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青×桃
旅館の長い廊下は、消灯時間を過ぎてひっそりと静まり返っていた。ないこは、波のように押し寄せる吐き気と、胃を雑巾のように絞られる痛みに耐えかね、震える足取りで「引率教諭・いふ」と書かれた部屋の前までたどり着いた。
🍣「……っ、ふ……せん、せ……っ」
薄暗い廊下でドアを小さく叩くと、すぐに内側から足音がして、いふ先生が顔を出した。
寝る直前だったのか、シャツのボタンを少し外した姿の先生は、ないこの真っ青な顔を見るなり、目を見開いてその肩を抱き寄せた。
🤪「ないこ!? ……うわ、めちゃくちゃ熱いやんけ。入れ、こっち」
部屋に引き入れられるのと同時に、ないこの限界が来た。
🍣「……っ、ん、げほっ……!!」
口元を押さえて崩れ落ちそうになるないこの体を、いふ先生は迷わず自分の胸元で受け止めた。
🤪「吐きそうか? ……よし、我慢せんでええ。ここで吐け」
いふ先生は手際よくゴミ箱を引き寄せ、自分のジャケットをないこの膝の上に広げて「壁」を作った。他の先生や、廊下を通るかもしれない生徒から、ないこの無防備な姿を隠すためだ。
🍣「……っ! げほっ、おえっ……っ!! ぅぇ……っ、ん、んん……っ!!」
静かな部屋に、苦しげな嘔吐音と、荒い呼吸音が響く。
胃を突き上げるような衝撃のたびに、ないこの背中が大きく跳ねる。いふ先生は、ないこの後頭部を大きな手で包み込み、自分の肩に額を預けさせたまま、もう片方の手で背中をゆっくりと、力強くさすり続けた。
🤪「……大丈夫や、大丈夫やぞ。全部出し切ってまえ。……俺以外、誰も見てへんからな」
耳元で囁かれる、低くて落ち着いた声。
ないこは、涙で視界がにじみ、鼻の奥がツンとする痛みと戦いながら、何度も胃の中のものをぶちまけた。
いふ先生のシャツには、跳ね返った汚れがついているはずなのに、先生は嫌な顔ひとつせず、むしろ愛おしそうにないこの髪を撫でた。
🍣「……はぁ、はぁ……っ、……ごめ、なさ……まろ、……っ」
🤪「……今は先生やろ、アホ。……まぁ、そんなんどうでもええわ。少しは楽になったか?」
いふ先生は、手早くゴミ箱を片付け、匂いが残らないように処理すると、冷たいタオルでないこの口元と、涙で濡れた頬を丁寧に拭った。
床に座り込んだまま動けないないこを、いふ先生は軽々と横抱きに抱え上げ、自分の布団の上にそっと横たえた。
🍣「……先生の、ふとん……だめだよ、よごしちゃう……」
🤪「お前が元気にならんと、俺が寝られへんのや。……ほら、手ぇ貸せ」
いふ先生は、ないこの細い手を自分の大きな手でぎゅっと握りしめた。
🍣「……みんなにバレたら、怒られちゃう……?」
🤪「見るなって言ったやろ。お前のこんな弱った顔、他の誰にも見せへんし、教えへん。……俺だけの秘密や」
いふ先生は、ないこの額にそっと自分の額を当て、熱を確認するように目を閉じた。
🤪「……夜が明けるまで、ずっと横におったる。安心して寝ろ」
いふ先生の独占欲の混じった体温に包まれて、ないこは心地よい安心感の中で、ゆっくりと深い眠りに落ちていった。
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