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第9話です。若君と烨霖の絡みに溢れてます。このは2人は親子のようで可愛い二人として書いてます❣️
ではどうぞ
第9話【価値も、何も無い】
王力と門主だけになると王力は門主に軽い口調で笑いながら問いかける。
「、、、あのままで良かったんですか?あれは明らかに英豪が庇っていましたが」
「ははっ、いいんだ、呼んだ目的は全て達成した。 」
「え?」
門主の発言の意図が分からず、思わず腑抜けた声が出る。
「、、、どういう意味か聞いてもいいでしょうか?」
「あの子が私に嘘をつき他の者を庇うなんて、これが初めてだ。必ず何か理由がある。それに、李梓豪は随分と逃げ回っていたね、ははっ 」
相変わらず考えが掴みづらい門主に気味悪さを覚えながら、無言で話を聞き続ける。それとは対照的に門主の声は随分と楽しそうであり、それに見合わない程の大量の殺気が含まれていた。
「あと、、、彼のあの話し方には聞き覚えがあるんだ」
「聞き覚え?」
「なぁ、王力」
「陳烨霖が普段から口癖のように言っていた言葉を、知っているか?」
王力の目が大きく見開かれ、即座に先程までの会話の意味を理解した。
◇
英豪が門を開けると門の前にずっと居たのか、門が開いたのを確認した阿和はまだ完全に開ききっていないのにも関わらず、すぐさま烨霖の手を引き寄せ、身体の様々な場所を軽く触れたり見たりする。
「あ、阿和?」
何かを確認しているかのようなその動作に烨霖は混乱し、固まってしまう。
充分に見終えたのか、阿和は深く息を吐き、烨霖の肩に顔を埋める。その1動作はまるで遠くへ出した我が子が帰ってきて心配でならない、とでも言うような様子だった。
その状況が見るに堪えない、とでも言うように英豪は目を逸らしながら外へと案内する。
「ほら、行くぞ」
こちらを待たずに早足で歩き始める英豪に烨霖は阿和の手を即座に繋いでから慌てて英豪の側へと駆け寄る。
「何故、あんな事を?」
そう聞けば英豪は厳しい顔から真面目な顔へと変わる。
「こっちに来い」
大人しく着いていくと門派内の奥の方にまるで隔絶されているかのように川で遮られている小さく清潔な小屋へと連れてこられる。そこは決して豪華な場所ではなかったが、とても日当たりがよく、川がその日の反射で煌めき、とても神秘的だった。
「お前だけ入れ、そいつは絶対だめだ」
と阿和を力強く睨む。
「何故だ」
阿和の機嫌も明らかに悪く、先程、門に入る時は我慢出来ていた筈の殺気が今回は惜しみなく溢れる。だが英豪がそれに怯むことはない。
「お前だけは、入れちゃ駄目なんだ。」
このままでは斬り合いになる恐れがあると思った烨霖も慌てて阿和に頼む。
「阿和、すまないが、ここで待っててくれ、すまない、君に何かあれば必ず守るから」
「、、、守る必要などないし、私は守られたい訳ではない、、、」
「え、、?」
阿和はそれ以上何も言わずに俯いて黙り込んでしまう。
だが、こんな風に保護者(?)と離れてしまうことに拗ねてしまう子供はよく居るもので、子供の相手が得意な烨霖はその対処法を知っていた。
「阿和、しっかり待てたら何か好きなものをあげよう!!」
「好きなもの?」
子供というのはこのようにキツい事をした後に何か確実な褒美があると言うことを素直に聞いてくれるのだ。大人の場合はこうは行かないが、、、
案の定阿和の表情が少なからず和らぐ。
「嗚呼、だから大人しく待っていてくれないか?」
「、、、、、、、、、嗚呼」
だいぶ長い間ためがあったが阿和は素直に頷いた。
