を続けつつ、モルグは焚き火の火を静かに見つめていた。