テラーノベル
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篤久様の真っ直ぐな視線を受けながら、私は隣で広瀬さんが妙な動きをしたように感じたけれど、視線を動かすことは出来ない……視線だけでなく、口も開けられない。
専属って……遥香の時みたいなの?
そんなにやることある……?
「篤久様、今ひとつ、川辺さんには伝わらないというか…」
「え……?広瀬さんは分かっている…風ですか?」
「風じゃなく、わっかるわよー。お嫁ちゃんがね、川辺さんと同い年なんだけど、そういう漫画とか好きで私も読ませてもらったことがあるからわかっちゃう」
「はぁ……?今、何か漫画…と関係あります?」
「あるある!俺専属とかって、明後日の月曜日にはお嫁ちゃんに報告案件だわ……あ、すみません…余計なことを喋ってしまいました……」
はっ…とした様子で座り直した広瀬さんに
「お嫁さんと仲がいいのは分かりました」
ご主人様はゆるりと言う。
「じゃあ、専属については…また追々ってことで……真奈美さんは、やってみたい仕事がある?家政婦の業務に囚われなくていいよ。目的達成のためにやっていた家政婦の仕事なら、これで辞めても構わないと思う。そういう点が聞きたい」
篤久様が今度は分かりやすく、はっきりと言ってくれたので、返事出来る。
遠慮なく“目的達成”って言っちゃっているのは、何年も住み込みの広瀬さんへの信頼もあると思う。
「今の仕事で嫌な業務はないです。正直に言うと、パソコン周辺機器について調べて勉強しておいたのが目的達成に繋がりましたけど、あまり楽しいとは思えない作業です……座ってする作業より動く方がいいです」
「座ってパソコンは嫌だけど、座ってミシンは楽しい?」
「はい」
「家事作業も嫌なものはない?」
「はい」
「本当に?」
「はい…」
私へ質問する篤久様の口調が、徐々に尋問風だと感じたのは気のせいだろうか。
「真奈美さんは事務所の作業より、ここだね」
「そうみたいだ…俺が雇用契約書を作るから、父さんは何もしなくていい」
「何もしなくていい、と言われるとやりたくなるものだね」
「そういうひねくれた年寄りみたいな発言は、いつもスマートな父さんにしては珍しい」
「篤久こそ、いつもより言葉数が多いようだが?」
「それはそうでしょ?こんな大切な日ですから」
そうですね、激動の一日だったもの…
「川辺さん、それ…ちょっと違うから」
「へっ…広瀬さん?」
「いやぁ、何でもないわ。でも、川辺さんはこれから、漫画を読むみたいなことも、目的なくぶらぶらすることも、いろいろとやらなくちゃね。ちょっと足りないっていうか……では私はキッチンへ戻ります。カレーだけは作ったので、今からサラダとフルーツ盛りを用意しますけれど、今日は品数が少なくなります…すみません」
広瀬さんがそう言って立つと
「今日は、皆がずっとバタバタと忙しかったですから。用意してもらっただけでありがたいです。あとでいただきます」
「18時に真奈美さんのオンライン診察があるので、そのあと俺もいただきます。真奈美さんも休みだから、一緒に食べればいい」
「い、え……それは違う気が…」
「承知致しました、篤久様!休日に川辺真奈美さんというお友達がお夕飯をご一緒されるということですね?ご一緒にテーブルのご用意を致します」
「任せました、広瀬さん」
「私もその時一緒に」
「と、ご主人様がおっしゃっていますが、篤久様…どうされます?」
え…広瀬さん、ご主人様が言ったことに頷かないで、篤久様に確認?
「父とのお酒も美味しいので、仕方ないですね」
「かしこまりましたぁ!ではでは、失礼します」
広瀬さんは全くかしこまった雰囲気でなく、出て行った…
コメント
5件
(笑)ꉂ🤣𐤔 篤久様 囲い込み?ッスかね?(笑)ꉂ🤭❤ 真奈美ちゃんわかっておらんけど、そこがまた可愛いんだねー(*´ω`*)︎💕 パソコンもやったら やれるし、ハッキリと秘書としてずっと付いてきて(*>∀<)ノ))って言えばイイのにー。。。 ま、ウチで待っててくれて、同棲みたいに…かな。(笑)ꉂ🤭❤
広瀬さんには篤久さんの真奈美ちゃんへの思い通じてるけど肝心要の真奈美ちゃんが解ってない😅😅😅広瀬さん真奈美ちゃんへの恋の手解き教えてあげて❤️
公私共に側で働いて(側にいて)欲しいって意味ですよねーっ⤴︎広瀬さんっ🤭 篤志様も我が息子よ、はっきり伝えろくらい思ってたりして〜! びっくりは広瀬さんTL?好きだったとは😍お嫁ちゃんが真奈美ちゃんと同い年ならば余計に心配だし可愛いんだろうね。 なんかみーんなあれらがいなくなって、明るくなってる?悪の棲家から解き放たれたからかな?だって広瀬さんの返答😆いいね〜😉 あーっ!そういえば私週一の通いで採用されていたはずなのですが…そのままでいいですよね?断られようと伺いますが😂