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「……最近、なんか自分が“キノコ”であることにも慣れてきたな……。」
モルグは森の中、これまで来たことがない奥地を探検していた。森暮らしにも慣れてきて、小さな冒険心がわいてきたのだ。
「たまには新しいことしてみるか。どうせならもっと効率よくサバイバルしてぇし……」
木の根元に生えた不思議な苔を触ったり、見たことない木の実をかじったり。すると、頭の中で――
『新たなスキルを獲得しました』
「え?ま、まじで!?」
ステータスウィンドウがポップアップする。
【新スキル獲得!】
毒胞子(ポイズンスポア):数分で敵を衰弱させる。
眠り胞子(スリープスポア):小動物から中型魔物まで眠らせる。
幻覚胞子(ミラージュスポア):敵に幻覚を見せる。
「おおおっ!?めっちゃ強そうなスキル増えてる!!」
さっそく、試してみることにした。
「……まずは、毒胞子。えーっと、心の中で“ポイズンスポア”、っと……。」
そばに現れたウサギ型モンスターに向かって胞子を放出。ほのかに紫がかった煙がゆらゆらと拡がる。
「どうだ……?」
しばらくすると、ウサギモンスターがグラリとよろめき、あっという間に動けなくなった。
「うぉっ、数分どころか一瞬で効いた!?やば、これ強すぎじゃね?」
続けて、“スリープスポア”を使ってみる。
「……次は眠り胞子……スリープスポア!」
胞子の色が今度は淡い青緑色に――。草むらから顔を出したイノシシ型のモンスターが近寄ると、クシャミした直後に、その場にバタッと倒れ、ぐーぐー寝始める。
「なんだこの便利スキル!無血勝利どころか、ストレスフリーじゃん……。」
最後に幻覚胞子。ドキドキしながら心で宣言する。
「……これが一番未知数だな……ミラージュスポア、発動!」
今度は虹色がかった胞子が宙を舞う。
たまたま近くにいたリザード型の小型魔物に胞子が触れると、いきなり右往左往し、ありもしない敵にびびって逃げ出していく。
「ふお……。幻覚って……本当に“幻”見てるのか……?おいおい、こんなの使いこなせたら森でも町でも無敵じゃないか?」
ワクワクが止まらないモルグ。感心しながら新スキルの説明を見直す。
「ブラック企業時代からは想像もできない成長スピード。俺、ほんとに“進化”してるんだな……。」
焚き火の前で、まるで子どものように新しいスキルを何度も試してみた。
「……これなら、いずれ森の外で何が起きても生き抜く自信が出てきたかもな……。」
自分の可能性を確かめた夜、モルグは晴れやかな気持ちでこうつぶやく。
「ありがとう、体当たりで新しいことにチャレンジした過去の俺。あと……こんな面白いスキルをくれた、少しだけクソじゃなくなった女神よ。」
笑いながら森の星空を見上げるモルグ。
次は、どんな世界が待っているのだろう。