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朝、目が覚めて
最初に思い出したのは
若井 の顔だった
昨日のお昼
廊下で急に近づいてきた距離
僕が潰されないように
守ってくれた、 あの一瞬
近いのに、触れない
微妙な距離
近すぎて、
息の仕方がわからなくなった
…なんで、あんなこと
多分、
若井は何も考えていない
「危なかったから」
それだけ
そう思いた いのに
僕の心臓は
静まってくれない
声
目
距離
匂い
あの時の若井を 思い出してしまって
なかなか準備が進まない
若井が、
ああやって 誰かと距離を詰めるの
見たことあったっけ
そんなことを考えながら、
玄関のドアを開ける
もうすっかり冷えていて
思わず身震いをした
最近来てくれなくなったな
あんなこと言ったんだから、
当たり前だよな
…なんて、もう遅いのに
後悔しながら、学校へ向かう
教室のドアを開ける前、
一瞬足が止まる
昨日より、
気まずくなっていたら
どうしよう
でも、
入らないわけにも行かず
そのままドアを開けた
若井は、もう席に座っていた
いつもと同じ
僕と同じ制服
僕の隣の席
それだけで、
少し安心してしまった
目が合う
若井は
すぐにはそらさなかった
……あ、
昨日より
ちょっとだけ長い
そのあと
何事もなかったみたいに
視線が外れる
僕も、自分の席に座った
会話は、ない
けど、気まずくない
むしろ、距離が
昨日より近い気がする
気のせいかもしれない
授業が始まる
黒板を見る
ノートを取る
それなのに
横にいる若井の存在が
ずっと、気になる
視線を向けてないのに、近い
近い、というか
意識してる
昨日までは
こんなふうに思ったことはなかった
休み時間
前の席のやつが
また話しかけてきた
普通の会話
ノートの話
授業の愚痴
ちゃんと
返事もできてる
……のに、視界の端で
若井がこっちを見てる気がして
気になって
言葉が途切れる
その瞬間
若井が
すっと、立ち上がった
そして
なにも言わず
僕の机の横に来る
距離が、近い
昨日ほどじゃない
でも、近い
w「次、移動だろ」
それだけ
なのに、胸が
変に跳ねる
前の席のやつは
「あ、じゃあ先行くわ」って
すぐ離れていった
若井は
僕を見る
顔色をうかがうみたいな
そんな視線
……なんだよ
一緒に歩き出す
肩が、当たりそうで
当たらない
その距離が
妙に落ち着かない
昨日のことが
頭から離れなくて
気づいたら
口が動いていた
o「……昨日のさ」
若井がこっちを見る
o「かばってくれたの、 ありがと」
一瞬
若井が固まった
それから
小さく笑って
w「当たり前だろ」
その言い方が
優しくて
なぜか
胸の奥が
じんわりする
教室に着いて
人の流れが増える
昨日みたいに
近づかれるんじゃないかって
一瞬、身構えた
でも、若井は
それ以上、近づかなかった
……ちょっと
残念に思ってしまった自分に驚く
席に着いてから気づく
僕、若井の行動
一つ一つ気にしすぎてる
これは
前は、なかった
昼休み
若井は
俺の隣に座った
何も言わず
でも、そこにいる
昨日より自然で
でも、確実に
距離は縮んでる
若井の横顔を見る
強いと思ってた
何も迷わない人だと思ってた
でも、今は
少しだけ不安そうに見えた
……もしかして
僕だけじゃない?
そんな考えが浮かんで
すぐに首を振る
期待するのは違う
相手は男
友達
ただの、友達
そう、わかってる
でも、若井が
僕のほうに少し体を傾けた
それだけで
心臓がうるさくなる
昨日まで
知らなかった感情
たぶん
気づいちゃいけないやつ
友達に向けるべきではないもの
それでも、もう
戻れないところまで
来てる気がして
僕は
黙ったまま
若井の隣にいた