奨也は五条から受け取った巻物を慎重に広げた。中には呪術界の歴史を根底から揺るがす内容が記されていた。
「御三家の均衡を崩し、新たな秩序を築け。その中心には”支配者”が立つべし。」
「支配者として選ばれる条件:
御三家の血を引く者であること。
一族の中で最も強い術式を持つ者であること。
呪術界全体を統べるための『特別な能力』を開花させること。」
この文言に、奨也は背筋が凍るような感覚を覚えた。巻物に記された「支配者」とは、一体誰がその座に就こうとしているのか。そして、なぜ奨也が関与しているのか。
しかし、さらに恐るべき事実が記されていた。巻物の最後にはこう締めくくられていたのだ。
「新たな支配者の候補者:禪院剛士。」
奨也は急いで自宅に戻り、父が最後に残した遺品を再び調べた。遺品の中に隠されていた日記には、剛士が何者かと取引をしていた形跡が記されていた。
「すべては禪院家の未来のため…。私が犠牲になることで、均衡は破壊される。」
その瞬間、奨也は父が計画に加担していたことを確信する。しかし、さらに不可解な点があった。父の遺体が焼かれる直前、額には見慣れない「縫い目」が浮かび上がっていたのだ――。
五条と共に剛士の記録を調査する中で、ある重要な人物の影が浮かび上がった。羂索(けんじゃく)。
「羂索…。あの千年単位で暗躍してる呪詛師か。」五条は巻物を閉じながら呟いた。
「どうやら、君の父親は奴に利用されてたみたいだね。」
羂索は他者の肉体を奪い、自らの術式を継承させる呪詛師。その計画の一環として剛士の体を使い、呪術界を支配しようとしていた。
五条は奨也に羂索の持つ術式について説明した。
脳の入れ替え
他者の死体に自身の脳を入れ替える事でその肉体を乗っ取ることが可能。
反重力機構
羂索が虎杖の母の体を借りていたときに発現した能力。周囲の重力を自在に操り、物理法則を無視する攻撃が可能。
呪霊操術
夏油傑から奪った能力で、呪霊を自在に操ることができる。
赤血操術
加茂家の血統から得た能力で、血液を武器として操る。致命傷を与えるだけでなく、仲間を治療することも可能。
賀前八門司回(かまえはちもんしかい)
剛士が持っていた禪院家の秘術。周囲に八門を展開し、敵の動きを封じながらその力を逆転させる術式。
五条は奨也に告げた。
「奴が次に動くとすれば、御三家の中で一番目障りな僕を排除するか、東京校か京都校を襲撃するか、どっちかだろうね。」
奨也は決意を新たにした。
「奴の計画を止める。そのために、俺は術式を進化させる。」
五条は奨也の肩を叩き、軽く笑った。
「期待してるよ。禪院奨也――いや、未来の呪術界の支配者候補さん?」
奨也は無言のまま、決意をその目に宿した。
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