手を離すのを確認した烨霖は阿和の頭を軽く撫でる。子供の頭を撫でる癖が残っている烨霖は度々阿和を撫でてしまうが阿和の身長が高く、背伸びをしないといけないことを不便だな、と何気なく思いながら、ため息を軽くつき、英豪の方へと向き直る。
それを確認した英豪は目の前の質素な小屋の扉を音を立てずにゆっくりと開き、中へ入るよう促す。
中は外から見た印象と同じように清潔が保たれており、入った瞬間、木材の瑞々しい匂いが鼻を刺激する。
静かな小屋の中にあった寝台には1人の女性が静かに横たわっていた。
「これは、、、」
「、、、俺の母上だ」
「母上、、、」
母上の顔は一目で分かる程に青白く、顔は皺だらけであり、手首は骨が浮き出るほど痩せ細っていた。
「、、、病気なのか、、、?」
「あぁ、」
若君は力なく寝台の傍にあった椅子に座り、話し始める。
「俺があの山の瘴気を止めたかったのは母上の為なんだ」
「母上の?」
「過去、母上は戦士だった。女だったが女だからのその機敏さと軽やかを活かした戦いをしていて、とても優秀だったと、父は言っていた。」
「それは、、、一度見てみたかったですね、、、そうなると、戦で、、、?」
「違う。母上は、、、母上は彼奴にこんな姿にされたんだ!!!」
「あの、、、屍山憤血、、、!!」
「え?」
計り知れない程の憎悪と怒りが込められて発された聞きなれない言葉に思わず腑抜けた声が出る。
そんな烨霖を見て英豪は呆れたように溜息をつく。
「屍山憤血は100年前、この世と門派に混乱を起こした罪人の異名だ。本当の名は陳烨霖」
そう忌々しげに告げられた英豪の話に思わず目を見開き、暫しの間固まってしまう。
まさか己がそのような異名を付けられているなんて思ってもいなかった。もし付けられるのならば失敗作やら出来損ないなどの類だと思っていたというのに。
そんな話の当の本人である烨霖が目の前に居るだなんて露知らずな英豪の言葉には更に憎悪が増える。
「そして100年前、門派と屍山憤血が血を流しながら闘っていた時、そいつが出し続けていた瘴気や邪気のせいでその戦場は邪推や鬼にとって住みやすく、同時に強くなりやすい場所となった。」
「な、、、」
「その場所は今の門派でも浄化する事が難しくて、100年前に先代の方々が4つの石像をそれぞれの東西南北の核として封印の結界を張ったんだ」
「だが、1年前に南の結界の核が何者かによって壊され、結果に穴が空いたんだ。」
英豪は一瞬間をため、目を伏せて何処か昔の景色を思い出しているようだった。それは決していい思い出ではないのだろうと直感で烨霖はそう感じた。
英豪は深く息を吸い、話を続ける。
「そして、母上はその結界から出てきた邪推の処理の為に奮闘した。」
「だがあんな場所で過ごしていた邪推や鬼はどれも決して弱くはなく、闘いに苦戦している最中に蠱毒にかかってもうずっとこの状態だ。」
「蠱毒ならば、対処法はあるのでは、、、?」
「この蠱毒は普通の蠱毒よりも随分と厄介で他の山の桃の花ではなくあの楼真山にだけ咲く桃の花で生気を取り込んで何とか進行を弱めるしか今は対処法がないんだ。」
「そもそも、あんな瘴気や邪気に包まれた場所で生まれた蠱毒が、普通な訳がないだろ?」
「、、、確かにそうですね、、、」
平然と笑って返事をするが今の烨霖の心情は酷く複雑なもので、まさか自分が死んだ後にそんな事が起き、そのせいでこんな姿になった者が居ると知り、罪悪感や責任感が胸内にどんどん溢れ出て感情に溺れてしまいそうだったが、そんな事は知る由もない英豪はこちらを振り向き、言葉を続ける。その瞳には確かに温かみが滲んでいた。
