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wki side
次の日の昼休み
少し遅れて教室に戻った
ドアを開けた瞬間
まず探してしまったのは
やっぱり元貴の姿だった
……いた
席に座って
誰かと話している
相手は、前の席のやつ
昨日、ノートのことを聞いてたやつだ
楽しそう、という感じではない
でも
元貴は、ちゃんと顔を上げて
相づちを打ちながら
相手の話を聞いていた
それだけで
胸の奥が、ざわっとした
……なんで
俺は、クラスのやつらと話す
そして適当に相づちを打っていた
なのに
視線は、何度もそっちにいってしまう
前なら
「話せるようになってよかったな」
って思えたはずなのに
今は、 違う
昼休みが終わる少し前
前の席のやつが、 元貴に何か言って
笑っていた
元貴も
小さく笑った
それを見た瞬間
気づいたら
体が動いていた
元貴の席の横に立つ
w「次、移動教室だろ」
声が
思ったより近かった
元貴が
少し驚いた顔で、こっちを見る
o「……うん」
前の席のやつは
空気を読んだみたいに
「じゃあ俺、先行くわ」と言って
離れていった
その背中を見送ってから
はっとする
……俺
なにしてんだ
元貴は
何も言わずに
立ち上がる
並んで歩く
肩が、ほんの少しだけ近い
近すぎて
逆に、触れない
廊下を歩きながら
元貴が言った
o「さっきのさ」
w「ん?」
o「ノート、貸してただけ」
……言い訳?
そう思ってしまった自分に
内心、戸惑う
いや、違う
俺は友達だ
弁明する必要ないよ
w「そう」
頭ではそう考えているのに
声が、 少し低くなった気がした
移動先の教室の前で
足が止まる
人の流れが多くて
自然と、距離が詰まる
元貴が
一歩、後ろに下がろうとした
無意識に
腕を伸ばして
壁側にかばう
触れてはいない
でも
逃げ場は、ない
元貴が
驚いたように
こっちを見る
w「……あぶないから」
苦しい言い訳
でも
離れられなかった
元貴の匂いが
近い
心臓が
うるさい
周りの人が通り過ぎて
ようやく、距離が戻る
元貴は
少しだけ戸惑った顔で
o「……ありがとう」
そう言った
その一言で
胸の奥が、きゅっとなる
次の授業は
全然、集中できなかった
さっきの距離
さっきの声
さっきの目
思い出すたびに
自分が
どんどん、分からなくなる
放課後
元貴が、 さっきのやつと話しているのが
また目に入った
今度は
歩み寄らなかった
代わりに
目をそらした
……だめだ
これ以上
近づいたら
元貴に
気づかれる
家に帰って
ベッドに倒れ込む
考えないようにしても
考えてしまう
元貴が
誰かと笑ってたこと
自分が
間に入ったこと
壁に追い込んだ距離
……最低だ
独占したいなんて
思う資格 ないのに
それでも
明日
また誰かと話してたら
きっと、 俺は
また、近づいてしまう
理由なんて
わからないまま
いや、もう気づいてしまっているけれど
自分の気持ちに、無理に蓋をして
ただ
元貴の隣が
俺の場所みたいに
感じてしまっている
その事実だけが
逃げる場も用意できず
はっきりしてしまっていた