登場人物
主人公ー中野トワ 18歳 従軍看護婦
看護学校卒業後、すぐ招集されフィリピンへ
廣瀬カナ 25歳 従軍看護婦
幼い双子の子供がいるが招集された
子供は現在彼女の両親の元で暮らしている
相模涼子 19歳 従軍看護婦
強気な女性。看護学校では皆の憧れ的存在だった。
村田チヨ 18歳 従軍看護婦
背が低い弱々しい女性。だがいざという時は頑張れる
宇佐美アキ 16歳 陸軍少尉
死んだ祖父に憧れて陸軍に入隊。両親は戦争で既に他界。祖母と共に暮らしていた。煙草好き
この物語はフィクションです
日本から遠く離れた地、比律賓。私達はそこへ、兵士を支援する従軍看護婦として向かった。
「結構ここって涼しいんだな!日本もこれくらいだったらいいのに」
涼子は少し満足気な表情だ。確かに、日本の秋か夏のような気温だ。20℃くらいはあるのだろうか。
探索しながら歩いていると、チヨが立ち止まって遠くをじっと見ていた。
「どうしたの?何かあった?」
そう聞いてみると、チヨは「あそこ…見た事ない動物がいます…ほら、あの木の上…」木の上を指さした。すると、その視線の先には見た事ない小動物がこちらを見ていた。
そうみんなで眺めていると、怯えてしまったのかその動物はどこかへ行ってしまった。
「行っちゃったね…私達もそろそろ行こうか」
「それにしても、チヨ、お前狙撃兵の素質があるんじゃないか?あんな小さな獲物を見つけるなんて…お前も陸軍に入隊しないか?」
アキが感心した様子でチヨに話す。そういえば、アキさんはどうやって戦うのだろう。前線で相手に突っ込んでいくのか?それとも、狙撃をしたりするのか?
「え、えへへ…光栄ですぅ。
…あ、またあそこに何かいますよ?」
チヨが指を指す方向を見つめてみる。あれは…
「お前ら伏せろ!!!」
アキが一気に表情を変えて叫ぶ。伏せた瞬間、遠くでこちらを狙う銃声が聞こえた。
「ひゃあ!!!敵の残党まだいや がったのか!少尉殿、どうすりゃ…」
涼子が頭を抱えながらアキに助けを求める。流石のアキも想定外の事態だったのか、少しの間考え込む。そうだった。ここは戦地だ。いくら国際法で私達看護師の命が守られていたとしても、勝てば罪には問われない。まさに勝てば官軍負ければ賊軍だ。
「あー…今から煙幕をはるからすぐに走って逃げるぞ。いけるな!?」
はい、と全員が返事をする。
「行くぞ…1、2、3!」
その場に煙が立ち込め、全員で走って逃げた。
無我夢中で逃げた。これ程本気で走ったのは初めてという程に。
「ハァ…ハアッ…ふー…」
いくら走っただろう?もう銃声も聞こえなくなり、目的地が見えてきた。
「あっ…すぐそこに見えた、みんな…野戦病院」
野戦病院。それは前線で戦う兵士たちを支援するための病院。
「やっと来れたわね…ふぅ、どうなるかと思ったけど…さぁ、早く物資を片付けて仕事に取り掛かりましょう。」
カナはそう言って野戦病院の中へと入ったが、立ち止まって険しい顔をした。
「カナさん…ど、どうしたんですかぁ?」
私達も追って中へ入る。そこには、教科書で習った内容とは程遠い、劣悪な環境だった。
痛み止めも少ないのか、傷を押さえて痛がり、声を漏らす兵士もいる。
「占領したとは聞いていたが…思ったより酷い環境だな。」アキが腕を組んで見ていると、少し驚いた顔をしてある男兵士に近づいた。包帯は巻いていないが、身体中に傷跡のある兵士だ。
「あれ、あなたはー」
その兵士は驚いた顔をしてアキを見て、
「お前宇佐美か!?宇佐美アキ!」と大きな声をあげた。
「そーですよ、お久しぶりですね、波多野中尉殿?」波多野、と呼ばれた兵士はため息をついた。「まさかお前が…はぁ。お前はどこにでも現れるな…」その兵士はうんざりした顔をした。
「少尉殿、そのお方はご友人ですか?」
私達は思い切って聞いてみた。
「なっ!お前!こいつと友人だなんてー」
「そーさ、友人さ。とっても古くからのね。ね?中尉殿」「違う!!ただ家が近かっただけだ!」
「ご近所2人とも軍人かぁ!すげえな少尉殿たち」涼子が笑いながら感心している。
確かに、ご近所で2人とも軍人で同じ戦場にいる、これはよくある事では無いだろう。
「はぁ…うるさくなる。
お前ら、俺は波多野 信太郎。中尉だ。覚えておけよ。」
彼は立ち上がって、何処かへと行ってしまった。
「あはは、待ってくれよ中尉殿ー!久しぶりなんだからゆっくり話そうじゃないかー!」
それを、アキは走って追いかけて行った。
「中尉殿、押されてたわね…アキさんに」
「さすが…軍人になった女ってだけあるなー 」
「中尉殿が…ちょっと可哀想なような…」
「あっ、そんな事より仕事に取り掛からないと」
そして四人はそれぞれの持ち場に去っていった。四人が同時に思った事がある。
(なんだか…面倒な事になりそう!)
登場人物
波多野 信太郎←new!
中尉。20歳。宇佐美アキ(少尉)とは知り合い。
だが仲は良くない。自分の思いを隠して強がってしまう癖がある
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