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GIFT（青春篇）【完結済】

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GIFT（青春篇）【完結済】

第73話 - 第５章　救いたい命

18

2022年03月05日

#一次創作

#完結

#恋愛

o-chan

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【２１時過ぎになるとになると看護婦さんが見廻りに来ちゃうから、時間がないよっ】

【僕達には守ってくれる能力者がいるから大丈夫だよ】

【その能力者…今はいないみたいよ】

【えっ!?　さっきまで守ってくれてたのに…】

【茉奈がいるから近づけないんだよ。近づくと私の能力で正体を見破られる恐れがあるからね】

【そうなんだ…なら急がないと見廻りの看護婦さんが来ちゃう】

「葵さん、これ…」

僕は“木の箱”の蓋を開けると、葵さんと顔を見合わせた。

「私がやります」

「葵さん、大丈夫なの？」

「大丈夫です。やれます」

葵さんは、注射器と液体が入ったプラスチック容器を手にすると、容器に入った液体を注射器で吸いあげた。

「いきます…」

「お願いします」

【茉奈ちゃん、少しだけ我慢してね】

【うん…】

そして葵さんは、茉奈ちゃんの腕を掴むと注射器の針を刺して薬を注入した。

「終わりました」

「よかった…‥葵さん、ここに入れて」

僕は、使い終えた注射器を“木の箱”の中に入れるように葵さんの目の前に差し出した。

すると“木の箱”に注射器を戻そうとする葵さんの手はブルブルと震えていた。

葵さん、本当は怖かったんだ…。

自分も怖かったのに、怖がる僕の気持ちを察して自主的にやってくれた…。

【茉奈ちゃん、痛くなかった？】

【葵おねえちゃん、ありがとう。全然痛くなかったよ。それより何か…体がすごい熱い。燃える様に熱いの…】

【茉奈ちゃん、大丈夫っ？】

【だっ‥大丈夫だよ。きっと薬が悪い病気をやっつけてくれてるんだよね。だから頑張って我慢する…】

【茉奈ちゃん、頑張って！】

葵さんは声をかけながら、茉奈ちゃんの頭を何度も撫でてあげていた。

【いいから気にしないで。それよりも、時間がないから早く行って】

【茉奈ちゃん、頑張るんだよ！】

【明日また来るから…絶対に治るから…お姉ちゃんを信じて】

【うっ‥うん…‥】

そして集中治療室から出ると正面玄関に向かって思い切り走った。

その間に数名の看護婦さんとすれ違ってしまった。

でも、誰一人として僕たちの存在に気付いた人はいなかった。

きっと、これも葵さんが先程言っていた能力者の力に他ならなかった。