「、、、楼真山があのままだったら、母上は死んでいた。それに、お前は門弟達も助けてくれた。」
「だから、、、その、、、、、、」
「、、、感謝する、、、」
頭を掻きながら照れ臭そうにそう告げる英豪の言葉に胸は更に締め付けられる。己はこんなにも純粋な感謝を与えられる程の人間ではないしその価値すらもない、元はと言えば全ての原因は自分にあるのだ。固まっている烨霖に改めて先程の言葉が恥ずかしかったのか英豪は少し拗ねたような顔をし、すぐにそっぽを向く。
「勘違いするなよ、借りを返したかっただけだ。」
借りだなんて、返されるような事はしていない。むしろこちらが返し足りないくらいだ。
これ以上この感謝だなんだという話を引き伸ばされたくなかった烨霖は話をずらす。
「、、、で、ですが最初は私の事を聞き出すのに随分乗り気だったはずじゃ、、、」
「まぁ、お前の嘘を暴きたいとは今も思っているが、今日のあの態度が答えのようなものじゃないか」
「えっ」
「お前は李梓豪じゃない」
英豪に確信を持ってそう言われ、烨霖もあの逃げ回った態度を晒した手前、これ以上嘘は言えず、困ったように黙り込んでしまう。
「そもそも、もしお前が李梓豪なら、」
英豪は再度振り返り、こちらを見つめる。その表情はもうすっかり照れた表情から平常の表情に戻っていた。
「、、、記憶がなくとも、自分を殺したやつをそんな目で見るわけがない」
「そんな目とは、、、?」
「、、、達観しているような、、、まるで困ったヤンチャな子供を見ているような、、、」
なんとも言い難い、とでもいうような表情をしながら様々な言葉を並べていると、ようやくピンと来た言葉を思いついたのか指をさして答える。
「親ズラした目だ」
「親ず、、、??」
「俺がどんなに怒ってもお前の目から怒りは一切見つからない」
「瞳だけではなんとも言えないのでは?」
「目は嘘をつけない、と言うだろ?」
「ですが、、、」
「お前はあいつじゃない、別の誰かなんだろ?何を言っても無駄だ。余計に怪しくなるぞ」
何を言っても英豪の確信は揺るがないと察した烨霖はいっそ開き直る。
「、、、まぁ、確かに私は李梓豪ではない、だが記憶は本当にないんだ、それは信じて欲しい」
やっとの事で言質を取った英豪はパッと表情を明るくさせ、鼻高々にする。
「はっ!!やっぱりな!!最初から素直にそう言えば良かっただろ!!何故隠していたんだ!!」
「最初会った時にこれを言ってたら信じましたか、、、?」
「、、、ふんっ、お前がそいつの身体に乗り移ったせいだな!俺は悪くない」
英豪のこの傲慢な様子に慣れてきた烨霖は困ったようかため息を吐く。そしてふと、英豪の母君の状態の原因で最も重要であろう部分を思い出す。
「ところで、、、結果の核を壊した者に検討はついているんですか?」
そう聞けば英豪の眉間に再度深い皺が出来、全身から隠し切れない殺気が溢れ出し、思わず身構える。
「壊したやつを見たやつは誰もいない、、、」
「だが壊れた結果の近くの岩に刻まれていたんだ」
「回来。 陳烨霖 」
「、、、、、、はい?」
「結界を壊したのは、陳烨霖」
「彼奴は、彼奴は帰ってきたんだ!!!」
第9話【完】
ここまで見て下さりありがとうございました。いつも見て下さる方、本当にありがとうございます。
どこか不手際があったら申し訳ありません。
ではまた次回もよろしくお願いします。
すみす
69
#DN腐
コメント
1件
ああ、第9話、読み終えました…!烨霖がまさか“屍山憤血”なんて異名で呼ばれてて、しかもそれが原因で英豪の母上があんな状態になってるなんて、胸がぎゅっとなりました。本人が目の前にいるのに憎しみをぶつける英豪の姿も切なくて…。最後の