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仕事を終え事務所から少し離れたホテルでY本と会うことにした。
予約を取った部屋でY本を待つ。僕の考えもだいぶ整理がついてきた。
約束の数分前にノックの音がして、Y本が入ってきた。洋さんが出かけてしまい、戻るまで貴洋の世話をしていたらしい。いつものことっすよと健気に笑いながら流すY本はいつも通りの彼だった。
そんな日常の他愛ない話を続ける。
「それで…僕のことなんだけど、Y本くんとはいい同僚だし、これからも変わらず同僚としていて欲しいと思ってる。からさんや洋さんとも」
「…そうっすよね、わかります。オレが早漏すぎなんすよね」
Y本は少しガッカリしながら誤魔化すように笑っていた。
「そりゃそうだ。体裁はきちんとしておきたい。Y本くんのことは好きだし、からさんも洋さんも好きだ」
「でもプライベートでは、その…一緒になってみたい。察しの通り僕はからさんが気になっていたし、ハッテン場で性欲を発散してきたようなクズ男だ。でもY本くんの真剣な思いと笑顔、今まで同僚として接してきた日々と昨日のことを思うと、Y本くんともっと近くで過ごしたいと思うようになった。だから、その…」
俯いて半泣き気味だったY本の表情が少し明るくなる。こういうわかりやすい所にも惹かれるものがあったのかもしれない。
「僕は人とまともに付き合ったことはないが、Y本くん、いや、S平と少しずつ心身とも深めて付き合いたいと思った。だから…」
「じゃ、じゃあ…オレと…?」
「まだ正直、僕の中できちんと整理がついていない。でも、からさんとはただの同僚として接していこうと決めたし、S平の実直な思いに僕は惹かれてしまった。だからS平とこれからはもっと深く付き合っていきたいのだけど…こんな僕で本当にいいのかな?」
「Y岡さん…!じゃなくて、H明!やった!オレめっちゃ嬉しいっすよ!」
体全体で嬉しそうなY本が抱きついてきた。僕も優しくY本を抱きしめる。僕はこんな実直すぎるほどのS平に知らぬ間に惹かれていたようだ。
僕の心が温かいもので覆われていく。貴洋を荒んだ目で見ていた僕はもういない。僕とS平はこの時から心身ともにパートナーといえる仲になった。
僕とS平はゆっくりと深く唇を重ねた。