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強いショックを受けながらも、なんとか頭の中で今までの記憶の断片を辿る。まず、先日アドニスと話したときに帝国の婚姻の条件についてこう言っていた。


『今の皇帝からは条件が付け加えられたそうですよ。貴族か王族、皇族の血筋に連なる女性に限るという条件です』


そして、今メイドたちはこう話していた。


『爵位のある出自がしっかりした、あの令嬢を選ばなければならなくて……』


爵位のある出自がしっかりした女性、それはアルメリアのことだろう。それに、もう一人のメイドはこうも言った。


『二人は愛を貫いたのよ!』


それと逢わせて、アウルスが部下に向かって言った話の内容を思い出す。


『本当に愛らしくてしょうがない。シェフレラもよく頑張って娘を生んでくれたものだ』


これらから考えるとアウルスとシェフレラが愛し合っているのが、間違いようのない事実だとしか思えなかった。しかも二人の間には子どもまでいるようだ。

だが、出自の問題で婚姻を結ぶことは叶わず、アウルスはしかたなしにアルメリアを選んだのだろう。


気がつくと、涙が頬を伝っていた。


アウルスの言った『話したいこと』というのはこの事なのかもしれない。そう思うと、それをアウルス本人の口から直接聞くのがとても怖かった。


なんとか化粧室に向かい大きく息を吐いて、自分を落ち着かせた。今は楽しい晩餐の時間だ、みんなに心配させるわけにはいかない。無理にでも普段通りに振る舞わなければ、そう自分に言い聞かせ食堂へ戻った。


だが平静を装うのはとても難しく、動揺が出てしまっていたのかすぐにリカオンに声をかけられた。


「お嬢様、どうしたのですか? 体調が優れないように見受けられますが?」


アルメリアは微笑むと恥ずかしそうに答える。


「女性は男性と違って、体調の優れないときがありますの。でも大したことはありませんから大丈夫ですわ」


それを聞いてリカオンは一瞬で顔を真っ赤にした。


「そ、そ、そうですよね。わ、わかりました、そういうことなんですね?!」


すると横で話を聞いていたマニウスが言った。


「そうですか、それはさぞおつらいでしょう。無理はなさらない方がよいと思いますよ」


そう言うと早速アウルスに声をかける。


「アウルス、彼女の体調が優れないようです。今日のところはお開きにしましょう」


「そうなのか? 無理をさせてしまったようだね、ではまた日を改めて」


アルメリアはしばらくアウルスとは会いたくなかった。


「しばらくは忙しくて無理そうですわ。いずれ落ち着いたらこちらからお誘いしますわね」


わざわざそんなことを言う必要はなかったのだが、思わず当て付けのようにそう答えてしまった。

アウルスは少し戸惑ったようだったが、いつもと変わらぬ笑顔をアルメリアに向けると言った。


「わかった、待っている」


アルメリアは微笑んで返した。





数日後、久しぶりにアブセンティが行われた。その日集まっていたのは、ルーファスとアウルスを除いたものたちだった。アウルスはダチュラに会わないようにするため、最近ではほとんど表に姿を現さず、城内のアルメリアの執務室に訪れることはなかった。

アルメリアは正直、アウルスに会わずにすむことをありがたく思っていた。


その場でアルメリアは、イーデンがどう動いているのかみんなに報告し、後日マニウスと連絡を取り彼をアブセンティに呼ぶかもしれないと話した。


この時点でありとあらゆる情報や証拠が集まり、教皇を追い詰める準備が整いつつあることを全員が自覚していた。


「もうそろそろ教皇を追い詰める、大がかりな舞台を用意しようと思う」


ムスカリはそう切り出すとアルメリアを見つめて言った。


「その前に、君の立場や君の命すら狙っているあの令嬢、クインシー男爵令嬢をまずとらえたい。そうして教皇とクインシー男爵令嬢を反目させる方がよいだろう」


リアムがそれを受けて質問する。


「殿下、そう仰るにはなにかお考えがあると言うことですね?」


「そうだ。先日のアルメリアと私の婚約発表の場で、あの令嬢とこんな約束をした『君を主役にした舞踏会を開く』とね。それを罠として利用する。そのかわりアルメリア、君にはつらい思いをさせることになるだろうが大丈夫か?」


「問題ありませんわ、それは必要なことなのでしょう? 私は殿下を信じます」


「では、来月表向き私とアルメリアの婚約後のお披露目会と称して、クインシー男爵令嬢を主役にした舞踏会を開く。もちろん主要な貴族や陛下にだけ真の目的を伝えることにする。いかなることがあっても、アルメリアに危害を加えることはないと言っておこう」


ムスカリはそう宣言すると、アルメリアに向かって優しく微笑む。


「では後の事は任せてくれるね?」


アルメリアは頷いて返した。






こうして一ヶ月後にダチュラを追い詰めるためのお披露目舞踏会を控え、アルメリアは証拠書類の整理やドレスの準備などに追われた。

ドレスはもちろんファニーのデザインで作られることになっており、相変わらずファニーはアルメリアの周囲をうろうろしていることが多かった。


ファニーはこちらから話しかけると嬉しそうによくしゃべるので、お陰で色々と気をまぎらわせることができた。


ある日唐突にファニーが言った。


「そうだ、お嬢さ~、今度行きたい場所があるんだけど一緒に行かない?! 大丈夫、変なことしないから」


「ファニーが変なことするなんて思ってませんわ」


そう返事をすると、ファニーは大喜びした。


「よかった~! 断られるかもと思って、これでも内心ドキドキしてたからさ! 行き先は新しくできた違うデザイナーの工房なんだけど、敵情視察ってやつ。僕一人じゃ絶対行けないもん」


アルメリアは自分が一緒だとしても、ファニーのこの風貌では目立ってしまうのではないかと思いながら了承した。


「いつなら暇?」


「スケジュール調整はリカオンに任せてますの、後で彼に訪ねてみてくれるかしら?」


「は~い」


忙しいからこそ、誰かと町に出かけるのもたまにはいいかもしれない。楽しそうにしているファニーを見ながらそんなことを考えていた。


悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

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